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誰も知らない、高嶺の花の裏側4
第1話 〚1月19日/ふたりの昼休み〛
1月19日。
もう冬休み明けではなく、学校の空気もすっかり日常に戻っていた。
昼休み。
澪と海翔は、いつものように図書室の奥の席で静かに本を読んでいた。
噂はすでに落ち着いていて、
「カップルになったらしい」という騒ぎも今では完全に終わっている。
周りの視線も全く気にならなくなり、
ただ二人で本をめくる音だけが心地よく響いていた。
澪がふと顔を上げて、海翔に小さな声で言った。
「これ……借りたい。」
それは澪が前から気になっていた小説だった。
「じゃあ、行こ。いっしょに、カウンター。」
海翔が自然に立ち上がり、澪もその横に並ぶ。
カウンターでは、
図書委員の中学2年生の女子が静かに作業をしていた。
澪が本を差し出して言う。
「あの……これ、借りたいです。」
図書委員の女子は顔を上げた瞬間、
澪 → 海翔 → また澪
と視線を行ったり来たりさせて、目をまん丸にした。
(え……美男美女すぎない?)
(え、てかこの距離感……カップル?絶対カップルでしょ……)
すると図書委員さんは、
耐えきれなくなったように一歩乗り出し――
「えっ……あの、すみません!
もしかして……つ、付き合ってますか!?(尊い……)」
オタクみたいな勢いで聞いてしまった。
澪は一瞬で真っ赤になり、何も言えない。
代わりに海翔が、まったく動揺せずに答えた。
「はい。付き合ってます。」
堂々と、まっすぐに。
その瞬間、図書委員さんは小さく「っ……最高……」と漏らして、
処理中の手が震え気味だった。
「す、すみません!貸出カード、お預かりしますっ……!」
澪は恥ずかしさで胸がいっぱいになりながらも、
カードを渡し、無事に本を借り終える。
そのとき。
―― キーンコーンカーンコーン。
昼休み終了のチャイムが鳴った。
「あ、戻ろっか。」
「うん……!」
澪と海翔は軽く会釈して図書室を出て、
そのまま並んで教室へと戻っていった。
2人の足取りは、噂が消えた今の分だけ、
前よりも自然で、少し近かった。
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