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第五章 封じられた真実
第二話 残された記録
翌日、ハヤトは一人皇室機密書庫へ向かっていた。
城の地下深く、限られた者しか足を踏み入れることを許されない場所。
ひんやりとした冷たい空気が漂っている。
古い羊皮紙。
禁じられた記録。
歴史の中に埋もれた事件。
そこには、長い年月の重さが眠っていた。
ランプの灯りを片手に、ハヤトは過去の魔物事件の記録を読み漁る。
帝国内部で発生した魔物事件。
近年、明らかに増えている行方不明者。
記録自体は少ない。
それでも、確かに存在していた。
「一番最近では……約一月前か」
ページをめくる。
「……その前は、三ヶ月ほど前」
さらに遡る。
「……半年」
「……二年前」
「……五年前」
「……十三年前」
「……二十一年前」
古い記録になるほど、事件の間隔は長くなる。
だが、確かに残っている記録。
ハヤトは被害状況へ視線を落とす。
そこに書かれていた内容は、どれも似ていた。
通常の魔物被害よりも大きな被害。
確認された魔物は、通常より巨大。
そして。
異常なほど強力。
昨日の魔物もそうだった。
「……」
違和感。
共通点。
何かが引っ掛かる。
だが、まだそれが何なのかは分からない。
ハヤトは再び視線を落とす。
帝国内部で起きた、過去の魔物事件。
その中で、“行方不明者”として記録された者達。
一人目。
昨日行方不明になった屋敷の主人。
近隣住民との揉め事が絶えず、過去にも問題を起こしていた男。
二人目。
酒場で暴れ、何度も暴力事件を起こしていた男。
三人目。
裕福な男達を誘惑し、金を巻き上げていた娼婦。
四人目。
病に侵され、長く寝たきりだった少年。
五人目。
百年以上生きたと言われる老婆。
六人目。
借金に追われていた商人。
七人目。
戦で片腕を失い、塞ぎ込んでいた元兵士。
そして
『老犬 一頭』
ハヤトの手が止まった。
「……犬?」
記録によれば。
ある民家で突然魔物が現れた際、その家で長年飼われていた老犬が、同時に姿を消したという。
不可解だった。
共通点があるようで、ない。
善人もいる、悪人もいる。
若者も、老人も。
人ではない存在まで含まれている。
身分も、立場も、生き方も、何もかも違う。
ハヤトは深く息を吐き、椅子へ凭れる。
「……何を基準に選ばれている」
呟きは、静かな地下書庫へ溶けていく。
ページを閉じる。
違和感。
共通点。
何かが引っ掛かる。
昨日の魔物。
あの力。
そして、ジュウタロウの言葉。
『瘴気に侵された生き物を見たことがある』
もし。
もし、あれがただの魔物ではなかったとしたら。
ハヤトの背中に、嫌な汗が伝う。
考えたくもない。
そんなことが、この帝国で起きているなど。
だが、目の前に積み重なった記録は、静かにそれを示していた。
「……何なんだ」
誰もいない書庫で、ハヤトは小さく呟く。
光に守られたはずの帝国で、知らない闇が、少しずつ広がっている。
ハヤトは古い記録の山を前に、静かに頭を抱えた。
コメント
1件
おお、第45話読んだわ…。この静かな不気味さ、めっちゃ刺さる。ハヤトが書庫で記録を追うシーン、淡々としてるのにじわじわ来るな。特に「老犬 一頭」って一文で手が止まるところ、ヤバかった。共通点がバラバラなのも逆に不気味で、何か大きな仕掛けを感じる。瘴気の話も気になるし、次が待ち遠しいわ🔥