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前回の続きー廉からの電話を終え戻ってきたところからー
〇〇「ねぇ、映画の話ちゃんと聞いてないでしょ?」
北斗「聞いてる」
〇〇「じゃあ私が言った最後の一言は?」
北斗は少し考えて、
北斗「“緊張したけど楽しかった”」
〇〇「……覚えてるじゃん」
ちょっと嬉しそうに笑う。
それを見て、慎太郎が小声で。
慎太郎「もう無理だろこれ」
樹「完全に好きじゃん」
風磨はグラスを持ちながら黙っている。
〇〇はまだ気づかない。
〇〇「北斗ってさ、なんだかんだちゃんと見てるよね」
無邪気。
北斗は少しだけ視線を落とす。
北斗「見てない」
〇〇「見てるって」
笑う。
その笑顔に、さっきの“嫌だ”も、廉の電話も、全部一瞬遠くなる。
慎太郎が話題を変える。
慎太郎「次の撮影いつだっけ?」
〇〇「来週。北斗と一緒」
樹「お、また不仲営業?」
〇〇「営業じゃないし」
北斗「そうだね」
目が合う。
一瞬だけ。
でも今回は、逸らさない。
〇〇は何も疑わない。
ただ、仲間として安心して笑っている。
その空気の中で。
北斗だけが分かっている。
“普通”に戻っただけで、
何も解決していないことを。
でも今は。
笑っていられるなら、それでいいと思ってしまう自分もいる。
店を出る時間。
風磨「じゃ、俺タクシー拾うわ」
樹「俺もそっち」
慎太郎「北斗どうする?」
北斗「電車」
〇〇「あ、私も」
即答。
一瞬、全員の視線が集まる。
〇〇は気づいていない。
〇〇「方向一緒だし」
それだけ。
自然すぎる理由。
風磨がにやっとする。
風磨「じゃあ俺ら先行くわ」
慎太郎が小声で北斗に。
慎太郎「無意識2回目な」
樹「ちゃんと数えとけよ」
北斗は何も返さない。
外に出ると夜風が少し冷たい。
〇〇「今日楽しかったね」
北斗「うん」
並んで歩く。
距離は近いのに、触れない絶妙な間。
〇〇「なんかさ」
北斗「なに」
〇〇「北斗、今日ちょっと変だった」
核心。
北斗は視線を前に向けたまま。
北斗「普通」
〇〇「普通じゃない」
少し前に回り込んで、顔を覗く。
〇〇「“嫌だ”って言ったじゃん」
胸が鳴る。
北斗「……言ったね」
〇〇「なんかさ」
〇〇は少し考えてから笑う。
〇〇「北斗に言われるとさ、ちゃんと考えなきゃって思う」
無意識。
北斗を見る目は、信頼。
恋だなんて思ってない目。
〇〇「だからさ」
少しだけ近づく。
〇〇「オフの日のこと、ちゃんと考える」
北斗の呼吸が止まる。
〇〇「なんか、北斗が嫌なら嫌なのかもって思っちゃった」
それはもう。
選んでる。
自覚なしで。
その時――
ブブッ。
スマホが震える。
〇〇が画面を見る。
“廉:さっきはありがと。楽しみにしてるで 😊”
〇〇「あ」
北斗は見ない。
でも分かる。
〇〇は少しだけ迷う。
数秒。
そして。
画面を消す。
返信しない。
〇〇「……寒いね」
話題を変える。
北斗の方を見る。
一緒に歩く速度を、少しだけ合わせる。
また無意識。
廉より先に、今隣にいる人を選ぶ。
北斗はそれに気づいている。
でもまだ言えない。
怖いから。
でも。
さっきより少しだけ、希望がある。
ー駅前ー
人通りはそこそこあるけど、二人の間だけ静か。
〇〇「寒いね」
北斗「寒いね」
少し間。
さっきの言葉がまだ残っている。
“北斗が嫌なら嫌なのかもって思っちゃった”
北斗は立ち止まる。
〇〇も止まる。
〇〇「どうしたの?」
北斗は少しだけ迷う。
でも、逃げない。
北斗「俺のせいで決めるなよ」
〇〇「え?」
北斗「俺が嫌だから、とかで決めなくていい」
