テラーノベル
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空の裂け目から現れたのは三人。 全員が同じような革鎧を着て、剣と槍を持っていた。
顔は人間だ。髪も、肌も、年齢もばらばら。なのに目だけが虚ろだった。
「……前進」
ひとりが低い声で言うと、三人は一斉に歩き出した。
歩幅も、速さも、完全に同じ。
「逃げろ!」
誰かが叫び、空気が弾けた。
直樹は反射的に拓海の腕をつかんだ。
「拓海、走れ!」
「な、なにあれ……映画じゃん……!」
背後で、石畳に何かが叩きつけられる音がする。 振り向かなくても分かった。 投げ槍だ。
当たった観光客が倒れ、血が広がる。
悲鳴が遅れて耳に届いた。
「こっちだ!」
佐久間が叫び、避難場所の案内標識の方を指差す。 人が雪崩のように押し寄せ、出口はすぐに詰まった。
「押すな!」
「子どもが――!」
直樹の背中に衝撃。誰かが転ぶ。
「里奈!」
クラスメイトの里奈が転びかけ、直樹は手を伸ばした。
「ごめん、ありがとう」
その瞬間、背後の空気が冷えた。 ガリ、という音がすぐ近く。
異世界人が、もうそこまで来ている。 神代は反射的に、里奈を引き寄せた。 槍が、さっきまで彼女のいた場所を貫く。
「……っ!」
異世界人の顔が、間近にあった。 歯を食いしばり、涙を流している。
――泣いているのに、止まらない。
「来るな!!」
佐久間が消火器を振り回し、粉末を噴射した。 白い霧が視界を覆う。
「今だ! 走れ!」
神代たちは非常階段に駆け込んだ。 足音が重なり、誰かが転び、誰かが泣く。
階段の下から、規則正しい足音が追ってくる。 走っているのに、追いつかれている感覚。
「……拓海、いるか!」
「いる!でも藤本が――!」
その名前を聞いた瞬間、直樹は足を止めかけた。
「直樹!」
佐久間が腕をつかむ。
「戻るな!今戻ったら全員やられる!」
理屈は正しい。
でも――
下の踊り場で、誰かの声がした。
「……たす、け……」
かすれた誰かの声。
それが藤本の声だと、直樹は直感してしまった。 足音が、すぐそこまで来ている。
選べ。
止まるか。
走るか。
「……くそっ!」
直樹は歯を食いしばり、前を向いた。 階段を駆け下り、外に飛び出した。
逃げ切った。 だが、全員ではなかった。
頭の中で、あの声が何度も響いていた。
――助けて。
罪悪感が押し寄せてきた。もしかしたら助けられたのかもしれない。俺は一つの命を見捨てた。
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めんだこ
#追放
#切ない
眠狂四郎