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狩り手たちとの奇妙な牛丼タイムの後、狩人は店を後にした。だが、彼の中にはある満足感が漂っていた。
「…やっぱり、俺は天才だな。」
虚言癖の裏に隠された「異能」が、彼をそう自信満々にさせていた。
狩人の異能はシンプルだが厄介だ。
彼が放つ嘘は、自分が「絶対に信じ込ませられる」と確信したときのみ現実になる。
ある村で「この村の井戸には毒が混ぜられている」と嘘をついた狩人。彼は村人全員を信じ込ませ、結果的に井戸水は本当に毒で満たされた。
「俺の嘘は、信じるやつがいる限り最強なんだ。」
それが彼の確信だった。
狩り手たちが牛丼屋を後にしてしばらくすると、南無が自転車を漕ぎながらぽつりと呟いた。
「なんか、あいつのことが気に食わないんだよな。」
「南無さん、いつも誰かを気に食わないって言ってますけど。」
石動が苦笑いしながら返す。
「でも、今回は本気だ。」
南無の表情は真剣だった。
狩り手たちが集まる本部で、港が狩人の素性について話し出した。
「確かに、ただの虚言癖に見えるけど、あの男の話には奇妙な一貫性がある。」
「俺たちの情報を狙っていたことは確かだ。」
渋谷が不機嫌そうに腕を組む。
その時、法師がゆっくりと口を開いた。
「狩人は、ただの嘘つきではありません。彼の言葉には、現実を歪める力があります。」
「現実を…歪める?」
石動が驚いて訊き返す。
「ええ。ただし、それには条件がある。」
法師は琵琶を軽く撫でながら続けた。
「彼自身が心の底から、相手を騙せると確信している場合に限り、その嘘は現実となるのです。」
一方、狩人は人気のない路地裏で笑みを浮かべていた。
「さて、次はどんな嘘をついてやるかな。」
ポケットの中には、先ほどの牛丼屋で盗んだ狩り手たちの個人情報があった。
「狩り手の中に裏切り者がいる…ってのも、試してみる価値はあるかもな。」
狩人の異能は、「嘘」を現実に変える。
その力を使い、彼は狩り手たちの中に不信感を芽生えさせ、分裂を狙っていた。
翌日、狩人は再び狩り手の前に姿を現した。
「おい、狩り手の中に裏切り者がいるって知ってるか?」
その言葉に場の空気が凍りつく。
「なんだと?」
渋谷が険しい顔で狩人に詰め寄る。
「いやいや、俺が嘘をついてると思ってるのか?まあ、証明してやるさ。」
狩人は自信満々の笑みを浮かべる。
だが、そこに南無が鋭い声を上げた。
「信じるな!」
南無の言葉に、全員が一瞬動きを止めた。
「俺たちがあいつの嘘を信じたら、それが現実になる。絶対に乗るな!」
南無は幼い体からは想像もつかないような迫力で叫んだ。
狩人は一瞬たじろいだ。
「くっ…なんで俺の力を知ってるんだ?」
だが、法師が静かに言葉を紡ぐ。
「君の嘘は確かに恐ろしい。しかし、私たちが真実を見失わない限り、君の力は無力だ。」
狩人は悔しそうに舌打ちをすると、煙玉を投げて姿を消した。
「また厄介な奴が現れたな。」
渋谷がぼそりと呟く。
「でも、これで終わりじゃない。」
石動が拳を握りしめた。
「あいつはきっと、もっと大きな嘘をついてくる。」
「嘘をつかせないためには、俺たちが真実を見抜き続けるしかないな。」
南無はそう言いながら、再び自転車にまたがった。
「次に会ったら、絶対に潰す。」
その言葉を最後に、狩り手たちは次なる戦いに備えた。
狩人の嘘と真実の戦いは、これからが本番だった――。