声は低い。でもはっきりしてる。
〇〇はきょとんとする。
〇〇「でも北斗、嫌なんでしょ?」
北斗は少し息を吸う。
ここで全部言えば楽だ。
“好きだから嫌だ”って。
でもそれは言わない。
まだ。
北斗「……嫌っていうか」
言葉を探す。
〇〇はじっと待つ。
北斗「〇〇がどうしたいかで決めろよ」
〇〇「……」
北斗「俺は」
喉が鳴る。
北斗「俺は、〇〇が適当に扱われるの嫌なだけ」
本音の一部。
全部じゃない。
〇〇は少し眉を寄せる。
〇〇「廉は適当に扱わないと思うけど」
北斗の目がわずかに揺れる。
北斗「分かってる」
静かに続ける。
北斗「でも、簡単に“家行く”とか言うなよ」
〇〇「なんで」
北斗は一瞬だけ〇〇を見る。
逃げない目で。
北斗「……俺が落ち着かない」
止まる。
空気。
〇〇の心臓が、少しだけ強く鳴る。
〇〇「え?」
北斗は視線を逸らす。
北斗「以上」
歩き出そうとする。
〇〇が腕を軽く掴む。
〇〇「待って」
その接触で、北斗が止まる。
〇〇「落ち着かないってなに」
北斗「そのまま」
〇〇「なんで?」
本気で分からない顔。
北斗は少しだけ笑う。
北斗「鈍いな」
〇〇「え?」
北斗「いいよ。今はそれで」
告白じゃない。
でも。
“仲間”の枠を少し越えた言葉。
〇〇は胸の奥がざわっとする。
理由は分からない。
でも。
さっきまでより、北斗の隣が意識される。
〇〇「……北斗さ」
北斗「なに」
〇〇「今日、ちょっとかっこいい」
無意識。
言ったあとで自分がびっくりしてる。
北斗は固まる。
北斗「は?」
〇〇「なんか、ちゃんと怒ってくれるの珍しい」
北斗は目を逸らす。
耳が赤い。
北斗「怒ってない」
〇〇「でも落ち着かないんでしょ?」
少しだけ意地悪く笑う。
北斗「……そうだよ」
はっきり。
その一言で、空気が変わる。
告白じゃない。
でも。
ただの“仲間”でもない。
〇〇は気づいてない。
でも確実に、心が揺れ始めている。
ーーー
電車が止まる。
「〇〇駅〜」
ドアが開く。
〇〇「着いた」
北斗「うん」
人の流れに乗ってホームに降りる。
さっきの“落ち着かない”がまだ残ってる。
階段を上がりながら、〇〇が口を開く。
〇〇「ねぇ」
北斗「なに」
〇〇「ほんとに落ち着かないの?」
北斗は少しだけ笑う。
北斗「しつこい」
〇〇「気になる」
改札を抜ける。
夜風が少し冷たい。
駅前の明かりの下で立ち止まる。
〇〇は真正面に立つ。
〇〇「なんで?」
北斗は一瞬だけ目を逸らして、また戻す。
北斗「……廉の家、行くんだろ」
〇〇「うん」
北斗「それ聞いて、平気な顔できるほど余裕ない」
はっきり。
〇〇の心臓が少し跳ねる。
〇〇「余裕ないって」
北斗「そのまま」
短い。
でも嘘じゃない。
〇〇は少し黙る。
〇〇「北斗ってさ」
北斗「なに」
〇〇「私のこと、どう思ってるの?」
核心。
北斗の喉が鳴る。
でも告白はしない。
まだ。
北斗「大事」
即答。
〇〇の目が揺れる。
北斗「だから落ち着かない」
シンプル。
余計な言葉は足さない。
〇〇「……仲間として?」
無邪気な確認。
北斗は数秒黙る。
それが答えみたいに重い。
北斗「〇〇はさ」
少しだけ近づく。
北斗「仲間に、あんなふうに落ち着かなくなると思う?」
問い返し。
答えは言わない。
でも伝わる温度。
〇〇の胸がざわっとする。
言葉にできない何か。
北斗は一歩引く。
北斗「もう遅いし、帰れ」
優しい声。
〇〇「……うん」
でも動かない。
〇〇「北斗」
北斗「なに」
〇〇「オフの日、ちゃんと考える」
真面目な顔。
北斗は少しだけ頷く。
