テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
(NAOYA視点)
昔から、このルックスのおかげで男にはモテていた。
おかげで、ナオは一度も自分から告白をしたことがない。
しなくても、勝手に好きになってもらえるから。
“あ、この人かっこいい!”
そう思ったら近付いて、ちょっと上目遣いで目を見つめて、愛嬌を振りまけば、次会った時には既にナオの虜になっている。
昔、一度だけ、
“この人のこと、本気で好きなんかもしれへん”
と思ったこともあった。
でも、今まで人をちゃんと好きになった事がなかったから、本気ってのがどういうものか分からなくて、もしかしたらそうだったのかもしれないけど、結局上手く伝わらなくて。
それからは、恋なんて、ナオは一生しないんだろうなって思ってた。
でも、去年の夏、それが覆った。
セイちゃんが初めてうちに来た時、顔を見た瞬間に、あ、タイプや…て思った。
整った男前な顔つきに、ガタイが良くて、ルックスがドンピシャに好きなタイプ。
一瞬でナオのターゲットになって、いつもみたいに愛嬌を振りまいて近付いた。
カイリュウにはすぐに狙っていることがバレて、「一目惚れした」と浮かれて話をしたけれど、最初は、下品な話、1回ヤれたらええなぁくらいの気持ちだった。
セイちゃんがうちに来るようになってから、愛嬌を振りまいたおかげですぐに心を開いてくれて、仕事以外にも遊んだりするようになった。
カメラマンの仕事が上手くいかなくて落ち込んだ日、元気になりたくてセイちゃんを誘ったことがあった。
“明日早い”と言っていたはずなのに、ナオの話を一晩中うんうんと聞いてくれて、”ナオが元気になったならよかった”とそれだけ言って、優しく笑って頭を撫でてくれた。
一晩中男と2人でいて、身体を求められなかったのはそれが初めてだった。
ナオの髪に触れたセイちゃんの手があったかくて、胸の中がじんわり溶けてくみたいに熱くなって、ふわふわして、目の前が海みたいにキラキラして、あぁ、これが恋なんだって初めて体感した。
それからの毎日は、ほんっまに楽しくて。
セイちゃんがおるだけで、ハッピーになれた。
まぁ、男遊びはやめられへんやったけど。
でも、ナオと仲良くなるのと同時に、セイちゃんはどんどんカイリュウとも仲良くなっていった。
それはナオも嬉しかったけど、人に好意を向けられることに慣れているせいで、セイちゃんの熱い視線にもすぐに気付いてしまった。
多分、セイちゃんが好きなのはナオじゃない。
カイリュウを見る目が、キラキラ輝いていたから。
でも、まだセイちゃんがそう言ったわけじゃないから、と今まで心を保っていられていた。
……のに、
「…俺、実はカイリュウの事好きやねん、」
「……え?」
ナオが持てなかった重たい荷物を持って、セイちゃんがこっちへ来た途端、その言葉を放った。
「うわぁ〜、人に言うたん初めてや、ナオが初めて。」
照れくさそうな顔で、”ナオが初めて”なんて言った。
……ナオも。
ナオも、初めてなんよ。
人を、こんなに好きになったの。
「……そうなんや?…え〜っ、?ナオに初めて言うてくれたん?嬉しい…っ、」
「…いや、やっぱりナオには言うとこうかなって思ってん。……ほんで、相談させてもらえたら助かるねんけど…」
「っ……うん、…ええで、?……あ、…ごめん、今日はカメラの方の仕事入ってんねん、せやからまた今度な…っ?」
「あ、おん、ありがとう、ほんま助かるわぁ…仕事、頑張ってな?また無理すんなや、?」
「……うん、ありがとうねっ、?じゃあ、もう、行くなっ、?ばいばい……っ、」
取り繕えるかと思ったのに、全然上手くいかなくて、
セイちゃんの言葉を聞いてると、声が震えてきて、
こんな気持ちは初めてで、どうしていいかわかんなくて。
嘘をついて、逃げることしか浮かばずに、その場を去った。
「っ、わ!」
「っ、おっと、!」
勢いよく外に出ると、ちょうど買い出しから帰ってきたらしい2人がいて、カイリュウとぶつかってしまった。
「、わりっ、ナオヤ、大丈夫かっ、?」
「っ……、」
優しく顔を覗き込んで、ぶつかったナオの事を心配してくれるカイリュウ。
“俺、実はカイリュウの事好きやねん”
カイリュウの顔を見ると、セイちゃんの言葉が浮かんでしまう。
……分かるよ、セイちゃん。
カイリュウって、素敵やもんね。
こんな、遊んでるようなナオのこと、たまに怒るけど、ずっと友達でいてくれてさ。
すぐからかってくるけど、それは全部、愛情表現で。
だって小さい頃から、ナオが困ってたら絶対に助けてくれるんやもん。
……このお店だって、カイリュウがおらへんやったら、どうなってたかわからへん。
カイリュウは、ずっとナオの味方をしてくれる、優しい人やから。
ナオにとっても、大事な人やねん。
……でも、
「っ、おい、ナオヤ…、?」
……カイリュウ、ごめんね。
今日だけ。
羨ましいって、思ってもええかなぁ、?
