ATTENTION
前垢リメイク
nmmnーirxs
白水
「アンドロイドとの恋なんておかしいと、
あなたは笑いますか?」
※似ているタイトルのものが存在するとご指摘いただきましたが、決して被せなどではなく、たまたまでした。把握しておりますので、ご承知のほどよろしくお願いいたします。
START↓
俺は”初兎“というアンドロイド。
俺はほとけの兄弟として──兄として造られた。
でも、いつの間にバグが起きたのか、俺はほとけのことを好きになっていた。
アンドロイドが人間に恋をして、人間がアンドロイドに恋をする。
そんなことおかしいと、笑われてしまうだろうか───。
ある夏の朝。
「ほとけーー起きろーーー」
目覚まし代わりの声が聞こえる。
それで目が覚め、返事を返す。
「ん、初兎…?」
おはようでもなく感謝でもなく、「やだぁ。」という拒否の言葉だけれど。
僕はほとけ。
自分で言うのもなんだけれど、アンドロイド製造会社の一人息子──、いわゆる御曹司ってやつ。
でも会社を継ぐ人はもう決まっていて、僕ではない。
それじゃあ御曹司ではない気がしなくもないが、気にしないことにしている。
「学校!!早くしないと遅刻する!!」
「…しないもん。」
僕は寝起きが悪い。
どうしても、初兎に良くない態度をとってしまう。
「つべこべ言わないで、早く起きて!!」
「えー」
「もう朝ごはんできてる。」
「…、はぁい」
結局は、半ば強制的にダイニングに引きずられていく。
初兎との出会いは、5年前。
父が、会社で造ったのだという。
「ほとけ、新しいアンドロイドの兄弟だ。」
「あんどろいど?」
「機械だけど、人みたいに喋るし、これは特別に食事もできる。…仲良くしてやってくれ。」
その説明があの時の自分には少し難しくて、あまり理解していなかった。
「ほとけくん、初兎だよ。今日からよろしくね。」
「う、うん…初兎、よろしく…ね」
でも確かに、この瞬間から僕と初兎は始まった。
急ではあったけど、“兄弟”として距離を詰めていった───。
なのに僕、初兎のことを好きになってしまった。
本当は兄弟で、ましてやアンドロイドなのに──恋をしてしまった。
「ほんと、だめだよなぁ。」
そう呟いて、今日も通学路をゆっくりと歩いていた。
すると、「ほとけぇえええええ!!!!!」って叫び声が聞こえた。
この声…初兎だ。
何事だろう。
遠くから走ってくる初兎の姿が見える。
あの声…近所迷惑になっていないといいな…。
「…お弁当忘れてる。」
僕の目の前で止まった初兎は、お弁当を差し出した。
入れたつもりになっていたから、単純に
「っあ、ありがとう!」
僕の感謝で、初兎は笑顔になった。
その笑顔に、僕はどきっとしてしまう。
「こちらこそ。楽しんでこいよ!」
「うん!」
少し重くなった鞄を背負って、僕はまた歩き出した。
「…可愛すぎんだよ、っ」
───────────────────
「ふぅ、間に合ってよかった〜!」
走ってお弁当を届けて、やっと家で一息つけた。
久々にあんな運動したから、体がとても重い。
鈍ってるなぁ。
ほっとして、ソファの背もたれに体を預けようとした、その時──聞き慣れた機会音が響いた。
ピーーーーーーーーーーーーー。
「充電切れ、か。」
最近、充電の減りが急激に早くなった。
前は3日くらい余裕だったんだけど、今では半日であの音を聞かなければならない。
「コードコード…」
プラグを差し込んで、今度こそソファにもたれる。
少し、ゆっくりしよう。
『充電が100%に到達しました』
その声に目が覚める。
時計を見れば、さっきから時間はあまり経っていなかった。
「それにしても、充電は高速やなぁ。まだ30分しか経ってない!」
疲れがとれた体を起こし、立ち上がる。
「よっしゃ、家事やるぞぉお」
この時から、だんだんと不調が現れ始めた。
───────────────────
数週間後
「ただいまー」
そう言っても、返事は返ってこない。
「あれ、?初兎〜?」
やけに静かな家。
「初兎どこ〜?」
しーんと、やはり返事は返ってこない。
またか、と呟く。
あの、お弁当を届けてもらった日から、初兎の不調が度々起こった。
もう古くなってきている…のも分かってはいるけど、受け入れたくなかった。
お兄ちゃんを“古い”なんて、思えるはずもなくて、ずっと考えないようにしていた。
でも、別れが刻々と迫ってきているようで…怖かった。
そんなことを考えているうちに初兎の自室へと着いた。
