「あらすじ。」見て呉れましたでしょーか。
見てない方は是非。
では始まります。
「はあ……」
私の朝はいつも溜息から始まっていると自分でも思う。
(私には朝なんて感覚は無い…。)
自分でも自分が不健康そうに見える。
其れが他人からなら尚更だ。
此の部屋の薄暗く、どんよりとした雰囲気が、
更に其れを引き立てる。
「んん………」
指で目を擦る。
…細い、と思った。
手の甲も骨が浮き出、真っ白な手だった。
(其れこそ本当に死んでしまいそうだ…)
がちゃ、と扉の開く音。
ぼんやりしていた私は、飛び跳ねる程驚いた。
入って来たのは中也。
「んわ…如何したんだよ」
私は其れを装おうと、んん、と咳払いをして中也に直る。
「首領の前だよ中也、少しは礼儀というものを弁えたら如何かな?」
「ん…は…?何言ってやがる太宰?」
おや、如何やら隠し切れていなかったらしい。
「手前本当に休んだら如何だ…」
中也はゆっくりと近付いて来る。
「…私の顔色がそんなに悪い?」
「嗚呼」
「……全く、幹部様に心配されている様じゃあ、首領も務まったもんじゃないね」
「どーゆー意味だそりゃあ」
と、いつも通りのテンションの会話に、中也も若干だが、
安心している様に見えた。
ふと中也は時計を見、
「…そろそろ行かなきゃなんねェ…」
ふう、と軽く息を伸ばし、中也は扉を向く。
「あれ、何か今日用事あったっけ」
私は首を傾げ、問う。
「あ?忘れたのかよ」
少し呆れた様子だ。
私は焦って、
「ぇ、あ…駄目、分からない」
思い出そうにも少しパニックになってしまった。
あたふたしていると、
「今日から四日間、シブヤに出張だ。
手前が言ったんだろ此れ、何忘れてんだァ?」
「ぁ…嗚呼、言ったね…」
そういえばそうだった。
何で忘れていたんだろう。
そう考えている内に中也は扉に手を掛ける。
扉を開けて出て行く時、私の方を振り向き、
「…次会う時迄に体調を少しでも良くしてないと…怒る、…」
聞こえるか聞こえないかの小さな声で、そう言うのが聞こえた。
そうこうしている内に、扉は重く静かな音を響かせ、閉じた。
「……ぁ……ぇ…」
つい、呆気に取られて仕舞った。
「……ふ…」
素直じゃない奴め。
案外、ちゃんと私の事を案じて呉れているんだね。
…シブヤか…まあまあ遠いな。
行きたくねえ。
態々シブヤに武器庫とか用心深過ぎんだろ…。
中也は先にシブヤに行っている部下に連絡を取る。
「ぁ”~……だりィ…」
まだ寝惚けているヨコハマの街。
ビルの隙間から覗く太陽の微笑は、少し淋しげだ。
(早く終わらしてやる…)
中也はハンドルを握り直し、スピードを上げていく。
「今日は天気が良いなあ…やんなっちゃう」
私は頬杖をつき乍ら、自室の小さな部屋から外を眺めていた。
首領としての部屋の大窓は、今まで一度も解放した事が無い。
(あれは大事な時とかに開けようかな…)
最近、厭にやる気なるものが出ない。
「怠いぃ…」
誰かさんが出張に行ったせいで余計に体調崩れるわあ…。
机にぺた…と伸びていると、こんこん、と扉を叩く音。
「はあい…此のノック音と間隔は…敦君だね」
うわ…凄いな太宰さん…。
「失礼します」
扉を開け、少し浅めの礼をする。
ん…?
あれ、いつもみたいな圧?というか…あの厳しい雰囲気が薄い。
「ふわあ…」
太宰さんは欠伸をし乍ら歩いて来た。
「やあやあ敦君、如何したのかな…」
にこにこした太宰さんは何時にも無く、何処か優しげな空気を纏っていた。
「あの…中原幹部の件でして」
其れを聞いて、太宰さんはぴくりと反応した。
一瞬動きが止まった後、
「嗚呼、シブヤの件かな?」
とだけ聞いて来た。
「はい」
「其れが如何かしたのかい」
太宰さんはほんの微かに前のめりになって聞いた。
「あ…中原幹部、今応戦中らしくてですね」
「ええ?其れは何故だい、?」
聞いた話によると…。
「はい、中原幹部からメッセージが届きまして、出来るだけ早く
支援に来て欲しいとの事でして…其れで御報告に参りました」
太宰さんは不安気な目付きになっていた。
少しでも励まそうと、
「幹部なら、大丈夫です。きっと其れは、太宰さん自身が1番知っている事でしょうし。
僕がとやかく言う事じゃないですけど…最強の相棒だったんですよね?」
其れを聞いて、
太宰さんの口元は少し綻んだ。
「そうだよ。でも、矢ッ張りそんなの認めたくない!
