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そもそも話がおかしかったのだ。
先日、家を訪ねてきた叔父は僕に言った。
「東の森を抜けた街までお使いにいってくれないか。なに簡単なお使いだよ、金はきちんと持ってきたからな」
僕はいやいや承諾した。しかし、本音ではこの叔父のことだからなにか企んでいるんだろうなと思っていた。
それがこの眼の前にある光景である。
まず、盗賊と見られる若い男が道端に倒れている。その先には、10人ほどの甲冑姿の兵士たちが同じように地面に倒れている。そのうち1人は王国直属の近衛兵、階級はかなり高い。幸い、全員は眠っているだけだ。幸い―たしかにそうかもしれない―もし、僕の眼の前にいるのが数多の伝記に名前を残した一匹の黒竜でなければ。
竜種の中でも魔術に長けた種族、特に得意とするのは眠りの術と人間には禁忌である時間を操る術を使う。風が吹いて、木々がガサガサと不気味に揺れた。黒竜の周りの空間が蜃気楼のように歪んだ次の瞬間、僕の意識はなくなった。