ノックをして、勝手にドアを開ける。
僕は焦っていた。
「初兎〜…って…え?」
僕の目が映したのは…、部品が散乱した初兎だった。
「えっ、…ど、どうしたの!?」
「………」
初兎は寂しそうに笑った。
どうやら、声が出せないようだった。
「…言ってくれなきゃわからないよ…!」
そう言った僕の目から、ぽろぽろと温かいものが溢れた。
「ねえっ…!!」
いくら初兎に声を掛けても、あの大好きな声で答えが返ってくることはない。
初兎はただ、寂しそうに笑っているだけ。
「パパに電話…っ」
そうとなったら、作った張本人に助けを求めるしかない。
呼び出し音を聞く度に焦りが募る。
「出てよぉっ…!!」
目をぎゅっと瞑った。涙が、幾滴も溢れた。「パパぁっ…」
諦めてスマホを耳から離そうとした時、スピーカーから声が聞こえた。
『ほとけ、どうした!?』
「っ…初兎が…!初兎が…壊れてるっ…!!」
これが、今の僕が言える限界だった。
もう、これ以上伝えられなかった。
『えっ…、今すぐ向かう!待ってなさい!』
「うんっ…」
僕は、”通話終了“が表示されているスマホを片手に崩れ落ちた。
そして、
「すぐ来るって」
そう呟いた。
すると、初兎はゆっくり頷いた。
その動作が今までとは反対に凄いぎこちなくて、余計に悲しく、寂しくなってくる。
「…いなくならないよね」
確かめるように、僕は初兎の目を見て言った。
初兎は、また笑う。
もう、僕の心には限界が来ようとしていた。
「やだよ…!!僕、初兎がいなくちゃ生きていけない!!」
僕は必死で、別れたくなくて全てをぶちまけた。
だから、ここから先、僕は自分自身に歯止めがきかなくなってしまった。
伝えるつもりがなかったことまで──。
「だって、だって…っ!!」
「初兎のこと好きなんだもん…!!!!」
「!!」
初兎は、一瞬にして目を丸くした。
僕の目からは、変わらず涙が溢れ続けている。
「…わかった?……だからいなくなっちゃだめ。」
そう言って僕は初兎の手を取る。
「約束して…」
力に入らない初兎の手を持ちつつ、小指を絡めた。
いつの日か記憶が脳裏に蘇る。
まだ僕が小学校低学年の頃…、公園でこうやって、約束をした。
『しょう、ずーーーっといっしょね!やくそく!』
『うん、約束。』
あの笑顔は今でも忘れられない。
もう一度初兎を見る。
「────え?」
──初兎は、泣いていた。
「初兎…えっ…?」
僕は、初兎が泣いているのを見たことがなくて、少し驚いた。
泣く機能が入っていないのかと思っていたから、新しい発見でもある。
でも、その顔はとても嬉しそうで、でも苦しそうで、寂しそうで───。
「ぉ……ぉ」
「え?」
初兎の、声だ。
それに、情けない声が漏れる。
「ぉ………ぇ……ぉ」
え…?
「俺も、って、言ってるの?」
僕の言葉に、初兎は首をゆっくり縦に振る。
その事実を理解するまでに、僕はどれくらいの時間を要したのだろうか。
「え、初兎も…僕のこと…」
君は、ただただ寂しそうに笑う。涙を流す。
やめて。
笑わないで。
泣かないで。
「ぃま…ぇ……ぁと」
そんなこと…、言わないで。
「さっき約束したでしょ!!」
お別れなんて嫌だ。
本人が言おうが関係ない。
僕は嫌なんだ。
気付けば、僕の下には涙の水たまりができていた。
「初兎、初兎…っ!!」
名前を叫んだって無駄だってことは、とっくに知っている。で
も、どうにかならないかって、急にドッキリでした!って意地悪そうに笑い出さないかって、そんな希望が頭の片隅で渦巻く。
ああ、もう…。自分で自分が嫌になってきて、うつむいた。
そんな時、僕の頭に重みがかかった。
顔を上に向けると、僕に向かって初兎の腕が伸びていた。
「初兎…!!」
その温もりが僕には温かすぎた。
心に直接、事実を運んでくるようで怖かった。
大好きな大きな手なのに、今だけは、知りたくないことばかり知らせてくる酷いものに感じられた。
「初兎…っ!?」
初兎の首が後ろに倒れて、頭から温もりが離れていった。
「え、?そんな…!!」
酷いよ神様。
どうして。
なんでこうやって、引き離していくの。
「初兎、初兎ぉお!!」
運命って、なんて残酷なんだろう。
「やだぁぁぁあああああ!!!」
僕は、冷たくなった大好きな人の前で、泣き続けた。
───────────────────
うるさいような、
懐かしいような、
落ち着くような──。
そんな感覚がする─────────。
ここはどこだ?
