テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
(ニキにあいたい)
三重帰って来て、久々に家族とフツーに話して、餅食ってうさぎ撫でて…
1日経って落ち着いたら、一緒に旅行に行って帰ってきたばかりだと言うのに、急にあいつに会いたくなった。
(起きとるかな…起きとるか。)
スマホを開いて、ニキにLINEを送る。
『おい、今どこや』
『実家!天井懐かしい!』
「ふ、笑」
ニキのピースした手が写った天井の写真が送られてきた。
そっと指で手を撫でると、画像がスワイプされてトーク画面に戻ってしまった。
ふと時間を見る。
時計の針は4時を指していた。
始発の電車が出る時間には間に合う。
『家行ってええ?』
『今居らんよ?』
『違う、実家』
『は?お前も実家じゃないの?』
『せやけど』
『え、なんかあった?緊急??』
『いや、なんとなく』
『なんなんw』
三重から広島まで、新幹線で約7時間。
ただ会いたいのもあるけど
あいつが育った場所を、あいつを育ててくれたあいつの家族を、見てみたい。
自分の実家に帰って、そう思った。
『いいけど、俺の親父怖いから覚悟しとけよ。』
『了解w』
なんだか浮き足立ってしまって、家族に適当にLINEして、適当に準備して家を出てしまった。
金は銀行で下ろして、飯は新幹線で食う。
(ま、大丈夫やろ。)
駅までのバスに揺られて、何となく外を眺めながらそう思った。
駅に着いた。ケツが痛い。
新幹線から降りると、よく目立つ紫ジャージを着たやつがたっていた。
「お疲れボビー」
「おう」
まさか迎えに来ているとは思わず動揺したが、いつも通り隣に並んで歩く。
「どうよ広島の空気は」
「あんま変わらんわ笑」
「だろーね笑」
腹減ってる?とか、喉乾かん?とか言って、ニキが駅内の店でバクバク昼飯を食っている間に、俺はニキの実家への道筋を調べていた。
LINEで送られてきた住所を調べて、出てきた写真をながめる。
(ニキの地元、こんなとこなんやな…)
口元が緩むのを感じる。
「あにひらへへんの?」
「いや別になんも」
なんだか照れくさくて、急いで画面を伏せた。
そっからバスやら電車やら乗り継いで、やっと辿り着いた。
「welcome to Hiroshima〜!!」
「なんで英語やねんwてか今着いた訳ちゃうしな!」
軽くいつも通りの軽いボケとツッコミを交わしながら、ニキの実家までの道を歩く。
「…なんかボビー楽しそうだね。住宅街ばっかだし見ても別に楽しくないやろ?」
「…なんか、ここでお前が育って、色んな経験してきたんやと思うと、ええなぁって思うんよ。」
「…ノスタルジック?気持ち悪w」
「やかましいわ」
しばらく歩いて、ニキの家に着いた。
固唾を飲む。
「今日、家族全員揃っとるけん」
「わ、わかっとる……」
ニキが勢いよく扉を開ける。
「ただいま〜!ボビー来たよー!」
「お邪魔します…」
出迎えてくれたお袋さんに頭を下げて茶菓子を渡すと、奥から出てきたイカつい弟が「えー外国人じゃないんじゃ」とか、お袋さんが「いつも▉▉がお世話になってます〜」とか言っていた。
話に聞いていた通りの親父さんが奥で怖い顔で頭を下げているのも見えた。
そのまま俺は客室に通され、親父さんと2人きりになった。
俺は居た堪れず、綺麗に正座をして座った。
「…酒でも飲むか」
ぼそっと呟いたかと思うと日本酒を一升瓶持ってきて、ふたつのコップに注いだ。
「飲め。」
そう言われては飲まない訳には行かない。
あまり酒に強い訳では無いが、緊張と恐怖で一気に飲み干してしまった。
親父さんの顔を見るとあからさまに慌てており、少し申し訳ない気持ちになった。
「すいません、大丈夫なんで、まじで、」
「そうか…?」
そのまま親父さんはちびちびと酒を飲んでいた。
だいぶ酔いが回ってきたのか、だんだん口数が増えていった。
「YouTubeは俺から見てどんな調子なのか」
とか
「ニキはどんな様子なのか」
とか、色々一気に質問責めにされた。
けど、なんだかスラスラ言葉が出てきて、多分、こうやってニキの家族を話すのを夢に見ていたんだと思う。
「ボビー赤くね?w」
隣に座ったニキに耳を引っ張られる。
「のみすぎたかもしれん笑」
ヘラりと笑ってそういうと、日本酒の残りを見たニキがぎょっとした表情で
「うわっ親父飲ませすぎ!!!!」
「ボビーそんな酒強くねえから!!」
と親父さんを叱っていた。
「大丈夫やって、気持ち悪くなってへんし」
「なんか、たのしいし。」
「……そお?」
なんだかニキも嬉しそうにしていた。
お袋さんが夕食を持ってきてくれ、唐揚げやらが大量に机に並べられた。
ニキの家族とバカ笑いして、珍しくニキのことをいじり倒せたりして
すごく楽しい時間を過ごした。
「ボビー大丈夫?」
情けないことに夕食後には、かなり酒が回り足取りも覚束なくなっていた。
「だいじょぶ…」
ニキにベッドに放り投げられる。
ぼふん、とベットに乗っかった途端に、ニキの匂いがした。
「ん……ふふ…」
「何笑ってんの?w」
俺を見て嘲笑っているニキの手を引いて、ベッドに引きずり込む。
「ニキも、このまま寝てまお。」
「…しゃーないな。」
成人男性ふたりが寝転がるには、シングルベッドでは狭すぎる。
身体がピッタリくっついている。
「…おまえの家族、あったかいな。」
「え?」
「いっぱい愛されて育ったんやろなぁって、感じた。」
ニキが子供の頃の話をするご両親の表情。
俺と共にニキをいじっている時の弟の表情。
すごく愛おしそうに、嬉しそうに話していた。
「来年は、ボビーん家行かして。」
「俺もボビーの家族に挨拶したい」
「…ん、アポ取っとく笑」
ニキは「……ぁいして…る。」なんて、馬鹿みたいにちっちゃい声で言って、俺の暑い頬にキスを落として部屋から出て行った。
ただでさえ酒で紅潮している頬がさらに紅潮した。
「…このまま寝るって言ったくせに。」