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この日も涼ちゃんは、ご飯を前にして、ほとんど口をつけられなかった。 喉が締めつけられる感じがして、無理に食べようとすると涙が浮かんでくる。
そんな様子に、𓏸𓏸は何度も言葉をかけた。
「お願い、少しだけでも……食べないと、もっと弱っちゃうよ」
けれど涼ちゃんはただ首を横に振るだけ。その顔は苦しそうで、力も入っていない。
𓏸𓏸は焦りと心配とが爆発し、とうとう用意されていた栄養チューブを手に取った。
「ごめんね、苦しいかもしれないけど、入れさせて――」
涙ぐむ涼ちゃんの口に、チューブが差し込まれる。 冷たくて違和感のある痛みに、涼ちゃんはついに堪えきれず、ぽろぽろと涙をこぼして泣き出してしまった。
「やだ……やめて……やだよ……」
するとその時、廊下を通りかかった看護師が、それに気づいて慌てて駆け込んできた。
「どうしたの!? 𓏸𓏸ちゃん、ちょっとやめて!」
看護師はすぐに涼ちゃんのそばに来て、やさしく背中をさすりながら、栄養チューブをそっと手から外す。
「気持ちはわかるよ。𓏸𓏸ちゃんも、涼ちゃんに元気になってほしくて無理させちゃったんだよね。でも、本人がこんなに苦しんでたら、余計に辛いんだ」
看護師は優しく微笑んで、涙を拭く涼ちゃんをそっと抱きしめた。
「今度、ご飯のときにどうしても食べられなかったら、私か他の看護師を呼んでね? 必ず相談に乗るから、二人だけで無理しなくていいよ」
𓏸𓏸は、はっとして俯いた。自分の気持ちの焦りや不安が、涼ちゃんを追い詰めてしまったと気づき、涙をこらえながら小さくうなずいた。
「……ごめんなさい。もう無理やりしない……」
看護師はにっこり笑みを浮かべ、 「ありがと。みんなで一緒に、涼ちゃんを支えていこうね」 そう言って、二人の手をそっと重ねた。