テラーノベル
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僕は震える手でノートを本棚にしまい、拭いても履いても止まらない涙をやっと止めて立ち上がる。僕は罪悪感,申し訳なさ,嬉しさといった感情が心で入り混じる。そんな感情を抑え込み、僕は考えをまとめる。一つ分かったのが、兄さんは自分のことを書いていないこと。日記の内容のほとんどが僕に関する気持ち。僕は考えることをやめ、兄さんの部屋を後にした。明日、蓮に聞こうそう考え…。
自分の部屋に戻った僕は、今日の買い物のことを思い出す。今日一日で数日分の楽しさが詰まっていたと思えるほど。「満足感」がある。僕は机の上に置いて置いた腕時計の箱に目をやった。兄さんの時計にいている…。うる覚えだが、兄さんはじいちゃんにこの時計をもらっていたと思う。
僕はその晩、箱を抱きしめて寝た。
朝になり、朝食を食べ、学校の準備をする。いつもはカバンに教科書やノート、筆箱を入れ、制服を着れば終わる準備も今日は一味違う。「腕時計を付ける」という一手間が増えた。僕は嬉しかった。今日、蓮に貰った腕時計を付けて、朝蓮に合うことができることに。ワクワクやドキドキがあった。
準備を終え外に出るとそこには蓮がいた。「蓮…どうしてここに?」僕はびっくりしながら聞くと「おはよう、蒼!迎えに来た!」蓮が元気よくそう返してくれた。「ありがとう…!行こっ!」僕は嬉しい気持ちが膨れ上がりながら返事をする。蓮は笑顔で頷いてくれた。
学校に向かいながら僕は蓮に聞いてみた。「蓮って兄さんと遊んだことがあるんでしょ?」そう言うと蓮は頷いた。「蓮から見て、兄さんってどんな人だった?」僕は緊張しながら聞いてみた。「えーとね、蒼の自慢ばかりしていたかな?」と蓮が少し笑いながら言ってきた。「僕の自慢?」照れながらも僕は返す。「正確には…。弟のことばかり話してたかな?」蓮が顎に手を抑えながら思い出すように話してくれた。「どんなこと話してた?」僕は恐る恐る聞く。「だいたいが、今日も弟が可愛くてぇって感じだったな〜」蓮が笑いながら言う。「兄さんに大事にされてたから…。」僕が呟くと「そうだろうね、お兄さんは蒼が大切だったんだろうね。」蓮が笑顔でそう言ってくれた。「でも…。心配そうだった時があるよ、」蓮が悲しげに言った。「それって…」僕がいいかけると「蒼も知ってた…か。お兄さんは時々、母さん達が蒼に何かしたら…って顔を青ざめながら僕の兄に話していたよ」蓮が暗い顔で話してくれた。僕は改めて、兄さんに大事にされていることを実感し、それと同時に罪悪感が僕を襲った。「そう暗い顔すんなよ…。蒼のせいなんかじゃないんだからさ…。」申し訳無さそうに僕に蓮が言ってきた。「…。ありがとう…でも僕のせいでもあるんだよ…。」僕が泣きそうになりながら蓮に言うと、「そんな事ないよ…!自分をさげちゃダメだ…。本当に…ごめんよ」蓮が涙目になりながら僕に言った。僕は胸が締め付けられやへうになりながらも「兄さんは正しいことをしたんだよ…。ごめん朝からこんな話、」蓮に言った。「うん…。ほら…!学校見えてきたよ、行こ!」蓮はそう言いながら僕の手を引いてくれた。きっと安心させようとしてくれての行動だ、僕は「うん…!」と蓮に返す。
時がたつのが早いと感じたのは生まれて初めてだ。入学して、蓮と友達になってから数ヶ月がたった。学校の通りの木は紅葉が落ち始め、秋が過ぎようとしている頃のこと。
僕はあれから兄の部屋に入っていない。正確には入る暇がないと言った方がいいだろう…。蓮の誘導のお陰で僕は友達ができた。元から蓮は人気者で、そんな時僕と友達になったことで。蓮の友達が僕が気になっていたらしい。あとから聞いた話だが、僕は元から性格が明るく、人づきあいが良かったのだと言う。記憶こそないが、蓮のお兄さんから聞かされ、僕に伝えてくれた。原因はおそらく母さんや父さんのこと。そう言っていた。ともかく僕は変わることができた。蓮のお陰で。今でも思う。兄さんはいや…。斎兄さんは、正しいことをした。そしてすごく優しかった。これだけは何があろうと変わらないものだと、僕は信じている。僕にとって、今の蓮との日常が宝物だ。
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