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俺は殺し屋だ。迅というチームに入ってる。
今回のターゲットは俺の彼女のアイ。長年一緒に過ごしてきた。
でもその時間は全部嘘に過ぎない。全て俺の計画。殺す為に彼女に近づいて最期まで自分のことしか頭にない最低野郎だ。
情が移ってしまえばそれで終わり。この仕事は演技が必要。「感情」なんて要らない。
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「今日顔色悪いね、また寝不足?」
そう言って俺の顔を覗き込んでくるアイ。透き通るような茶色の眼に、綺麗な茶髪。
『…まあ寝不足かも』
「もう!やめてよ?風邪ひくとか」
「1ヶ月後に私の誕生日なんだから!」
そう、10月23日はアイの誕生日。その日にアイを殺す予定だ。
『俺はアイと違って丈夫だから平気』
「は?!」
こうやってくだらない事で笑う時間も、何気ない日常も、俺の眼に映っている愛しい彼女も。
「全部あの日で終わり」
所詮は騙してきた相手だ。今更怖気付いたって何もならない。
情が湧かなければ今だって簡単に殺せる。
殺し方は何にしようか。なるべく、苦しくない殺し方にしたい。
毒殺か、絞め殺すか、銃殺?いや、でもそれは痛い。溺死も避けよう。
凍死…眠って死ぬ。いいかも。包丁で刺すのも痛いな。最期の最期まで話したい。
『変な質問していい?』
「うん?」
『殺されるとしたら何の殺され方がいい?』
「…変な質問だね。笑 誰に殺されるとかは?」
『んー……じゃあ俺で』
心臓の音がやけにうるさい。冷や汗が垂れる。
「英に殺されるなら、何でも嬉しい」
そうやって笑う彼女に不信感を抱く。高1で死ぬんだぞ?しかも、彼氏の俺に殺されて。
『変わってるね』
「質問してくる英も変わってるけどね笑」
こうやって笑い合う時間もあと少しで終わり。
「でも…最期まで英と話していたいから、苦しくても話せるならそれでいいよ」
彼女は何かを察しているかのように笑った。全く、最期まで掴めない。
『候補とかあんの?』
「一瞬で死ぬのは嫌だなぁ、笑。溺死とか、銃殺は嫌かも」
『ふーん』
“心中したい”なんて思ってる自分はバカなのだろうか。
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“お前の彼女って掴めないよな”
友達に言われたその一言。俺の彼女はいつも余裕があって、掴めない。
ドッキリはいつもバレるし、成績も優秀で人間関係も特に問題は起こってない。
とりあえず、アイは勘がいい。そう、何かの猫みたいに。
『お前って猫みたいだよな』
猫とじゃれている彼女に俺が言った一言。「は?」とでも言わんばかりの顔になる。
「なに急に」
『いや?なんつーか、行動とか?』
『行動とか掴めないって話』
俺がそう言うと彼女は、猫じゃらしを振る手を辞め、俺にこう話した。
「掴めない女の子って愛されやすいんだよ」
『…お前は俺がいんじゃん』
「そうだね。けど、掴めない子は大体勘がいいんだよ。英」
見据えている言い方だ。きっと俺の作戦はもっと前からバレていただろう。
『…言いたいことあんなら言えば?』
彼女の笑顔が消え、真剣な表情になる。空気はピリついていて、俺もアイも黙ったまま。
アイが口を開く。けど、また閉じる。その繰り返し。
言おうか言わない方がいいのか悩んでる。
『何?』
「言っていいのかなって」
『言っていいよ』
「そっか…じゃあ、」
あー、やっぱりそうだったのか。
「英、私の事殺そうとしてるでしょ」
バレてた
『バレてた?』
「否定しないんだ笑」
『バレたし』
もう何も言い返すこともない。いや、その言い返す気力が俺にはもうない。
愛する彼女に嘘をついたこと、それを俺は後悔してる。
「殺さないの?」
怖気付くこともなく、笑顔を見せる彼女。
俺の彼女は怖いもんなしだったな。
『…殺すよ』
背後から刃物を取り出し、アイに向ける。一瞬驚いたアイだったが、すぐ真顔に戻る。
『俺が…普通の男子高校生だったら良かったのにね。』
『ごめんな、最期まで愛せなくて』
「私には充分すぎるほどだったよ」
「こっちこそ、ありがとね」
最期の言葉をいった彼女は目を閉じ、殺されるのを待っている。
足がガタついて上手く歩けない。呼吸が乱れて心臓の音が頭の中に響く。
「どうせなら一緒に死んじゃおっか」
彼女から言われたその一言。
『は…?』
「私を殺すの、嫌なんでしょ?」
「私だって最期まで英といたい」
『はは、笑』
『いいよ、一緒に死の』
俺の提案に彼女はパッと笑顔になる。
「さっすが英、よく分かってる笑」
『お前のことなら何でも分かるよ』
「ホントにー?笑」
『ほんとほんと笑』
他愛のない話が始まる。この時間がずっと続けばいいのにって思ってる俺はバカだ。
『生まれ変わっても探し出すから』
『他に男作んなよ』
「当たり前笑」
「アンタこそ作んないでよね」
『ばーかお前のことしか眼中にねーよ』
2人で手を取り、フェンスに登る。
「ひぇー怖」
『何?怖いの』
「死ぬのは誰だって怖いよ」
「けど英がいるから怖くない」
『それなら大丈夫だな』
『愛してるよ、アイ』
『今までもこれからも、生まれ変わっても』
「私も愛してるよ、英」
2人で思いっきりジャンプする。
ああ、
最期に見れたのがお前の笑顔で良かった_