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長年好きだった人が結婚した。
中学2年の時から好きで周りからは友達以上恋人未満だって言っていたのに。
私を虐めから守ってくれたり、女子から省かれた時には傍に居てくれた秋川君が結婚した。
高校時代でも大学時代でもずっと好きだった。
お腹が空くとイライラする所も常に鼻炎なのにティッシュを持っていない所も他の人だったら冷める所も全てが好きだった。
出会いは小学生の時。
女友達二人が秋川君の事を好きだった事が秋川君を知ったきっかけだった。
秋川君は決してイケメンではない。
坊主頭で肌が白く目も細く少女漫画に出てくるイケメンとはかけ離れた男だった。
ただ性格が人懐っこくよく私には嬉しかった事があると飛んで来ては報告してくる子だった。
小学生の時は転校して来た私に何度も話しかけて来ては、私が好きだった犬夜叉の漫画のグッズを持っているのを
「どれだけ好きなんだよ~」
と言いながら揶揄ってきた。
私が秋川君を好きだと気が付いたのは中学3年の時だった。
その頃には熟年夫婦と周りから言われたり、秋川君からは私との関係は友達以上恋人未満だと言われるほど仲が良かった。
恋愛感情を持つ前からバレンタインのチョコレートを渡す姿を周りは揶揄ったが、私はいつも一緒に居てくれてありがとうと、女子達から省かれて辛い思いをしている時でも傍に居てくれた事に感謝の気持ちを込めて渡していた。
ただ中学3年の時は違った。
友人の
「高校になったらバラバラになるから今みたいに毎日傍に居られなくなるよ。」
という言葉をきっかけに秋川君が私の傍に居なくなるのが寂しくなり、どうして寂しくなるのか考えたらいつの間にか秋川君の事が異性として好きだった事に気が付いた。
中学3年の時に渡したバレンタインに対して初めてお返しをくれたのが、ガチャガチャの玩具だった。
私が好きな漫画のキャラクターで普通だったらホワイトデーにガチャガチャかよっと思うかもしれないが、私には秋川君が私の好きなキャラクターを見つけてくれた事が嬉しかった。
当時流行していた君に届けの真田君のような彼に私はこのまま離れるのは嫌だと思った。
そこで私は意を決して秋川君に告白をした。
今までの友情が壊れるかもしれない、それでもこのまま学校がバラバラになってしまって疎遠になるよりは1%の可能性を含めて想いを伝えることにした。
ある放課後近くの公園に呼び出して私は想いを伝えた。
結果は玉砕。
友達以上恋人未満だからきっと上手くいくと思っていた私だったが、彼は
「学校がバラバラになってしまって会いたくても会えないのは無理。それにもし付き合って別れた時にお前を失う方が嫌だ。」
と言って来た。
「別れるかどうかなんて分からないじゃ無い。」
と言うと
「妹みたいな家族みたいな存在なんだ。」
と言って彼はごめんと謝ってきた。
私はまさか振られると思っていなかったのでショックだったが、告白が駄目だからと言って好きの気持ちが無くなる程の片想いでは無かったのでその日からずっと想い続けて居た。
高校に入ってからは彼が好きなスポーツであるテニス部に入って少しでも会話の種が出来るように努力した。
ただ彼の学校の部活はとても忙しくメールも途絶え途絶えしか返ってこなかった。
それでも私は今日あった事などを送っては返信を待つ日が続いていた。
ただ私は学校の授業がついて行けなく塾に通う事になった。
その塾を秋川君と同じ塾にした。
授業が同じ時には一緒に帰ったりしたが友達以上恋人未満という関係からは発展しなかった。
大学生になると秋川君とは連絡を取るのがあまり無くなっていった。
秋川君は第一志望が落ちてしまい浪人したからだ。
どれだけ大変かと思うと何も考えも無しに連絡が出来る程私はお気楽では無かった。
一度連絡を取らなくなるとそれから連絡をするタイミングが無くなりそれから疎遠になってしまった。
それでも時々連絡を取っては他の友達を誘っては一緒にご飯を食べたりしたが、秋川君は大学に入ってからテニスサークルでは無く部活に入ったからかご飯に誘っても集まりに来れない事が多かった。
私も以前の様に頻繁に連絡を取ることが無くなり、近況を知るのがX(旧ツイッター)でしか無くなった。
少し病んでいた時期があったのか暗い文章を載せている時もあったが私は私生活の事で必死で連絡を取ることをしなかった。
もしこの時に連絡を取っていたらもしかしたら違う未来があったのかもしれない。
時は遅しで彼から半年前に連絡を取った時に彼女が出来た事そして結婚も考えている事を久しぶりの連絡で聞いた。
いつでも隣にすぐに立てると思っていた。
少し離れた時期があってもまた昔のように隣に立てると思っていた。
ただその席はもう空いていなかった。
私は長年の恋愛に終止符を打った。
今更になってあの時こうしておけば良かった等後悔の波が押し寄せてくる。
その連絡をしてから一ヶ月後彼は入籍した。
私は連絡を取って他の友人を交えて食事に行った。
久しぶりに見る彼の姿は昔と何も変わらなく、私の目には格好良く見えた。
「久しぶり」
と遅れてやって来た彼が私達に声を掛ける。
「久しぶり~」
と動揺を隠すように私は返事をする。
周りもそれぞれ返事をし、メニュー表を見ながら何を頼もうかと話した。
その日は過去の話をしたり懐かしいクラスメートの名前を出しては今何をしているのかな?と話をしたりで盛り上がった。
久しぶりに集まったのが楽しかったからか解散の時間が体感時間よりも早く感じた。
帰りはたまたま秋川君と二人で帰る事になった。
自転車を押しながら歩く彼に私は
「結婚おめでとう」
と言った。正直言葉にしたくなかったが祝福しないのも変だと思い口にする。
「有り難う。」
そう答える彼に私の心臓は包丁で刺すような痛みがする。
「どこで出会ったの?」
これ以上聞きたくないのに口が勝手に動く。
「3年前に家庭教師のバイトの集まりで再会したんだ。」
「そうなんだ。プロポーズしたの?」
「俺は色々考えていたんだけれど相手が気持ち悪いから普通で良いって言ってきたからちゃんとはしていない。」
「そうなんだ!プロポーズ色々考えたんだね。」
と言いながら彼からプロポーズをして貰える顔も知らない彼女に嫉妬した。
私だったら彼からどんな言葉だって良いからプロポーズをされたら泣いて喜ぶだろう。
ただ、彼女と秋川君の関係性も素敵に思えた。
友達のような恋人、夫婦なのだろう。
羨ましい気持ち半分彼が幸せで居ることに嬉しい気持ちで複雑だった。
それでも私は笑顔で
「本当におめでとう」
と言った。
秋川君とは途中で別れ一人になった。
冬の星空が輝いて見える。
今日は一層夜の暗闇に光る月が綺麗で私は月を見ながら涙が零れないように月を見ながら歩いた。