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212
麗太
514
柘榴とAI

380
夜の町に雨が降り始めた
あんなことがあった後、俺と彼女はコンビニにいた。
無論食欲は湧かず、飲み物を手に取る。コーラを手に取る。
「そレ…あなたの体に必要な栄養素、あまリない…」
ここで変に理屈的にはならなくていいだろう
「うまいから飲むんだよ」
彼女もゆっくり手を伸ばしコーラを手に取る。
「栄養ないんじゃなかったのか?」
彼女はこちらを向いて微笑むように言った。
「うマいから、飲む…」
その微笑みにドキリとしてしまった。
容姿だけはいいんだよな…
コンビニでの物の買い方を教えた後、傘を差さずに帰り道を歩いてゆく。
「頼む、拾い食いをしないでくれ」
「うマいから…」
「それは分かったよ」
食べ物はおろか、タバコの吸殻や袋も食べるものだから見ていて気分のいいものではない。
ましてや少女がそれをしているのだから。
「そもそも消化できるのか?」
「私ノ体には消化酵素ない。サンプルとして保管しテるだけ」
話しているうちに我が家が見えてくる。アパートの二階へ向かい部屋に入る。
ため息をついてベッドに入り込む
疲れたと肉体ではなく脳がシグナルを飛ばす
思考を整理したい。
「そっとしておいてくれないか」
彼女は何も言わない。
まどろみの中で見る夢はいつだって悪夢だ。
夜明けの光が差す曇り空、俺は電波塔の頂上にいた。
強風に髪はなびくのに塔の上から自分が落ちる気配はない。
見晴らしがよく、周りが見渡せる。
遠くに見える街は燃えていた。
耳を済ませばサイレンの音や悲鳴が聴こえる。
プシュッと何もないところから鮮血が飛び散る。
それに呼応したように自身の体から血が流れ、出てきた泡がパッと弾ける。
「痛っ」早く水で洗い流さないと…
浴室に向かって歩き出す。
部屋の中の自分の血で溺れる前に。
シャワーの蛇口を捻るとパッと場面が切り替わる。
エレベーターのような密閉空間だった。
目の前のドアが開くと人が入ってくる。
次々に入ってくる。
俺のことを見るな。
苦しい。
キィィィンという耳鳴りと共に視界が真っ白に染まる。
歩くための足を折られる。
「ごめんなさい…ごめんなさい…死にますから許してくださ…」若いカップルから非難、罵られる。
それに続いてスーツ姿の中年男性が説教を浴びせてくる。
友達は見捨てて去っていく。
そして一人きりになる。
次は誰が俺を否定するんだ。
この長く辛い旅はいつ終わるんだ。
顔を上げると彼女がいた。
目が合った瞬間に景色が切り替わる。
真っ白な空間。
どこを見渡しても水平線。
解放感。
静寂。
彼女と二人だけの空間。
微笑んで手を差し出してくる。
あぁ、そうか、終わらせてくれるんだな。
迷わずに手を取る。
動かなくなっていた足が再び歩みを始める。
破滅へと歩むために。
彼女は言う
「どこまでも、行こう」
コメント
1件
うわあ…第3話、すごく重くて美しかったです。 コンビニでのほんの一瞬の微笑みにドキリとする主人公と、悪夢の描写のギャップが切ない。夢の中で彼女が手を差し伸べて「どこまでも、行こう」って言うシーン、破滅への誘いなのにどこか優しくて、読んでて胸がぎゅっとなりました。 シルバーさんの描く“闇”の表現、すごく丁寧で好きです。続きが気になります。