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「そういえば、そんな事を伝えていましたね」
ティニがそれに気付いたという事は、コリエンも気付いていたかもしれないという事になる。けれど、僕はコリエンについては疑問ばかりだった。
「でも、どうしてコリエンはあの場所にいたんですか」
僕は妹の待つ村へ行けなかった。そこで全てを終わらせるつもりだったのに。眠りから覚めた僕は、まだ彼らの計画が実行される刻限に達していないことに気付いた。だから、彼らに扮装し、紛れれば策略を打ち消しに出来る。
本来であれば、僕が陰謀を食い止めるはずだった。
「なるほどね。初耳だわ。そういう話をリエンに聞けないから、私を呼んだのね」
僕は知りたかった。
「君がチタニーに全ての要因があると言っていた。僕が聞いていたのは、そこの結末からなのでね」
本当はコリエンと話に決着をつけるがために、教会へ足を運んだつもりだった。僕は君が許せないと。彼が僕らの村人と敵対していようが、あの森の中にいようが、それはただの償いとしか思わなかっただろう。
「僕一人では、コリエンを責め立てるような考えしか起こせなかった。ただ、君のその発言を…信じたい気持ちがあったんだ」
ティニは僕の発言に驚いているようだった。僕もどう言葉を付け足していいものか分からなかった。ただ、それは僕の中でよぎった純度の高い本心だった。
「なんて言うのかな…僕も腑に落ちない点は感情の面だけじゃないんだ」
「それはどういう意味…?」
彼女もきっと、コリエンも口にしなかっただけで本当は気付いているだろう。僕は心当たりのあるそれについて言葉を並べる。
「彼の抵抗力。あの写真。到底、コリエンが出来る真似ではないと思っていたんだ」
「だから、不確かな事実よりも、コリエンのことを信じたかったのかしら?」
彼女は僕を見て微笑んでいた。
「なぜ、笑うのです?」
僕の言葉を聞いて、さらに笑みを濃くする。
「君は僕のことを分かっててそれを聞いていますよね」
「ええ、当然でしょ。でも、良かった。貴方が選んだのがコリエンで」
僕は彼女からチタニーの不思議な力の真相について話を聞いた。チタニーがコリエンに憑依して僕を引き止めたこと。僕の村人達と敵対し、森の中にいたのも彼女が導いたようなものであったこと。そして、コリエンは僕を尊重しようとしていたことも。
全てを聞かされた僕は、敗者のように力無く笑った。
「コリエンはきっと、僕の嘘に気付いていたのかもしれないな。だから、僕の気持ちを、行動を尊重した」
僕は、その事実に固まっていた胸の塊が解けていくような気がした。
「尊重は結果的なものかもしれないけど、リエンは貴方を引き止めに行ったわ。それをドル。貴方は大事な人を守りたいという気持ちを、その行為を、横暴とよんだのよ」
僕は言葉を受け止めなければならなかった。コリエンは僕の身を考え、僕の言動を虚構と見抜いた上で守ろうとした。けれど、僕にはそれが復讐の機会を潰した行為にしか受け止めようとしなかった。
「あぁ、僕が悪い。今。コリエンに謝りに行きますよ」
僕は背後に持たれていた扉に手をかける。彼へ謝罪に行かなければ。今となって、一番大事に出来るものを無くさないために。
干渉は、人を思う気持ちからなるものがある。ただ、それを押し付ける事は間違いで、強引に他者の選択肢を奪うものではない。だから、僕は彼を許さなかった。でも、真実を見極める前に、彼の気持ちを知ろうとしなかった僕もまた、間違いだったのだ。
彼に謝罪しに行こう。僕もまた、彼を大事に思うのだから。
僕は、彼の待つ扉を開いた。