北斗「俺のためじゃなくて、自分でな」
〇〇「うん」
少し沈黙。
〇〇「送ってくれてありがと」
北斗「電車一緒だっただけ」
〇〇「それでも」
小さく笑う。
そして。
〇〇は一歩歩いて、また振り返る。
〇〇「北斗」
北斗「なに」
〇〇「ほんとに、今日ちょっとかっこよかった」
無意識2回目。
北斗は言葉を失う。
〇〇は照れたみたいに笑って、
〇〇「おやすみ」
走っていく。
北斗はその背中を見つめる。
(仲間、か)
でももう。
その枠に収まらない。
夜風が少し冷たい。
でも胸は、妙に熱い。
ーーーーーーー
北斗side
北斗はしばらくその場から動かなかった。
〇〇の「おやすみ」がまだ耳に残ってる。
ポケットに手を入れて、ゆっくり歩き出す。
(何やってんだよ)
さっきの自分を思い出す。
「落ち着かない」
「大事」
ほとんど言ってるようなもんだろ、って自分で思う。
でも。
“好き”とは言ってない。
言えなかった。
家に着く。
電気をつけないままソファに座る。
静か。
急に現実味が出てくる。
廉の家。
オフの日。
二人きり。
想像したくないのに、勝手に浮かぶ。
(余裕ないって言ったくせに)
中途半端。
止めたいなら止めればよかった。
好きなら好きって言えばよかった。
でも。
“仲間”って言われた時の顔が浮かぶ。
あの無邪気な目。
壊したくない。
でも。
取られるのはもっと嫌だ。
北斗は天井を見る。
今日の〇〇を思い出す。
隣に座ったこと。
腕を掴まれたこと。
「かっこよかった」って笑った顔。
(あれ、無意識なんだよな)
そこが一番きつい。
本人は知らない。
自分が選んでることも。
自分が揺らしてることも。
スマホを取り出す。
〇〇のトーク画面を開く。
何も打たない。
打てない。
「家行くな」とも言えない。
「好き」とも言えない。
代わりに、メンバーの言葉が浮かぶ。
“言うか、失うか”
北斗は小さく笑う。
北斗「簡単に言うなよ…」
独り言。
でも今日、確実に変わった。
〇〇は少し揺れた。
あれは気のせいじゃない。
“仲間”って言いながら、ちゃんと気にしてた。
(時間ない)
廉は本気。
あいつは言ってる。
自分はまだ、隠してる。
北斗は立ち上がる。
冷蔵庫から水を取り出す。
一気に飲む。
決めないといけない。
守るだけじゃ足りない。
欲しいなら、言わないと。
でも。
明日じゃない。
今日でもない。
オフの日までに。
そこがリミット。
北斗はスマホをもう一度見る。
〇〇からメッセージは来ていない。
それが少し寂しい。
でも同時に、ほっとする。
(考えてるんだろ)
自分の言葉。
少しは届いてると信じたい。
北斗はベッドに倒れ込む。
目を閉じる。
浮かぶのは、笑った顔。
「ほんとに、今日ちょっとかっこよかった」
その一言で。
まだ戦えると思ってしまう自分がいる。
ーーーーーーー
都内スタジオ。
白いセットに大きな窓。自然光が差し込んでいる。
今日の特集は
ViVi
国宝級イケメン:北斗
国宝級美女:〇〇
“最強ビジュアル対談”
スタッフもいつもより多い。
メイクルーム。
〇〇は鏡の前に座っている。
ヘアメイク「今日ほんと仕上がり完璧です」
〇〇「盛りすぎですって」
笑うけど、どこか落ち着かない。
昨日のことがまだ残ってる。
ドアがノックされる。
スタッフ「北斗さん入りまーす」
鏡越しに目が合う。
北斗「おはよう」
〇〇「おはよ」
距離はあるのに、空気が少し熱い。
ヘアメイク「並ぶと強いなぁ…国宝同士」
〇〇「やめてください」
北斗「ほんとそれ」
でも、どこか照れた空気。
撮影スタート。
最初は立ちカット。
カメラマン「肩少し寄せてください」