大っ嫌いだもんねっ!」
いっ!と八重歯を見せて、太宰さんは笑った。
「そうですか…中原幹部も、きっと同じ事を思っているのでしょうね」
僕も微笑んで、小走りで部屋を出る。
「失礼しました」
太宰さんは手を振って、
「私から「とっとと死ねチビ蛞蝓」と言っていたと伝えて呉れ給え」
と笑い乍ら言った。
僕はこくりと頷いて部屋を出る。
「黒蜥蜴を呼んで呉れ。車を回して欲しい」
僕は一刻も早くシブヤへと向かおうと走ってビルを飛び出した。
中也…怪我しないで欲しいな…。
ああは言ったものの、矢っ張り中也の事が好きだ。
怪我なんてしないで欲しいし、ましてや死んでも欲しくない。
ずーっと、一緒にいたい。
(傷付けても良いのは私だけ。私だけの印を付けたい)
人差し指の爪で万年筆を突く。
「首領なんて、厭だ………森さんなんて大嫌い…」
先代首領、森鴎外の顔が脳裏をよぎる。
胡散臭い程に甘ったるい口調。
でも、怒らせると本当に怖かった。
何よりも…。
思わず、はっとした。
(自分も…)
虐待をされて育った子供は、
『自分の子供には、こんな事はしない』
と誓って子育てをする筈なのに。
何時の間にか、子供に手を上げている。
何故、何故と問う。
無意識に、親と同じ行為をしてしまう。
(私だって同じ…結局、森さんとおんなじ事してる気がする…本当、
最後迄、意地悪な人)
頬杖を付き、ずっと万年筆を指で弾いたり突いたりしていた。
「中也…早く帰って来て欲しいな…」
今日はそう考えている内に、気付けば黄昏時になっていた。
自分でも驚く程にやる気が出ない。
中也という存在が当たり前になっていて、
自分でも気付かない無意識に、
意識が、体が、心が。
(きっと彼を求めているんだろうな……)
嗚呼!
癪に障る!
本っっっ当に!
……………意味分かんない奴。
大キライ。
頬が火照る。
手で頬を撫でてみる。
ふんわりと温かくて、厭になった。
畜生…、
何であんな奴に惹かれるのさ…。
太宰の中で人生一難しく、答えの出ない課題だった。
最も、敦などは簡単に分かる様な課題でもあった。
突いていた筈の万年筆は、既に机の下に落ちていた。
「はあ…本気かよ彼奴等…。
俺に怪我を負わせるとは、大した奴等だな」
腕から少し血が出ていた。
「直ぐに包帯を巻きますね…!」
敦が慌てた様子で中也に近寄る。
「止めろ丁稚。其れじゃあ太宰みてェで癪に障る」
「えっ…ですが、…」
「ンなもん、少し消毒すりゃあ直ぐに治る、気にすんな」
敦はしゅんとして、
「僕がこんなに弱くなければ…」
と顔を伏せる。
「ぁー…おい、その、ネガティブな思考、一旦止めろ。
本当に大丈夫だ、気にすんな」
そう言って、敦の頭を少しばかり撫でてやった。
「ん……有難う御座います、中原幹部…。
ですが、こんな事したら、首領、いや…太宰さんが嫉妬しちゃうんじゃ」
と、敦は少し笑い乍ら言った。
其れを聞いて、
「はァッ”?!何言ってやがる此の丁稚!
彼奴…」
「中也なんて…」
「「大ッ嫌いだ!!」」
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長くなりましたすみません、!!
最近、「ヒプノシスマイク」なるものにハマって。
ゲーム、買ったんですSwitchの。
格好良い…。
では又。
コメント
20件
皆様❤️を是非宜しくです…、!
森さんとおなじことしちゃう太宰さん最高です! やっぱり中也と太宰さん、いいですよね…! 今回もすごいお話をありがとうございました!
キューリさん … やっぱすご 〜 い! ✨✨ なんか … フォロー繋いでるのが 怖く感じる … はわ