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雫 -SIZUKU- ~星霜夢幻ーー“Emperor the Requiem”~

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雫 -SIZUKU- ~星霜夢幻ーー“Emperor the Requiem”~

104 - 第104話 急 決別の刻③ 驚愕の事実

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2025年07月22日

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「まさか、いきなり出向いて来るとは……ね」



ユキはノクティスと名乗り出たその人物に、これまでに無い最大級の警戒心が、自身を突き刺す様に警告している事を自覚する。



その圧倒的な存在感。心臓を鷲掴みされた様な、絡み付く感覚のそれは、紛れもない恐怖そのものである事。



暑くない処か、その暗闇の中はひんやりと冷えている筈なのに、ユキの額からは脂汗が滲み出ている。それは冷や汗。何故なら彼は相手に対して、初めて恐怖という感情を痛感していたのだから。



「ちっ……」



“――レベルが違う……。しかも……どちらだ?”



ユキはノクティスのその姿に、判別を下せないでいた。



男性と言われれば男性。女性と言われれば女性と、どちらにしても何も違和感が無いその姿に、彼は戸惑いを隠せないでいる。



それ程までにその姿は、この世の者とは思えない中性的な存在感を醸し出していた。



「フフフ。気になるのかい?」



ノクティスがまるでユキの心を見透かした様に呟いた刹那、臨戦体勢を解かず柄に添えたままのその手を掴んでいた。



「えっ!?」



“――何時の間にっ!?”



ユキは一瞬たりとも目を離していない筈のその姿が、何時の間にか間合いに侵入されたのみならず、その手を掴まれていた事実に驚愕の声を上げた。



“やばいっ!”



更には両手を掴まれて刀も抜けない上、退く事さえままならない。



ユキの意思とは関係無く、引き寄せられる掴まれたその両の手。



「なっ!?」



吸い込まれる様にノクティスの下に引き寄せられたその手に伝わった感触に、ユキは思わず声を上げた。



「まさか……」



“――今のは?”



服越しでも確かに感じられた“それ”は、紛れもなく女性の持つ膨らみ、そのものであった。



「くっ!」



胸部に押し付けられる両手。ノクティスの掴む力が緩んでいた事に気付き、ユキは反射的に飛び退く様に身を退いていた。



“まさか女性だったとは……”



「中々良い反応をするね。ますます気に入ったよ」



その思考に割り込むかの様に、意にも介さないノクティスの表情には、ある種の恍惚と余裕が感じられる。



ユキは読めないその言動に、戸惑い立ち竦むしか無い。



「だが、まさか女性だったとはーーと、その考えは少し違う。私はアンドロギュノスーー所謂両性具有体と呼ばれる存在だ」



完全にユキの思考を受け答えるかの様に、ノクティスは次々と疑問を氷解していく。



“アンドロギュノス? 両性具有体?”



「つまり私は女性で在って男性でも在る。私は二つの性別を同時に保有する存在なのだよ」



聞き覚えの無いその呼称に、ユキの思考が疑問となって口に乗る頃には、既にノクティスはその疑問に答えていた。



それはまるで“口を開く必要は無い”ーーとでも言わんばかりに。



「勿論、君と同じモノも付いているよ」



ユキの下半身を指差し、そう悪戯っぽく呟くノクティス。



「なっ……」



“からかっているのか?”



そうとしか思えないその言動に、そして未だ読めぬノクティスの真意に、ユキは戸惑いを隠せない。



「そんなくだらない話をする為、わざわざ来たのですか?」



心を読むかの様に先回りするノクティスに対し、ようやくユキは口を開く事が出来た。



「まず君には私の事を、よく知って貰おうと思ってね。気に障ったかい?」



“クスクス”と、からかう様にそう笑うノクティス。だがそれらからは不思議と、嫌味も悪意も感じられない。



「ぐっ!」



だがユキはその態度が癇に障っていた。それは勝手に胸を触らさせられていた恥辱。そしてそれを為す術無く赦す事になってしまった、自分自身への屈辱の為。



「それより……私を殺しに来たのでしょう?」



“冷静さを欠いたら見えるものも見えない”



ユキは自身の感情を押し殺し、あくまで冷静にその真意を問い出す。



だが冷静さを装っても、内面まではそうはいかない。事実彼の身体からは、小刻みな震えが止まる事は無かった。



そのノクティスから溢れて出る異質な雰囲気のみで、仮に闘っても到底及ばないであろう事が、理性では無く本能が理解していたのだから。



「殺す? そんな勿体無い事をする為に、わざわざこの場を設けた訳では無い私の心情を察して欲しい」



“勿体無い?”