人がたくさんいる。
難しそうな顔をして、画面と向き合っている。
そのうちの1人が、寂しそうにこっちを見た。
その途端、目を丸くして、言葉もなく隣にいる男性の肩を叩いた。
肩を叩かれた男性は、同じようにこっちを見て、驚いていた。
そして、俺のもとに泣きそうになりながら駆け寄ってくる。
「初兎?わかるか?」
「………ぁ…」
ちゃんと、声が出る…。
わかる、わかる。
「ほとけの、お父さん…」
「そうだよ、そう──。」
よかった、と安堵の息が聞こえる。
その後ろに見えるカレンダーは、知っている月から一枚めくられていた。
俺はそんな、眠ってしまっていたんだ。
「なんで…俺は動けて喋れるんですか?」
目が覚めてから、気になって仕方がなかった。
あの日、俺は、壊れたはずなのに。
もう、会えなくなったはずなのに。
「中身を全て交換したんだ。」
俺の耳に入ってきたのは、そんな言葉だった。
「この前までのシステムじゃもう持たなくて…。だからショートして壊れたんだと思う。でも…データは全部移してあるから、安心していいよ。」
わかりやすい説明で、すぐに状況を理解することができた。
つまり俺は、ぶっ壊れたのを直してもらったという訳だ。
1人で頷いていると、ほとけのお父さんは困った顔をした。
「お前が壊れてから、ほとけがわんわん泣いて悲しんでるからな…」
「そ、うなんですか…」
その事実に、少し自惚れてしまう。
が、話の続きを聞かなければいけない気がして、すぐに耳を傾ける。
「まあ、実験用がここまで愛されるとも思っていなかったし…何より、息子が泣いているのは放っておけないからな。」
俺は受けたことないけど、これが“親の愛”なんだとすぐに解った。
「………行ってやれ、初兎。」
力強い、でも優しい声で、向けられる思い。
俺は、走った。
───────────────────
「初兎……行かないでって、言ったのに…」
あの日──初兎が壊れた日から、1ヶ月が経った。
せっかく想いが通じ合ったのに、今更、酷いと思う。
「会いたいよぉ…」
涙交じりに、毎日口にする言葉。
その後は、何も続かない。
続けられない。
誰もいない部屋に、沈黙が走る。
そんな時、ドアをノックする音がした。
なんだろう。
「はぁい…」と、力無く返事をする。
重い足取りでドアまで歩く。
どうせお手伝いさんだろう、と思った。
どうせ紅茶でも運んできたんだろう、と。
いつものようにドアを開ける。
ありがとう、と言おうとする。
でも、顔を上げた瞬間そんな言葉は消え去った。
「ほとけくん、初兎だよ。今日からも、よろしくね」
あの時、聞いた言葉。
初めて会った日、交わした、挨拶。
大好きなお兄ちゃん。
初めて、大好きになった人。
「初兎!!」
僕は目の前の人に飛びついた。それと同時に、初兎は僕を強く抱きしめた。
「ただいま、ほとけっ…!!!」
「おかえり、初兎っ…!!!」
2人で、お互いの肩や胸を濡らした。
そして、初兎は言った。
「ずっと一緒、もう離れないよ──」
と。
「ちょ、早く靴履いて!電車遅れる!!」
「わかってるから焦らさないで!!」
あれから、僕たちは親公認の恋人になった。
今日は、幾度目かのデート。
「よし行こ、初兎!」
「おう!」
玄関のノブに手を掛ける。
扉の外へ。
何度も。
俺たちは踏み出す。
笑われようが馬鹿にされようが僕らは僕らだ。
この世界で、イレギュラーな毎日を生きていく。
───君と、一緒に。
END
POSTSCRIPT
約5000文字、お疲れ様でした
前垢リメイク作品で、
前はチャットで200タップの作品です
僕が書いた作品で1番人気があったので、
リメイクすることを決めていて…
その時はノベルで書きたいと思い、
とても長くなってしまいました!
それでもここまで読んでくださり、
ありがとうございます
感謝しかないです
もし良かったら、宣伝して頂けると嬉しいです
(前垢フォロワー1000人以上いました)
初ストーリーでしたが、
いかがだったでしょうか!
面白かったよって方!
コメントやフォローお待ちしています!
それではまた次回の投稿でお会いしましょう
おつしおです!
コメント
15件
なんか…とある小説とすごく似てる気がする