「っ……、ごめん、かいりゅっ、、きょう、っ、お店、お願いね、っ、?」
「……っ、え、…っ、ナオヤ…っ、?」
涙をこらえきれそうになくて、それだけ言い残して海の家を後にした。
ーーーーーーーーーーー
(RYUKI視点)
ラン兄やカイリュウと出会った海の家を離れ、ハヤトがサークルの方へ行ってしまうと、たっくんとそのまま海岸沿いを散歩することになった。
「……なんか、すごいこと起きとったね、」
「え、?」
「…いや、あんなとこで、昔の知り合いに会うとかさ、」
歩きながら、ラン兄との事を、聞いていいのか迷っていた。
それとなく、名前は出さずとも、その話に持っていく。
「……ランね、…うん、びっくりした、俺も」
「……ラン兄のこと、聞いてもいい、?」
たっくんから名前を出したことで、触れてもいいのかなと、思い切ってそう聞いてみた。
「うん、…てか、”ラン兄”って、?笑」
「あ、いやっ、同じ九州出身やったけん…なんか、親しみを込めて、?そう呼んでいい?って、言ったんよね」
「…なんか、リュウキらしいね。」
「そうなん、?」
「うん。笑」
“リュウキらしい”なんて言ってもらえるほど、俺の事、ちゃんと見てくれとんかな、なんて嬉しくなりながら、話を続ける。
「……ラン兄、ダンサーって言っとったけど、たっくんがバックダンサーやってた時の知り合い、?」
「…それよりちょっと前だね。同じ東京のイベントに出てて、ランが声掛けてくれて。俺がちょうどリュウキくらいの歳だったかな」
「へぇ…っ、結構仲良かったん、?」
「うん、仲良かったよ。イベントで会ったら、よく遊んでたし。俺がバックダンサー始めてからは、忙しくてだんだん会わなくなっちゃったけど…」
「そっか…それ以来の再会ってこと、?」
「そうだね…、俺が、バックダンサーやめたことも、言ってなかったし…」
「……たっくん、なんで、バックダンサーやめたん、?あんなに上手いのに、」
そう聞いてみると、たっくんが急に足を止めた。
なんだか、表情が重くなった気がして、聞いちゃダメやったかなと思い、慌てて謝る。
「っ、ごめん、言いたくなかったら言わんでええけん、」
「……ううん。……リュウキに、言っておかなきゃなって、思ってたから。」
「…え、?そう、なん、?」
「……ちょっと、座ろっか。」
「っ、う、うん…、」
たっくんに手を取られ、海辺の階段に座る。
腰を下ろしてから少し経っても、なかなかたっくんは口を開かない。
「……やっぱり、話したくない、?」
「ううん。……ちょっと、長いんだけど、聞いてくれる?」
「うん、もちろん。」
隣から、プレッシャーをかけないように、表情を少しだけ窺う。
たっくんは何度も口を開けたり閉じたりして、ぎゅっ、と下唇を固く噛んだあと、ゆっくりと話し始めた。
「……俺、ランと出会う少し前、恋人ができてさ。」
「っ、…う、うん…」
……あ、昔の話でも、結構食らうなぁ、なんて思いながらも、ちゃんと聞かなくちゃと耳を傾けた。
「………それが、……まぁ、…大学の先生なんだけど。」
「………えっ、?」
「…引くよね。ごめん、」
「っ、!違う、引かんよ、大丈夫、…てか、それって、もしかして、…俺といる時に会った先生、?」
「……うん、そう。…ごめん、あの時、動揺して。」
「……そっか、…うん、…それで、?」
…やっぱり、あの先生となんかあったんや。
少し心が重くなりながらも、たっくんの言葉を待った。
***
(TAKUTO視点)
俺は当時、真面目に大学に通っていなかった。
そもそも、親から”大学だけは行け”と言われて、わりと大きいダンスサークルがあるからってだけで適当に選んだ大学だった。
東京にも、あまり拘りはなかった。
ダンスができれば、それでいい。
ダンサーになる事が、夢だった。
でも、そんな不純な理由で大学に入った俺は、ダンスを理由にほぼ大学に行かず、どんどん単位を落としていった。
