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パンチングマシーンニキ
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shima7a
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#前世
shima7a
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第111話 「最後の夏」2027年8月。
夏の甲子園。
準決勝。
柳城高校は、ついにこの舞台までたどり着いた。
福間監督にとって。
最後の甲子園。
対戦相手は、東海代表・愛知星城高校。
春のセンバツでもベスト4に入った強豪だった。
試合前。
ロッカールーム。
福間監督は、いつもより少し長く選手たちを見つめていた。
「ここまで来ました。」
誰も声を出さない。
「でも。」
「特別なことはしません。」
「いつもの柳城高校の野球をしましょう。」
「一球。」
「一つのアウト。」
「そして、仲間を信じる。」
「それだけです。」
主将・中村が答える。
「はい!」
全員の声が響いた。
プレーボール。
一回表。
柳城の先発・山本。
先頭打者を三振。
二番を内野ゴロ。
三番をライトフライ。
完璧な立ち上がり。
柳城も一回裏。
先頭打者が出塁。
しかし後続が抑えられる。
0対0。
三回。
愛知星城が先制。
二死二塁。
ライト前ヒット。
0対1。
柳城は焦らない。
五回裏。
一死一塁。
送りバント。
二死二塁。
打席には四番。
初球。
センター前ヒット。
二塁走者が生還。
1対1。
同点。
アルプススタンドから大歓声が上がる。
福間監督は小さく頷いた。
六回。
七回。
両チーム無得点。
八回裏。
柳城に勝ち越しのチャンス。
一死一・二塁。
しかし。
相手投手が踏ん張る。
三振。
内野ゴロ。
チェンジ。
九回表。
1対1。
一死。
二死。
あと一人。
甲子園のスタンド全体が静まり返る。
最後の打者。
山本が投げる。
打球はセンター前。
ランナー一塁。
続く打者。
バント。
一死二塁。
そして。
三番打者。
ライト前へ。
二塁走者が三塁を回る。
ライトからホームへ送球。
しかし。
わずかに届かない。
勝ち越し。
1対2。
柳城高校。
九回裏。
最後の攻撃。
先頭打者が出塁。
球場が揺れる。
「柳城!柳城!」
応援席から大声援。
送りバント。
一死二塁。
しかし。
次の打者は三振。
二死。
最後の打者。
主将・中村。
ここまでチームを引っ張ってきた主将。
一球目。
ストライク。
二球目。
ファウル。
追い込まれる。
三球目。
打った。
打球は高く上がる。
センターが下がる。
そして。
グラブに収まった。
ゲームセット。
1対2。
柳城高校。
準決勝敗退。
決勝進出ならず。
甲子園優勝の夢は。
あと一歩で届かなかった。
選手たちはグラウンドに立ち尽くす。
中村は涙を流していた。
山本も帽子で顔を覆う。
福間監督は。
選手たちのもとへ歩いていく。
「顔を上げてください。」
誰も顔を上げられない。
「よく戦いました。」
福間監督の声も震えていた。
「私は。」
少し間を置く。
「皆さんと、この甲子園を戦えて幸せでした。」
その言葉に。
選手たちの涙が止まらなくなる。
整列。
柳城高校の選手たちは。
甲子園の土を踏みしめながら。
相手校へ一礼。
そして。
アルプススタンドへ深く一礼した。
大きな拍手が起こる。
その拍手は。
勝者だけに送られるものではなかった。
最後まで戦い抜いた柳城高校への拍手だった。
試合後。
球場を出る前。
福間監督は一人、グラウンドを振り返った。
啓介が隣に立つ。
「先生。」
福間監督は甲子園を見つめたまま答える。
「はい。」
「終わりましたね。」
「ええ。」
しばらく二人は黙っていた。
やがて福間監督が言う。
「啓介。」
「はい。」
「明日からは。」
「あなたの番です。」
啓介は何も言えなかった。
ただ。
深く頭を下げた。
「ありがとうございました。」
福間監督も静かに頷いた。
長い年月。
柳城高校のグラウンドに立ち続けた男。
その最後の甲子園は。
準決勝敗退という結果で幕を閉じた。
しかし。
福間監督が残したものは。
甲子園の優勝旗だけではなかった。
その想いは。
確かに次の世代へ受け継がれていた。
第114話 終
コメント
1件
第114話読み終えたわ…泣いた。福間監督の「皆さんと、この甲子園を戦えて幸せでした」で完全にやられた。一球一球の描写の解像度が高くて、自分が球場にいる気分になった。最後の啓介へのバトンタッチも熱すぎる。甲子園の優勝旗だけが全てじゃないって、こういうことだよな。天海カオルさん、ありがとう。次の話も楽しみにしてる🔥