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3話 悪役令嬢との面会で、得られたこと
「うーん・・・なかなかむずかしい、な」
ここは私の大好きな乙女ゲームの世界。 なんやかんやあって私は、この世界の攻略対象で第一王子に転生した。
よくある転生の原理的なやつと一緒だと思っていたがそういうわけでもなく、私にはいままでのレオンの記憶がないのだ。
つまりここから導き出される答えは、
『私とレオンの魂が入れ替わったこと』
だから私にレオンの記憶がないのではないか。でもだとしたら、入れ替わったレオンの魂はどこにあり、何に宿っているのか。そしてそれが人だった場合、宿られた人の魂はどうなるのか?
様々な問題点が、時間が経つにつれて浮かび上がってきた。
もうすぐ転生−魂がレオンに宿ってから3週間になる。時間が経つにつれて元の体の魂には影響が出ないのか。気になることはたくさんあるのに、知識がないせいでなにかを確かめるにも確かめられない状況が続いていた。
「レオン殿下」
「・・・なんだ」
私はここにきてから、まず、接している召し使いや家政、レオンの家族などに怪しまれないよう、生前の記憶にあるレオンの喋り方、性格を思い出し、演じる必要があった。
レオンは聖女と結婚する未来があるゆえに厳しく育てられ、心を閉ざした【氷の王子】だ。
そこをちゃんとわきまえて話さないと、怪しまれてしまう。
「レティーリア様とご面会のお時間です。 レティーリア様は少し様子がおかしいらしく、面会時間が半分の30分になります」
「・・・わかった。すぐいく」
レティーリアはゲームの中では悪役令嬢と呼ばれる者だった。ヒロイン入学と共に婚約破棄され、ヒロインとレオンの恋路をひたすらに邪魔し、ヒロインをいじめたおす人だ。ゲームのエンドでは平民落ちからの罪人達の村【最果ての村】に収容されていたはず。本当はただひたすらにレオンが好きなだけの、可愛いツンデレ負けヒロインなのだが。
それにしても、『少し様子がおかしい』とは?
体調でも悪いのだろうか?なにか得られる情報があれば、及第点なのだが、そこまで探ることができないかもしれないな。私の魂が宿ってからは初対面だ。頑張ろう。
「こちらにお着替えください」
「中庭にてお待ちです。お行きください」
「・・・ああ」
この城の構造は・・・なんどか城内をフラフラしたり、生前の記憶から捻り出したりして、3週間目にしてやっと城内図がわかってきた。
「・・・久しぶりだな、レティーリア」
レティーリアに対するレオンの口調は、婚約破棄前も後も変わらなかったはずだから、これであってる。
「お久しぶりです、えと、一ヶ月ほどだろうか・・・ですわね!」
「・・・?そうだな・・・」
「あ、あの、わたくし、殿下に喜んでもらうために、侍女頭に言われてクッキーを焼いてきたのだ・・・きたのですわ」
えっと・・・・ツッコミが追いつかない・・・
でも、さっきの口調。レオンを見た時の静かに見開く目。キョドりよう。
間違いなく言えるのが、中身はぜったいレティーリアではないこと。・・・・さて、誰だろう。