ずっと僕は一人だった。
屋上でひとりっきりでロボットを作って
みんなに変人だと噂されて、誰も僕に近寄らない
ねえ
ねえ
なんで
なんでみんな僕から離れていくの
「そんなことないぞ。俺はずっとそばにいる!」
「類くんー!!!あたしもだよっ!!」
「類。あんたのお陰で私はこうして仲間もできてショーができてる。だから類にはその、感謝してる」
みんな、いるじゃないか。離れていったりなんかしない。そうだ、大丈夫。
だいじょう、ぶ…だよね
でも、でも
もしまた僕がやりたい派手な演出を提案したら
そうしたら
みんな離れていっちゃうんだ
「っ…」
目覚まし時計が鳴る前にばっと飛び起きて額に手を当てる。もう習慣のようになってしまったこの動作だったが、予想した通り手には嫌な汗が触れて、指の間をつたってベッドシーツに零れ落ちる。
「…また…同じ夢」
喉から出た声は自分のとは思えぬほど掠れていて、類はぎゅっと布団を掴んだ。
「最近、いつも同じ夢を見てるな…」
ぽつりと漏らした独り言は宙に浮かんで消えた。
——
「…い!!おい類!!」
「あ…司くん?」
「さっきから何度も呼んでいるだろう!!全く…また徹夜したのか?」
「…いや、なんでもないよ。」
類がそう言うと、司は一瞬眉をひそめてまた話し始めた。
「…そうか。じゃあここの演出なんだが…」
「えん、しゅつ…」
「ん?ああ。ここの部分は派手な演出にしてほしいんだ!!類、何かいい案はあるか??」
司が”演出”という言葉を出すなり類の顔が露骨に暗くなる。いつもであれば、無茶苦茶な大ジャンプだとかロケットだとか、そんなことを目をぎらぎらと輝かせて早口で迫ってくるはず…だったから司は不思議に思って類に尋ねた。
「類、なんかあったか?」
「あ、いや…なんでもない」口ごもって俯く類にはいつもの雰囲気がまるでなく、やっぱり何かあったんだと司は確信する。「類…?仲間に隠し事はだめだろう?話してはくれないか」
そう司が問い詰めると、類は少し考える素振りをみせたあとに苦笑いして口を開いた。
「フフ、司くんには敵わないねえ…」
「話して…くれるよな?」
「…わかったよ」
類は渋々といった顔で頷くと話し始めた。
——
「…それで最近この夢をずっと見るんだ。だから、演出を提案するのも何だか不安になってしまって」
「…そうだったのか」
「ごめんね。こんな話をしてしまって…って司くん!?」
類が言葉を最後まで言わないうちに司は類に思いっきり抱き着いた。
「類、よく聞け。俺は、俺たちは類がどんな演出をしようとも絶対に離れない。俺たちはずっと類と、類が考えた演出でショーをするんだ。だから大丈夫だ」
司は類を抱きしめたまま、言いきかせるようにゆっくりと話す。
「…っありがと司くん…」
少し涙が交じった類の声はなんだかいつも聞く声より幼くて、司は少しびっくりして微笑む。
うららかな春の日差しが優しく二人を照らしていた。
コメント
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小説のセンス…エグっ!よし…こうなったら…(迷惑だったりしたら、ごめんなさい(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`) 続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き続き