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syp「あ……れ……………ここは……」


ハッと目がさえた。先ほどの熱い感覚は元からなかったかのように消えている。そっと体を起こした。先程と変わらない景色、しかし、妙に静かだった。虫の声は聞こえず、暑くも寒くもない。長くここに居続けたら気持ちが悪くなってしまいそうだった。俺はまだぼんやりと半寝状態の頭をぶんぶんと横に振って、記憶を呼び戻す。何か大切なことが…


syp「あっ、そうだ、ゾムさんは…!?……………………………って、あれ……?」


ゾムさんがいない…?俺はキョロキョロと座った状態で辺りを見渡すも、ゾムさんの姿形は忽然と消えていた。跡形もなく、血の一滴すらもなかった。あの時の事は夢だったのだろうか、(だとしたら物凄いリアルな夢だったな)なんてことを考える。どちらかといえば、現状の方が謎にフワフワする感覚のせいで夢らしい。その時、


『やぁ、ショッピくん。』


どこからともなく声をかけられた。俺は驚いて反射的に立ち上がり、もう一度辺りを素早く見渡す。誰も…いない…?


『何で無視するのさ』


syp「ひっ…!?」


今度は耳元で声がした。生温い囁かれるような声。しかし吐く息は冷たくてゾワァと背筋が凍る。気味が悪い。すると


トントンッ


『ね~えっ』


syp「!?」ビクッ


肩を軽く叩かれた。自分でも驚くほど驚いてそのままよろめき、尻餅をつく。肩を叩いた人物は俺が上からこちらを覗き込んだ。途端、俺は呼吸の仕方ですら忘れてしまいそうだった。それは、見てはいけないものだったような気がする。だって…


syp?『あ、やっと目があった』


自分とそっくりな人がこちらを覗き込んできたからだ。それはもう、自分からしても瓜二つに見えるような容姿。鏡でも見てるのではないかと一瞬でも疑ってしまう。しかし、それは明らかにそこにいた。気味の悪い笑みを浮かべ、恍惚とした表情でこちらを見つめる。


syp「ぁ………っ!?!?、」


syp?『アハハ、驚きすぎて声もでないの?フフフ、おっかしー、アハハ』


しかし、ケラケラと異常な程笑う彼の姿は俺とは被らない。ただ、あんまりその顔で笑われると、何か気持ち悪いものがこみ上げてくる。こちらが少したじろいだだけで大袈裟に笑う彼は瞬き一つせずにこちらに詰め寄ってきた。ドッペルゲンガーって奴なのだろうか


syp?『ねぇねぇねぇねぇ!ここがどこだか教えてほしい?教えてあげようか?アハッ、フフフ、そっちの世界の僕は随分大人しいのね。アハハ!アハハ!』


syp「ひっ……、ち、近づかないでくださいっ」


ジリジリと近づいてくる彼に対し、俺は少しずつ後ずさる。これではまるでどこからどこまでが夢でどれが現実なのか区別できそうもない。


syp?『なんで?アハッ僕はただ君にチカラを貸そうと思っただけなのに。フフッ』


妙に『チカラ』という言葉を強調する彼、その言葉に反応してと言っているような口振りに俺は少々呆れたように声に出す。


syp「ち…チカラ……?」


syp?『うん!君、ゾムと知り合いなんでしょう?アハハ、でもゾムは死んじゃった。でしょ?そうでしょ?僕知ってるよアハッアハハ』


こてんと首を傾げる自分。嫌悪感が凄い。しかし、話の内容は思ったより衝撃的なものだった。


syp「え…死んだ…?ゾムさんが…?」


syp?『アハハ、ついでに言うと君も死んだ。フフッ』


ダメだ、こいつが何を言っているのか理解できない。あまりにも非現実的な内容に頭を抱える。俺の目と耳が正しければ俺は頭を殴られたあと起きたら自分とそっくりなこいつが話しかけてきて、その人の口からでるのは俺と先輩が死んだという訳の分からない言葉たち。そろそろ脳みそがキャパオーバーしてしまいそうだ。


syp「ま、待ってください!一体何が起こったって言うんですか!?ゾムさんが死んだ…?なんで、どうして…!?」


柄にもなく俺は声を張り上げる。それは今にも目の前のこいつに掴みかかるような勢いで。彼はいきなり大声を出した俺に一瞬きょとんとした顔で目を丸めたが、それは徐々に嬉しそうな表情に緩んでいった。


syp?『何でって、見ただろう?君も。ウフフ、ゾムは君を殺させないように時間稼ぎに死んだ。アハッ、君が逃げてくれるのを期待したんだ。ヒヒッ、でも君は殺された。先輩の期待に応えられず死んだ。ハハッ、フフフ、二人仲良くゲームオーバーって訳。アハハッ』


