「今回の獲物はこれだ」
「…銃取引、ですか」
「そうだ。一応此方で軽く調べたものはそこに載せてある」
「詳細は其方で調べてくれ。此方もなかなかに忙しくてな。確認したら燃やす様に」と、燃える様な赤い唇が美しく弧を描く
艶やかな黒髪が、サラサラと肩を滑った
「取引する組織と商人はどうしますか?」
「商人は捕らえて貰いたい。そのほかは潰しても構わん」
「了解しました」
楽しげに口角をあげ、僕を見た
「……なんです」
「…楽しいか?学校は」
「………別に」
ペラペラと依頼内容等が書かれた紙を捲っていく
「…………わざとですか」
「何がじゃ?」
ふざけた様な口調で話す理事長を睨む様に見つめた
「……転校生。あれla mûre、ですよね」
「……さぁな。どうだろうか」
ジッと見つめる僕に、理事長は笑顔で答えた
「……ハァ、答える気はない様ですね」
「………おぉ、やはり早いのぉ」
僕は一瞬にして座っている背後に周り、首にナイフを添えた
理事長はパチン、と指を鳴らせば僕の首にも冷たい感覚が伝わる
「……まったく、この部屋だけ貴女以外魔法が使えないのは本当に不便ですね」
ナイフを仕舞い、元いた位置へ歩いていく
「………別に、貴女が何をしようが契約さえ守ってくれればなんの文句もありませんよ」
「安心しろ。上手く行けば君達にとって都合も良くなる筈じゃ」
「……だと良いですけどね」
『僕は……僕は何をしたらいい…?』
『何をすればいいのか……もう…っ分からなく…なりそうだ……』
「でも今の所は……」
「上手く行かなかった場合は、覚悟しておいてくださいね」
ギラリと黄色の瞳を輝かせ、気でパンッと窓全体にヒビを入れる
「ぬ、これいくらすると思っとるんじゃ!」
「知りませーん」
「それでは」と踵を返し、扉を開ける
「るぅと坊」
ふと名前を呼ばれ、振り返る
「安心しろ。此処に居る限り”あの子を傷つける”事は絶対にさせない」
強く、迷いのない紫の瞳
「…………
出来る訳ないでしょう、そんな事」
再び足を動かし、扉を閉じた
第4話
「ただいまぁ」
後ろ手でドアを閉め、靴を脱ぐ
「おかえり、るぅとくん」
いつも通りころちゃんが迎えてくれて笑顔で返す
ふと、気がついた
「あ、莉犬来てるの!?」
「今日は金曜日だよ」
「あそっか!やったぁ」
毎週金曜日
3人で食事をとり、一緒に寝る
それが恒例となっていた
「莉犬いらっしゃい」
リビングの扉を開け、ソファーに座っている莉犬へと近寄る
「おかえり、るぅとくん」
コントローラーを握り、振り向いた莉犬に癒しを求め、抱きつく
………………ぁ
「…莉犬、申し訳ないんだけどご飯食べた後でいいからこれ調べてほしい」
莉犬から離れ、鞄から書類を取り出して莉犬に渡した
「「…銃取引?」」
莉犬と一緒に書類を覗き込んだころちゃん達が一斉に声を発した
「そー、場所と時刻とかを調べてほしいの。んで、商人は捕らえたいって」
「了解。大丈夫、すぐ終わると思うからご飯作ってて」
そう言ってリビングから出ていく莉犬を見送り、パタンと閉ざされた扉を見てソファーに倒れ込む
「……………その癖、そろそろ直さないとね」
「…………んー……よく安心してた、から」
「………さっ、今日は鍋だよ。一緒に作ろ」
「…うん、そうだね」
「…………それは僕も同じだよ」
その言葉は僕の耳に届く事はなかった
コメント
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