〇〇が自然に寄る。
北斗も寄る。
肩が触れる。
布越しの体温が伝わる。
〇〇の呼吸が少し浅くなる。
北斗は平然とした顔をしているけど、指先が少し固い。
カメラマン「いい!目線こっち!」
シャッター音が鳴り続ける。
カメラマン「じゃあ次、二人で見つめ合ってみましょう」
〇〇「え」
北斗「仕事」
向き合う。
距離、30センチもない。
目が合う。
昨日の駅前がフラッシュバックする。
“俺が落ち着かない”
その目で、今も見てる。
カメラマン「動かないで!」
〇〇は笑おうとするけど、少しぎこちない。
北斗は微動だにしない。
その真っ直ぐさに、〇〇の胸がざわつく。
次はソファカット。
二人で一つのソファに座る。
思ったより近い。
太ももが軽く触れる。
〇〇が少しだけ体勢を変える。
北斗は動かない。
カメラマン「自然に会話してみて」
〇〇「国宝ってさ、実感ある?」
北斗「ない」
〇〇「私もない」
北斗「〇〇はあるだろ」
〇〇「ないってば」
北斗「ある」
即答。
〇〇が見る。
北斗は真面目な顔。
カメラマン「いいよいいよ!」
シャッター音。
〇〇「なんで言い切るの」
北斗「事実だから」
その言い方が昨日と似ている。
強い。
〇〇の胸がまた揺れる。
インタビュー。
記者「お互いを“国宝”だと思う瞬間は?」
〇〇は少し考える。
〇〇「ちゃんと見てくれてるとき」
記者「具体的に?」
〇〇「私が元気なふりしてるとき、多分一番最初に気づくの北斗」
空気が少し変わる。
北斗は静かに聞いている。
記者「北斗さんは?」
北斗、少し間。
北斗「無意識なところ」
〇〇「それさっきも言った」
北斗「ほんとだから」
記者「無意識とは?」
北斗「自分がどれだけ人の気持ち動かしてるか分かってない」
一瞬。
〇〇の呼吸が止まる。
昨日の自分。
“北斗が嫌なら嫌なのかも”
あれも、無意識。
記者「最近ドキッとした瞬間は?」
〇〇、迷う。
でも逃げない。
〇〇「ちゃんと怒られたとき」
北斗の目が揺れる。
記者「怒られた?」
〇〇「適当に決めるなって」
スタジオが少し静かになる。
記者「北斗さん?」
北斗はマイクを持ち直す。
北斗「かっこいいって言われたとき」
〇〇「……」
記者「誰に?」
北斗「最近」
視線だけ、〇〇に向ける。
それだけで伝わる。
〇〇の頬が少し赤くなる。
最後のカット。
寝転び構図。
ソファに横になり、顔が近い。
カメラマン「もう少し寄れます?」
ほぼ頬が触れそう。
〇〇の心臓がうるさい。
北斗の呼吸が近い。
カメラマン「最高。動かないで」
数秒。
長い。
〇〇の目が揺れる。
北斗は逸らさない。
真っ直ぐ。
まるで昨日の続き。
カット。
終了。
スタッフ拍手。
空気が戻る。
でも二人の間だけ戻らない。
片付け中。
北斗が小さく言う。
北斗「困る?」
〇〇、少し黙る。
〇〇「……困る」
正直。
北斗は少しだけ笑う。
北斗「だよね」
でもそれ以上は踏み込まない。
仕事だから。
まだ。
でも。
“国宝コンビ”って言葉よりも。
今日の距離の方が、ずっと意味を持っている。
スタジオ、撤収ムード。
スタッフ「お疲れ様でした!」
拍手が起きる。
〇〇は軽く会釈して控室へ戻る。
鏡の前に座って、さっきの自分を思い出す。
あの距離。
あの目。
ノック。
北斗「入る」
〇〇「どうぞ」
二人きり。
少し静か。
北斗「今日、攻めすぎた?」
不意打ち。
〇〇「なにが」
北斗「距離」
〇〇は少し笑う。
〇〇「仕事でしょ」
北斗「うん」
でも動かない。
北斗「困ってた」
〇〇「顔に出てた?」
北斗「出てた」
〇〇「やだ」
北斗、少し近づく。
北斗「嫌だった?」