さすがにやばいか、と焦り、必修だけでもなんとかしなきゃなと、直談判することにした。
それが、先生との初めての関わりだった。
先生の研究室に足を運び、それとなく最もらしいことを言って単位を貰おうと考えていた。
でも、先生は俺の魂胆をすぐに見抜き、正直に話してみてと言ってきた。
その雰囲気に飲まれるように、ダンスの話を打ち明けてしまった。
先生はただ俺の話を聞き、何を言うでもなくその場は終わり、失敗したと思っていたのに、その後成績が出たときには、しっかりと単位が与えられていた。
お礼を言いに先生に会いに行くと、何のことかわからないなんて笑っていた。
堅くなくて、先生のくせに先生っぽくないところに、俺はすぐに惹かれてしまった。
それからしばらく、俺はダンスと先生に夢中になった。
先生に会うためだけに、大学に行っていた。
先生は一度も、ちゃんと講義を受けろとか、先生らしい事を言わなかった。
そういうあの人が、好きだった。
ある日、俺がサークルで踊っていると、ふと視線を感じて、目をやると先生がそこにいた。
ずっと、先生の研究室に俺が出向いて話をしていたのに、先生がそこにいて、俺を見ていた。
目が合うと去っていく先生を追いかけて、腕を掴んだ。
気持ちが抑えきれなくなって、告白をした。
その日から、俺と先生は付き合うことになった。
それからは、幸せな日々が続いた。
ダンスで度々東京に行く俺の事も、何も言わずに先生は応援してくれた。
会えない時は必ず電話をして、好きだと伝え合った。
先生は、俺の、一番大事な人で、一番の理解者だった。
俺がバックダンサーに合格したときも、一緒に喜んでくれた。
最初は毎日連絡を取っていたけど、大学もほぼ休学の形で来れなくなり、目まぐるしい忙しさで、だんだんと先生との時間が取れなくなっていった。
それでも、暇を見つけては電話したし、気持ちは全く変わっていなかった。
先生も、同じだと思っていた。
久しぶりに大学に来れた日、先生に会うのを楽しみにしていた。
会ってすぐに、話があると切り出された。
先生から出た言葉は、”結婚することになった” だった。
俺と会わない間に、恋人ができていた。
ショックで、何も考えられなかった。
なんで?浮気じゃん、
そんな事も思ったけど、先生を責められなかった。
男同士、ましてや先生という職業で、世間体もある。
学生と付き合ってるなんて、先生にとってはデメリットでしかない。
……それに、一番悪いのは、俺だ。
俺が、理解してくれているはずと、先生に甘えていた。
自分の夢を、追うことに必死になっていた。
先生は、ずっと我慢してくれていたのかもしれない。
俺が、もっと、先生を見ていたら。
俺が、自分のことばかり、考えなかったら。
後悔ばかりが、募っていった。
その事から立ち直れずに、あんなに恋焦がれていた夢もどうでも良くなり、バックダンサーを辞めた。
応援してくれていた、先生が、原動力だったから。
「………そういう、感じで、…まぁ、辞めちゃったんだよね、」
過去を掻い摘んで、リュウキに話した。
「……っ、なにそれ、……めちゃくちゃ辛いやん、、っ、」
「っ…ははっ、うん、…まぁ、なかなか重いよね、」
「………てか、そんなの、1人で抱えとったん、」
「……言えないでしょ、こんなの。」
「………なんで、俺には、言ってくれたと、?」
「…もっと、俺の事知る前に、言った方がいいかなって。」
「っ…どういうこと、?」
「………まだ、…あるから。」
「…え、?」
「……話しておきたいことが、まだ、あるから、」
「っ、…なに、?」
リュウキに打ち明けようとする唇が、小さく震えていた。
ずっと、自分の中だけで抱えていたこと。
それを、口にするのは怖かった。
……でも、なぜか、リュウキには、伝えなくちゃと思っていた。
それは多分、リュウキの存在に救われているから。
