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お風呂から上がると、蓮に聞き忘れていた兄の事を考え、僕はまた、兄の部屋に行ってみることにした。昨日入ったはずなのに、昨日よりも緊張感が増していている。そっとドアノブに手をかけ、ドアを開ける。ドアの向こうには、昨日見たまんまの同じ光景が広がっている。
昨日は、机の上しか見ていなかったため本棚を調べて見ることにした。本棚には、見たまんまに参考類の本が敷き詰められている。僕は一つ一つ本に手をかけて調べていく。その間も僕は緊張感に呑まれていた。調べているとノートが目に付いた。机付近ではなく、わざわざ本棚に紛れ込ませているノート。僕は震える手でノートをとる。表紙には「俺の日記」と書いてあった。僕は兄さんの事を知れるチャンスだと思い、恐る恐るノートを開く。
ノートの中身は「○月✕日No.1 今日は、蒼ちゃんと出かけた。だが、途中で寝てしまい、俺がおぶって帰った。でも、大好きで大切な弟だ…。 」最初の一ページの内容。僕は涙目になりながらも、ノートをパラパラとめくって行った。「○月✕日No.10 今日、父さんと母さんが変な事を言っていた。蒼ちゃんについてだ…。気になるから、聞いてみようと思う。そして今日も蒼ちゃんは可愛かった。」僕は涙目のまま、震える手でノートを次々とめくった。「○月✕日No.15 今日、父さんと母さんにこの前の蒼ちゃんについて何を話していたか聞いてみた。どうやら俺は…蒼ちゃんと血の繋がりがないらしい…。でも関係ない、俺は蒼ちゃんのお兄ちゃんだ…。」僕は新事実に驚いていながらも、兄の言葉で涙目のままだった。「10月10日No.23 今日は蒼ちゃんの誕生日だった。蒼ちゃんの誕生日は覚えやすいはずなのに、父さんや母さんは忘れてたみたいだ、俺は、しおりをあげた。蒼ちゃんは本を読むのが好きだから!」そうだ、今も僕の本に挟まっているしおりはずっと前、六歳の誕生日に兄がくれた物だったんだ…!少しづつ思い出してきた…。「○月✕日No.38 今日、父さんと母さんのやり取りが聞こえた、どうやら父さん達は蒼ちゃんが嫌いらしい…。血が繋がっていない、暗い性格って理由らしい。でも俺は蒼ちゃんが大好きで大切な宝物だと思った。」やっぱり…父さんと母さんは僕が嫌いだったんだ…。そう思いたくても、兄さんの優しさで胸がいっぱいになっていった。「10月9日No.59 今日は俺の誕生日、蒼ちゃんの誕生日の前日だ、去年の蒼ちゃんの時とは違って、母さんや父さんは笑顔でケーキを作り、プレゼントをくれた。蒼ちゃんは俺に折り鶴をくれた。一生懸命作ってくれたんだろう…クチャクチャの折り紙だった。ありがとうって蒼ちゃんに言ったら嬉しそうに笑ってくれて、可愛かった。」僕は涙がポタポタ溢れ出した。ふと、昨日机を調べた時に目についた、クチャクチャの折り鶴を思い出した。あんな物を兄さんは大事に取っといてくれてることに…僕はさらに涙が止まらなくなった。「○月✕日No.64 父さん達が蒼ちゃんを手放すと話しているのを聞いた。嘘だと信じたい。俺はその後、駆け足で蒼ちゃんの元へ行き、一緒に寝ることにした。そうすれば、取られないと思ったから。」度々、兄さんが一人で寝ている僕の元へ来て、一緒に寝てくれていたのは、そうゆう事だったと理解した…。優しいな…。
兄が居なくなったショックで忘れていた記憶が思い出された。うる覚えだった兄が何年生で亡くなったかも…。僕が小3で兄が小6の冬だった。兄さんが亡くなったのは兄さんの誕生日の翌日、つまり僕の誕生日だったとゆうこと。
「10月9日小学校生活最後の誕生日!母さん、父さんはまた、ニコニコでケーキやプレゼントをくれた。俺は母さん達のプレゼントに興味がなかった、蒼ちゃんがくれたプレゼントは手紙だった。やっと使えるようになってきた字を一生懸命使っていた。これは俺の好きな本に挟めて置こうと思う。明日の蒼ちゃんの誕生日は去年から貯めているお小遣いで本を買ってやるんだ!」ここから先はまだ数枚、ノートのページが残っているにも関わらず、真っ白だった。翌日、僕の誕生日プレゼントを買いに行って死んでしまったんだ。これ以上ページがないのも無理はない…。僕のせいで…兄さんは…。流れ続けている涙で服が濡れていく。あの日、兄さんが流した血に比べれば…足元にも及ばない…。