〇〇は一瞬だけ考える。
嫌じゃなかった。
困ったけど。
〇〇「……分かんない」
正直。
北斗はそれを聞いて、ほんの少しだけ目を細める。
北斗「そっか」
それ以上、踏み込まない。
スタッフ「移動車出ます!」
空気が切れる。
でも、何かは切れてない。
ーーーー
帰りの車で二人きり。
同じ方面。
マネージャーは前。
後部座席、並ぶ二人。
夜景が流れる。
沈黙。
〇〇「反響すごそう」
北斗「たぶん」
〇〇「距離、やばいって言われるね」
北斗「言われるだろうな」
〇〇「北斗さ」
北斗「うん」
〇〇「なんであんな目するの」
核心。
北斗は少しだけ笑う。
北斗「どんな目」
〇〇「逸らさないやつ」
北斗は窓の外を見る。
北斗「逸らしたら終わる気がする」
〇〇「なにが」
北斗「いろいろ」
曖昧。
でも重い。
信号で止まる。
赤。
車内が少し暗くなる。
北斗が小さく言う。
北斗「〇〇は」
〇〇「うん」
北斗「俺といると、どう?」
〇〇の心臓が跳ねる。
〇〇「どうって」
北斗「落ち着く?落ち着かない?」
直球。
〇〇は正直に言う。
〇〇「……落ち着かない」
北斗は一瞬だけ息を止める。
北斗「俺も」
小さい声。
信号が青になる。
車が動き出す。
でもその一言で、空気はもう戻らない。
ーーーーーーーーーーー
数日後。
ViVi発売。
表紙解禁と同時にSNSが騒ぐ。
「国宝×国宝は強すぎ」
「距離近すぎない?」
「北斗の目やばい」
「〇〇赤くない?」
「これガチ?」
トレンド入り。
“国宝カップル”
〇〇は楽屋でスマホを見る。
コメント欄。
“北斗、完全に好きじゃん”
スクロールする指が止まる。
心臓がうるさい。
隣の楽屋。
北斗も見ている。
樹からLINE。
『隠す気なくて草』
風磨『もう言えよ』
慎太郎『顔出すぎ』
北斗は返信しない。
代わりに、ViViの見開きページをもう一度見る。
見つめ合うカット。
あの瞬間を思い出す。
(逸らさなくてよかった)
小さく息を吐く。
ーーーーーーーーー
廉side
夜。
部屋のテーブルに置かれたViVi。
ページを開く。
見開き。
北斗と〇〇。
距離が近い。
目が、逸れていない。
廉はじっと見る。
何も言わない。
指でページの端をなぞる。
インタビューを読む。
“ちゃんと見てくれてる”
“安心する”
廉の喉がわずかに動く。
でも、笑う。
廉「そっか」
それだけ。
スマホを手に取る。
〇〇とのトーク画面。
打つ。
『ViVi見たで』
既読、早い。
〇〇『どうだった?』
廉は一瞬だけ止まる。
本当は言える。
“北斗、好きやろお前のこと”
でも打たない。
廉『綺麗やった』
シンプル。
〇〇『ほんと?』
廉『うん』
少し間。
廉『楽しそうやったな』
〇〇『仕事だよ』
廉『せやな』
それ以上、踏み込まない。
聞けば揺らぐかもしれない。
でも。
廉は聞かない。
スマホを置く。
天井を見る。
分かってる。
北斗の目。
あれは仕事だけじゃない。
でも。
廉「俺が勝てばええだけやろ」
小さく呟く。
他人の気持ちは言わない。
〇〇に余計な種は蒔かない。
自分の魅力で選ばせる。
それが廉のやり方。
ーーーーーー
北斗side
自室。
同じページを見ている。
コメント欄。
“北斗ガチじゃん”
スクロール止める。
スマホ伏せる。
北斗「……」
言ってない。
好きなんて。
でも隠してもいない。
〇〇が気づくなら、それでいい。
言葉で追い詰めたくない。
でも。
取られる気もない。
ーーーーーーー
〇〇side
ベッドの上。
廉とのやり取りを見返す。
“綺麗やった”
それだけ。
北斗は何も送ってこない。
