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それは何の変哲もない土曜日だった。じわりじわりと体を蝕むような猛暑。「今年一番の暑さになるらしい」そんな話をしながら二人、家への帰路を歩いていた。長袖の制服は肘辺りまでまくしあげてみるも、だらだらと流れる汗は一行も止まるとは思えない。


syp「あぁ、どうりでこんなに暑いんすか」


zm「ほんま…溶けてまうわ…」


そう言って「あ゛~~~~…」と、ゾンビのような声を出し、覚束無い足取りでゾムさんは俺のバッグに入っていたスポドリを流れるように華麗に取っていく。思わずその事に反応するのに遅れてしまった。


syp「あっ!?ちょっ…!コラ!!」


zm「んふふふふふ♪隙を見せる方が悪いって何度も言ってるやろぉ♪」


反射的にゾムさんの持っているスポドリに手を伸ばすも、ゾムは走り出す。マズい。色々とマズい。俺は彼の背中をおいかけようとするも、この暑さの中あの運動神経抜群のゾムさんに勝てるわけもない訳で。チラチラ後ろを見てはニヤニヤするゾムさん。そのままペットボトルのキャップを開け始めるゾムさんに、最後は藁にもすがるような思いで彼に手を伸ばす………が、しかし、結局


ゴクッ


syp「あ゛ーーー!!!!!!俺の最後の水分!!!!」


ゴクゴクゴクッ


syp「あぁ……あ……………俺の……スポドリ…………」


zm「プハァッ…………あー、生き返るわぁ……」


syp「ぁ、あ、悪魔…!」


ガクッとうなだれる俺に対してそんな大声で感想言うか?と思いながらゾムさんの手の中にある空のペットボトルを睨んだ。所持金はあれで死んだ。財布も腹もスリムになった今、あれを失うのはデカい損失だ。あれもこれも全てゲーセンが悪い。あんな魅惑のロリフィギュア置いとくのが悪いんだ。


zm「ショッピくん?もしかして怒ってる………?」


syp「いえ、別に……」ゴゴゴゴ…


zm「うぉっ!?」ビクッ


zm「イヤイヤイヤ…えー……なにそのオーラ…怒ってんじゃないすか……スポドリ如きでな…………あっ(察)」


何かを悟ったような表情をしたゾムさんは少しずつ顔を青くしていった。


syp「……」ムッスゥ…


zm「拗ねた……」


syp「…もうゾムさんは知りません」


zm「えっ、あっ、それは…あかんやつや(?)許してー…」


syp「…」プイッ


ゾムさんは困ったように頭を掻く。(いやいやあなたのせいだろう)そう思いながらゾムさんを恨みのこもった目で見ていれば数秒後ぽんっと手を叩き、解決策を見つけたような顔をして俺の方に向き直る。


zm「分かったわ!ショッピくん金ないんやろ?だからちょっと歩くけどファミレスでも寄ろうか?」


syp「!!いいんですか!?」


zm「おう!だから許して!」


この通り!と、手をあわせて頭を下げるゾムさん。


syp「あ、でも流石に食害はなしですよ。大丈夫っすね…?」


zm「お、おう…、当たり前や!」


ビクッとゾムさんの肩が揺れる。(これは言わなかったら食害されてたな…)と、内心セーフといいながら帰路から外れ、ファミレスの方へと歩き出す。ゾムさんもそれに気づき、ついてきた。ゾムさんは俺の横に並ぶように歩く。その時、ふと冷たい風が頬を撫でた。


