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パンチングマシーンニキ
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shima7a
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#前世
shima7a
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第118話 「最後の夏 ②」
試合が終わった。
柳城高校の選手たちは、静かに甲子園を後にした。
誰も口を開かなかった。
バスの中でも。
涙を拭う選手。
窓の外を見つめる選手。
眠っている選手。
それぞれが今日の試合を受け止めていた。
そして。
宿舎へ戻る。
夕食を終えたあと。
福間監督は、三年生全員を食堂へ集めた。
レギュラー。
控え選手。
ベンチ入りできなかった選手。
全員が揃っていた。
福間監督は、ゆっくりと前に立った。
しばらく選手たちの顔を見る。
そして。
静かに話し始めた。
「今日は、本当にお疲れさまでした。」
誰も返事をしない。
福間監督は続ける。
「甲子園で準決勝まで来ました。」
「でも。」
「ここまで来るということは。」
「柳城高校が、他の高校の夢を奪ったということになります。」
選手たちは顔を上げる。
「そして。」
「レギュラーになった君たちは。」
「また誰かの夢を奪ったことになります。」
食堂が静まり返る。
福間監督は、厳しい表情で続けた。
「それを忘れないでくださいね。」
「野球は、全員が試合に出られるわけではありません。」
「ベンチに入れなかった選手。」
「レギュラーになれなかった選手。」
「試合に出ることができなかった選手。」
「それでも。」
「君たちのために、一緒に練習してくれました。」
「声を出してくれました。」
「道具を運んでくれました。」
「練習相手になってくれました。」
「苦しい時に、支えてくれました。」
福間監督は一度、言葉を止めた。
そして。
選手たちを見渡す。
「大事なのは。」
「今日までレギュラーの皆を支えてくれた。」
「近くにいる仲間です。」
三年生たちは、黙って聞いていた。
福間監督の声が少しだけ柔らかくなる。
「来週。」
「レギュラーになれなかった三年生の引退試合があります。」
何人かの三年生が顔を上げた。
「今度は。」
「レギュラーだった君たちが、支える番です。」
「最後まで、一緒に野球をしてください。」
福間監督は微笑んだ。
「そして。」
少し間を置く。
「それが。」
「僕の最後の監督業になります。」
選手たちの目に涙が浮かぶ。
福間監督は続けた。
「試合が終わったら。」
「僕からの最後のノックを受けてください。」
静寂。
誰も言葉を発しない。
やがて。
主将の中村が立ち上がった。
「はい!」
その声をきっかけに。
全員が立ち上がる。
「はい!」
大きな返事が食堂に響いた。
福間監督は。
深く頭を下げた。
「ありがとう。」
その声は。
少し震えていた。
食堂を出たあと。
啓介が廊下で福間監督を待っていた。
「先生。」
「はい。」
「最後のノックですか。」
福間監督は笑う。
「はい。」
「私が最後にできる仕事です。」
啓介は黙って頷いた。
「啓介。」
「はい。」
「君も一緒に見届けてください。」
「はい。」
福間監督は、甲子園のある方向を静かに見つめた。
最後の甲子園。
最後の公式戦。
そして。
最後のノック。
福間監督の監督人生は。
もう一つだけ、大切な仕事を残していた。
第115話 終
コメント
1件
第115話読みました〜!試合後の静かな空気、監督の言葉一つひとつが胸に刺さりました😭 特に「レギュラーが誰かの夢を奪った」って視点、すごく考えさせられる…。最後のノックのシーン、絶対泣くやつです。啓介と監督のやり取りも尊すぎる!次が待ち遠しいです🌸