嘘か真かノクティスのその真意に、ユキはますます混乱の模様を隠せない。



「それに……闘っても無意味な事は、君自身がよく分かっている筈だよ。だがそれを恥じる事は無い。己を知り、相手が分かる事もまた強さなのだから」



全てを見越したその言葉の意味に、ユキは言い返せない。言い返せる訳が無い。



何故なら全て、正論なまでに図星だったのだから。



「じゃあ……何故?」



やっとの思いでそれだけの事を口に出来たユキに対し、ノクティスは含みを持たせた穏やかな笑みを見せる。



「物分かりが良いね。本当に良い子だ……」



一息の間を置き、ノクティスは驚愕の真意を口にする。



「単刀直入に言おう。君は私のものにならないか?」



ノクティスの発した唐突な言葉の意味に、理解するまで暫しの刻が止まる。



“私のものになれ?”



ノクティスの下に来いと言うのならまだしも、ものになれとは心外であり、彼には到底理解出来るものではなかった。



「ああ済まない。言い方が悪かったね。簡単に言えば、君は狂座に来ないかという意味だよ」



鳩が豆鉄砲を喰らったかの様な茫然とした表情のままのユキへ、そう簡潔に主旨を述べたノクティスは、更に追い討ちを掛ける様に追記する。



「私は君を個人的に気に入っている。常に君を私の旁に置きたい想いが、勿論有っての事」



どうやら、これが本音なのだろう。



「なっーー何を馬鹿な事を!」



突然の申し入れに、ユキは拒否の声で荒げていた。



狂座入りする事自体が、まず有り得ない事は勿論、人を物扱いするその考えが理解出来なかったのだ。



「まあそう言うと思って、この場を設けたのだけどね。私の話を最後まで聞いた時、きっと君なら理解出来るだろう」



そう言いながらノクティスは腕を組み、金色の艶やかな髪の合間から、横目でユキを妖しく見据える。



「さて、まず何から話そうかな……」



それは有無を言わせぬ無言の強制。



「…………」



だがユキに反論は無い。何よりその真意の程を聞く必然性を、理論的に感じ取っていたのだろう。



「そうーー」



決めあぐねていた感のあるノクティスが、思い出したかの様にゆっくりとその口を開いていく。



「まずは私、基この狂座という組織の事について……ね」



ノクティスはおもむろに、そして意味深に話し始める。



「まず君は、狂座の事をどの位知っている? いや、何だと思っているのかな?」



それは唐突な質問。問い掛けに近いもの。



「……はっ?」



突然の事に困惑した感のあるユキだが、すぐに冷静に思考する。



“狂座とは何か?”



そもそも目的すらも不明。ただ一つだけ確かな事は、明らかにこの世の驚異となる敵であるという事。



“――三年前、突然異界から現れ、日本全土を恐怖に陥れた組織……狂座。四死刀と闘いで事実上の敗北を喫し、今に至る……えっ!?”



ユキは伝えられた逸話に、ある疑問が生じている事に気付いた。



“そもそも異界とは何なのか?”



アザミとの闘いに於いて、狂座の者はこの世の存在で無い事は明言の通り。



“この世の存在で無いのなら、では何処から来たのか?”



ユキは狂座の事をこれまで、ただ敵としてしか認識していなかった。それ以外考えた事も無かった。



そこに生じた、その存在意味としての疑問。



「君達の見解では、その位の認識でしか理解出来ないだろうね」



疑問に立ち竦むユキを他所に、ノクティスはその思考の裏を読み取り続けた。



「君には狂座の存在意味を知る前に、私の存在理由とその真実を知る必要が有る。どうか驚かないで欲しい」



ノクティスは一拍子置いて、その真実を口にする。



「俄には信じ難いとは思うが、私はーー私達は今から四百年以上、先の未来からやって来たのだよ」



突然に突き付けられたその真実。



「……えっ!?」



その意味に戸惑うかの様に、ユキの瞳は驚愕を以て見開かれていた。


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