初めて会った時から、少しだけ感じていた自分への好意。
俺は多分、その好意に救われていた。
若くて、素直で眩しくて、
リュウキといると、景色が明るくなった。
けど、救われている分、怖くなった。
……このままだと、俺はまた自分勝手に、リュウキを傷付ける。
離れていくなら、傷が浅い方がいい。
まだ、深くならないうちに。
そう思った。
「……俺、バックダンサー辞めて、…大学も辞めて、東京に戻ろうとしたんだよね」
「…うん、」
夢も、先生も、諦めよう。
大学も、もうどうでもいい。
そう思って、東京へ戻ろうと決めた。
でも、バックダンサーを辞めてから、しばらく経って退学届を出そうと大学に出向いた時、ばったり先生に会ってしまった。
つい、先生の左手に視線がいった。
結婚、したはずの、先生の指には、指輪ははめられていなかった。
“………結婚、……おめでとう、”
それを見て、振り絞るように、祈るように、思ってもない言葉を言って、もしかして、と期待してしまった。
……先生は、結婚していなかった。
破談になったと、教えられた。
それだけ聞いて、その場を去った。
何もかも、諦めようと思ったのに。
先生だけは、諦められなかった。
先生が結婚していないと知って、退学届を捨て、大学に戻った。
先生と関わることはなかったけど、大学にいる間、ずっと先生の左手を気にしていた。
薬指には、ずっと何もはめられないままだった。
留年しながらも無事に卒業し、進路を決める中で、やっぱり先生の元から離れることができなくて。
こっちに残ることを決め、未練たらしく大学の近くでダンススクールを始めた。
サークルの後輩には、勧誘のためと言って、時々大学を訪れては、先生を見に行っていた。
「………それで、最近行った時に、リュウキと出会って…、」
返事がない。
隣を、見れなかった。
***
(RYUKI視点)
たっくんの話が、身体に重くのしかかる。
正直、胸が張り裂けそうなくらい苦しかった。
でも、
話している間ずっと、たっくんの声が震えていた。
きっと、ずっと誰にも言えないまま、1人で苦しんでた。
俺だけに、それを話してくれた。
その意味は、絶対に大きいから。
「………それでもいい、」
「…え、?」
「……まだ、好きなんやろ?……それでもいいけん、たっくんの傍におりたい。」
「っ……、りゅうき…っ、」
「……今までずっと、1人で抱えとったんやろ、……苦しかったよね、たっくん、」
「…っ、……、」
「俺、諦めんけん。……気付いとるやろうけど、俺、…たっくんの事が好き。……俺が、絶対忘れさせるけん、」
「……っ、…ふふ、っ、……ありがとね、、りゅうき、」
少し涙ぐみながら、小さく笑って、震える声でそう言ったたっくんに、胸が痛くなる。
たっくんが、他の人の事を好きだということは、本当はまだ、受け止めきれてない。
でも、ゲーセンで、車の中で、涙が出るくらい笑ってたあのたっくんの顔を、取り戻してあげたい。
その気持ちの方が、強かった。
#stxl
コメント
3件

もーーー!!! ほんとにこれからどうなるの!?? 4角関係もつらいし、🍓の過去が想像以上に重かった、、、 こんなストーリーを思いつくなんて天才ですか!! 次の投稿も楽しみに待ってます🍀*゜
ああ😭辛い苦しい… 💖は☕️の事も大好きだから余計辛いね…なんも悪くない☕️に当たっちゃわないようにどっかに行ったのかな🥲 🐿もまだ先生のこと好きな🍓の隣に居続けるのって辛いことだと思うけど"忘れされてやる"って言った強い🐿かっこいい😭😭🐿が🍓を幸せにするんだ!!それが使命!! みんな幸せになって欲しい😭😭😭
初コメ失礼します( .ˬ.)"私は普段パロディは読まないのですが、ほんとに面白くて続きを毎日楽しみにしています!なおちゃん絶対辛いのに偉いし、りゅうき一途で感動しました😭みちさんの書く小説ほんとに大好きです💖無理しない程度に頑張ってください!