zm「………………………ショッピくん………」


syp「?何ですか?」


zm「……………………… 死なないでね」


syp「……は…?」


zm「ふふっ、なんて、冗談や。ほら、はよファミレス行くで」


syp「え、ぁ、あぁ、はい…」


俺は少し早足になったゾムさんの背中を追いかけた。蝉の悲鳴のような声に包まれた夏だった。


zm「冗談なら良かったなぁ…」



































syp「いやー、ご馳走になりました!」


zm「おまっ、お前小食過ぎん?」


syp「?そんなことないと思いますけど」


zm「えー?ほんまかいな」


つんつんとゾムさんは俺の頬をつつく。


syp「逆にあんたが食べ過ぎなんすよ。体重やばいことになってても知りませんよ」


zm「ないないw俺いくら食っても成長しないんよw」


syp「クソっ……太れ………」


zm「ショッピくん最近反抗期やなぁ、先輩はショッピくんの将来が心配や」


syp「このモヤシ馬鹿力…」


zm「wwwwwwじゃあシッマは『クソ先輩』で俺は『モヤシ先輩』か?」


syp「………………考えときます」


zm「やめてくれ」


そんなくだらない会話を挟みながら、今度こそはと帰路につく。ほんのりと薄暗い空、もう直ぐゾムさん受験っすねなんて話を声に出せば、ゾムさんは「ううう…」なんて言って頭を抱える


syp「あれ?もしかして絶望的っすか?w」


zm「やめろぉ…俺は誘惑に弱いんやぁぁぁ…」


syp「あぁ、シャオロンさんたちと遊び回ってるから…w」


zm「はぁぁぁぁ…」


zm「俺留年するんちゃうか!?」


馬鹿でかい溜め息を零すゾムさんをあざ笑うために横から彼の顔を覗く。そしていつものように煽り言葉を口にしようとした時だった。


syp「ふっwざ…………ま…あ…………え…?ゾム…さん?」


しかし、その顔は先程の顔とあまりにもかけ離れていた。ゾムさんの三日月のように鋭い眼孔が、キッと前を睨む。先ほどの情けない表情のゾムさんはどこかに消えていた。俺は、その瞬間金縛りにあったように体が動かなくなった。


zm「…」


syp「えっ…な、なんすか?怖いっすよ?」


何が……何が起こった…?

ゾムさんは…何を見ている…?

冷や汗が止まらない。彼の視線の先には何がいるのだろうか、見たい、けれど、見てはダメなような………


zm「ショッピくん。急いで走って。」


syp「え…………………………………?」


zm「いいから、早く!」


syp「な、何で…………」


zm「何でもいい!!!!!!とにかくバッグも何もかも捨てて走れ!!!」


急に訳の分からないことを言い出したかと思えば怒鳴られた。俺は状況が飲み込めないまま我に返った俺はカバンを放り投げ、足を動かした。何が起きたのかは分からない。しかし、とにかく走らなくては。そんな衝動に駆られ、無我夢中に走り続けた。



気づいたころには家の前で、一旦自室へとこもる。体の震えと、必死すぎて気づかなかった疲労感のせいで、崩れるようにベッドに倒れ込んだ。


syp「うぅ……………頭……痛い…」


それに吐き気も、朦朧とした意識の中、俺は簡単に意識を手放した














2時12分。日がでている間と打って変わって冷えた夜。俺は家を出た。放り投げたバッグの回収と、なんとなく日中のことが気になって仕方がなくなったのだ。ハッハッと息をしながら早足であの場所へと戻る。


syp(確か…次の曲がり角でっ………)


クルリと視線を曲げるも、そこには当たり前のように誰もいなかった。もはや何の虫が分からない鳴き声が静かに響く。その時


コツン


足に何かがぶつかった。それは、いやな予感を形にしたような感覚だった。確実に石ではない。歪な形の柔らかいもの。視線を落とせば、見てはいけないものが見えてしまう。そして、ここはやけに鉄臭い。しかし、見ないことに意味はない。俺はそっと視線を下へと落とした。


そこにはゾムさんが横たわっていた。真っ赤なチョコレートのような血を流しながら。


syp「ひっ…!?」ゾクッ


俺は急いでポケットからスマホを取り出し、パニックになる頭をどうにか制御して電話をかける。勿論警察に。


『もしもし、こちら○○警察署ですが…』


syp「もしもし!?と、友達がっ、友達が道で倒れてて……!」


『……え…わ、…分かりました。学生さんですか?今からそちらへ向かいます。場所を教えてください』


syp「えっと、場所は<ガッ>__あっ、_______________ 」


『あれ?もしもし?もしもーし?』


膝から崩れ落ちる。

何があった?何故か頭の後ろ辺りが熱くてじんわり響いている。

そのまま俺は何も分からないまま暗闇の中へと引きずり込まれていった

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