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フィル様が寂しそうに笑う。 そのような顔を、ずっと見てきた。そのような顔ではなく、明るい笑顔だけにさせてあげたかったのに、俺にはできなかった。でも第二王子にはできた。きっとバイロン国では、フィル様は毎日、明るく笑って過ごされているのだろう。
俺は小さな白とピンクの花を眺めて考える。この花は、フィル様みたいだ。|可憐《かれん》で美しい。しかも強い。周りの花が枯れても、長い期間咲き続ける。そして年月を重ねて増え続け、美しさが増していく。
今、フィル様が隣にいる。昔の頃のように、王城の庭で、二人きりで花を見ている。ここにはフィル様の心を奪う第二王子もいない。
「ラズール?どうしたの?」
黙ってしまった俺を心配して、フィル様が俺の顔を覗き込んだ。その瞬間、鼓動が速くなる。生まれた時から見ている顔なのだが、よく驚かされる。フィル様は俺にだけ、いろんな顔を見せてくれる。嬉しい顔も悲しい顔も。何度見ても慣れなくて、何ごとにも動じず人形のようだと言われる俺が、いつも心を乱されてしまう。
今も動揺を隠すように、微笑みながら口を開いた。
「いえ…、こちらの花が、フィル様のようだと思って見とれていました」
「白とピンクの?僕、この花も好きなんだ。これが僕に似てるの?嬉しいな」
「はい、こんなにも可憐なのに強いところが似ています。フィル様も強い心をお持ちです。ですが辛い時などは、|我慢《がまん》せずにリアム様に甘えてくださいね」
「うん、そうする」
フィル様が、今度は明るく笑う。やはりフィル様をこんなにも明るい笑顔にできるのは、第二王子だけなのか。
俺は切なくなり、手を伸ばして風に揺れる銀髪に触れる。
「フィル様、今、幸せですか?バイロン国で、辛いことはありませんか?」
「無いよ。すごく幸せだよ」
「それを聞いて安心しました。リアム様の傍にいるから大丈夫だろうとは思ってましたが、俺がすぐに駆けつけることができないので心配してました。俺は、今でもあなたのことを思わない日はありません」
「ラズールは心配性だもんね。この城で、ラズールの傍にいた時も幸せだったよ」
「…嬉しいお言葉、ありがとうございます。フィル様はお優しい。その優しさに甘えて、今から言いたいことを伝えます。聞いてくださいますか?」
「うん、なに」
俺はフィル様の前で片膝をつき、フィル様の両手を握りしめた。そしてフィル様を見上げ緑の瞳を見つめた。