それは静かな絶望だった。俺だけならまだしも先輩まで殺された…?そんな、まさか……


syp?『嘘じゃないさ、信じてくれよ』


俺の手を掴み、握手するような形でギュッと手を握られた。白くなった頭では、それを振り払う気力すら失せており目の前のこいつの濁った目を前に声すら出なかった。


syp?『あ、まさか驚きで声もでない感じ?うんうん、分かるよ。君の事は僕が一番理解してるから。』


先程とは違う柔らかな微笑み。先程からの豹変のせいで妙に目の前のこいつに意識を持って行かれる。


syp?『簡単に説明してあげるよ。ここは夢の国…いわばワンダーランドさ!自由が形になったような空間でね…(???)『嘘吐くのもいい加減にしてくださいっ、ショッピさんっ…』…………あーあ、うるさいのが来たよ』


ふと道の角から誰かがこちらを見ているのが視界の隅に映る。それは、綺麗に二度見出来るような人物だった。けれどあの人とはどこか違う


zm?『本物から離れてください……』


syp?『なんでよ、こいつは僕のさ。お前に口を出される筋合いはないね。ゾム。』


先程死んだと説明されたゾムの姿。俺はもうパニック状態だった。ごちゃごちゃといろんな事が混ざりあった頭は何も考えずに体を動かす。これはもう反射なのかもしれない。

目の前のこいつの隙を見て突き飛ばし、一気にゾムの姿のやつに縋るような思いで抱きついた。

ガバッ


zm?『ひぇっ、ほ、本物のショッピさん…』


syp?『……』


syp「……………ごめんなさい…。ごめんなさ………。」


慌てているゾムさんの体は氷のように冷たかった。俺は出来る限りの謝罪をしようとするも、その口は目の前のゾムさんにそっと塞がれた。


zm?『……』


ゾムさんの表情は曇っており、とても哀れなものを見るような悲しそうな目をしていた。苦い薬を飲み干したような、そんな顔。


syp「な…んで………」


zm?『…………ごめんなさい。それを言う相手は僕じゃないんです…。』


絞り出したような彼の声と、申し訳なさそうな顔に一時の沈黙が流れた。彼はそっと俺の腕から逃れる。


syp「なにを言って…………」


syp?『…話し合いは終わったかな?』


少々イライラしているかのような彼の声に、我に返ってそちらを見る。


zm?『さっきから言ってるでしょう、この子に近づかないでくださいっ……』


キッとゾムさんは彼を睨むも、彼は怯む様子もなく静かに笑った


syp?『ふーん?まぁいいや。どうせ皆僕の手のひらなんだからさ。』


そう言うと彼はこちらに背を向けて歩き出した。俺らしくない。そんな言葉が脳裏をよぎった。見た目も声も、俺とそっくりだ。見分けがつかないくらい。しかし、仕草や口調はどうも俺の物ではない。彼の背中が見えなくなるとゾムさんはこちらを向いた


zm?『ごめんなさい………。いきなりで怖かったですよね。僕が話せる範囲なら教えてあげられますよ』


出来る限りの笑顔…というところだろうか。ぎこちない顔でこちらを見る


syp「あ、の…あの人は………、ここはどこなんですか!?」


zm?『……あの人は…なんて言えばいいんでしょうか………あなたにとってのもう一人の自分…ですかね。』


syp「もう一人の…」


zm?『ええ。でも、正確に言えばあなたの失敗作なんです。』


zm?『この世界も、彼も、全部…』


syp「…っ、てことはつまりあなたも……」


zm?『はい…立派な失敗作人間です』


syp「なんですか…それ…嘘……でしょう……?夢かなんかなんですよね!?ここは天国だとでも言うんですか!?」


zm『そのこと何ですが…』




















『普通、こっち(失敗作の世界)の世界にあなたは入れるハズがないんです。あのショッピさんが自らあなたたちに危害を加えない限りは……』

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