「良いんですか!?」
「あぁ、ええよ。もらってけもらってけ」
「ありがとうございます!!」
こんなにアルが喜んでいるのには理由がある。
このジジイから廃倉庫を貰った。しかもデカい。
昔っから秘密基地に憧れていたから、楽しくて仕方ないだろう。
「レッド行こう!みんなも連れて!!」
「分かった分かった。だから落ち着け」
この時、こんなジジイを信じるな、なんて言えれば良かった。
廃倉庫なんて、もらわなきゃ良かった______________。
「みんな連れてきたぞ」
「ありがとう!」
廃倉庫だって、楽しみだなぁ。
どんなものを入れようかなぁ。どんなことをしようかなぁ。
「私あっちの方見てくるね」
そう言ってアルは走って行った。
その時だった。アルとは真反対の方から音がした。
レインボーフレンズ(アル除く)はみんな集合している。
誰だ?アルを待つか?いや、アルに危害が及ばないうちに確認しよう。
そうしよう。
「行くぞ、お前ら」
「うん、何があっても、大丈夫」
「そうか」
みんなの目が、いつもと違うのに気づくのに時間は要らなかった。
覚悟を決めたのか、そんな目が、心の中の何かを少し安心させた。
着いた。
ここに入った瞬間、首が切れるかもしれない。
胴体と四肢がお別れになるかもしれない。
でも、アルのためだから、大丈夫。何も怖い事はない。
俺は、ドアを開けた。
「ヒヒッ。気づかれちまったか」
「やれ!お前ら!ヒヒヒヒヒッ」
そいつが言うのと同時に、影から沢山の化け物が飛び出してきた。
沢山と言っても四人。全員強そうな見た目だ。
「レッドはあいつを追いかけて!!走って!奥へ!!全速力で!!」
「…任せたぞ」
俺はあいつを追いかけた。
「激しい物音がする」
独り言が、部屋に響いた。
喧嘩かと思ったけれど、違う。
刃物の音や、知らない声の笑い声。そんな音が激しい音と一緒に耳に舞い込んできた。
「早く行かないと、みんなを助けないと!!」
全速力で音の方へ走った。
「アル!!」
「みんな無事!?レッドは!?」
「ボク達は平気!レッドは奥の方だよ!走って!!」
「みんなありがとう!!」
「気をつけてね!!」
「ハァ…ハァ…」
「おいどうした?そんなものか?ケヒヒッ」
「レッド!!」
「アル!!」
そこには、主犯格らしい水色のドレスを着て、横たわっている赤毛の子と
ボロボロのレッドがふらふらで立っていた。
「ケヒヒヒヒッお初にお目にかかり光栄ですヒヒッ」
「ワタクシはボクシー・ブー、よろしくお願いしますケヒッ」
「よろしくも何も、ここでお前とはお別れだろうよ」
「胴体と首がバイバイしたくなかったら帰ることだな」
「ヒヒヒヒヒッ出来もしないことを言って、自己満足ですか?」
「お前の方こそ、私を倒せないだろ?冗談はほどほどにしとけよ」
「ほぉ…ならばやってみてください、ケヒッ」
そう奴が煽った瞬間の出来事だった。
目にも止まらぬ早さでアルは奴の腕を切り落とした。
「い”っでぇ…クソが…中々やりますねケケケッ」
「次は〜左足かな」
「その次は右脚、最後に左腕かな」
「頑張ってね」
すぐアルに言わなかった自分が、なんだか馬鹿らしく思えた。
アルの楽しみがどうこうって、違うよな。
楽しみを壊さないために戦ってんだもんな。
あのボクシーブーってやつはアルにかすり傷残せずタヒんで行った。
これがただの会社員だなんて、想像がつかなかった。
「疲れたぁ」
そう言って、少しフラッとした時だった。
ザクッ。
アルの胸に、血まみれのナイフが突き刺さった。
第二話 優しさの裏の企み