なのに。
あの撮影の目が頭から離れない。
〇〇「なんで言わないの」
誰に向けた言葉か分からない。
廉は何も言わない。
北斗も言わない。
なのに。
二人とも、何かをぶつけてくる。
静かな戦い。
言葉にしない男たち。
一番苦しいのは、
気づき始めている〇〇。
ーーーーーーーー🌉
夜 23:52
〇〇の部屋。
スマホを握りしめる。
📞
〇〇『ねえ』
北斗『うん』
〇〇『変な話していい?』
北斗、嫌な予感。
北斗『どうぞ』
〇〇『もしさ』
〇〇『もし北斗が、私のこと好きだったらさ』
時間が止まる。
心臓がうるさい。
でも。
〇〇は続ける。
〇〇『私どうすると思う?』
本気で分かってない顔。
北斗は画面を見つめたまま固まる。
今、言えばいい。
「仮じゃない」
それで終わる。
でも。
北斗『なんでそんな仮定』
〇〇『なんとなく』
〇〇『ViViのコメントで書かれてて』
北斗の喉が詰まる。
〇〇『ないないって思ったけど』
〇〇『ちょっと考えちゃって』
無邪気。
悪気ゼロ。
北斗は天井を見る。
北斗『〇〇はどうしたいの』
〇〇『分かんない』
〇〇『でも』
〇〇『北斗が私のこと好きとか絶対ないじゃん』
胸がズキッと鳴る。
北斗『なんで』
〇〇『だって北斗、冷静だし』
〇〇『私のこと困らせることしないし』
〇〇『優しいじゃん』
優しい、が刺さる。
北斗は少し笑う。
北斗『仮に』
〇〇『うん』
北斗『好きだったとしても』
〇〇『うん』
北斗『言わないかもな』
〇〇『なんで?』
北斗『困らせたくないから』
既読。
少し長い沈黙。
〇〇『やっぱりないね』
笑ってる。
〇〇『北斗、そういうのちゃんとしてるもん』
北斗は目を閉じる。
ちゃんとしてる、ね。
〇〇『安心した』
北斗『何が』
〇〇『もし本当に好きだったら気まずいじゃん』
北斗、指が止まる。
〇〇『今の関係なくなるのやだ』
その一文で、何も言えなくなる。
北斗『なくならないよ』
〇〇『だよね』
〇〇『だからさ』
少し間。
〇〇『明日、廉の家行く』
心臓がまた落ちる。
でも声は平ら。
北斗『うん』
〇〇『ちゃんと向き合う』
〇〇『私も逃げたくないし』
北斗は数秒返信できない。
〇〇『北斗?』
北斗『応援してる』
嘘。
でも本音でもある。
〇〇『ありがとう』
〇〇『おやすみ』
北斗『おやすみ』
通話終了。
暗い部屋。
北斗、小さく呟く。
北斗「気づけよ」
でも気づいてほしくない自分もいる。
このままなら、壊れない。
でも。
選ばれない。
一方〇〇。
スマホを置く。
〇〇「やっぱないよね」
本気で思ってる。
だから。
明日、廉の家に行く。
迷いながら。
ーーーーーーー☀️🕒
翌日 15:12
玄関。
鏡の前で立ち止まる〇〇。
深呼吸。
「ちゃんと向き合うだけ」
自分に言い聞かせる。
スマホが震える。
北斗。
一瞬、心臓が跳ねる。
〇〇『なに?』
既読、すぐ。
北斗『今から?』
〇〇『うん』
〇〇『もう出る』
数秒、既読のまま。
〇〇は普通に思ってる。
“昨日の続きかな?”
まさか止めに来るなんて、1ミリも思ってない。
北斗『昨日の話』
〇〇『うん』
北斗『仮の話な』
〇〇『うん笑』
〇〇『北斗が私のこと好きだったらってやつでしょ』
軽い。
北斗は画面を強く握る。
北斗『あれ』
〇〇『うん』
北斗『ゼロじゃない』
時間が止まる。
〇〇『え?』
北斗、打っては消す。
でも、逃げきれない。
北斗『仮定の話な』
北斗『ゼロではない』
〇〇の眉が少し動く。
でも。
まだ気づいてない。
〇〇『どういう意味?』
北斗『もしそうだったら』
北斗『〇〇、困る?』
昨日と同じ質問。
でも空気が違う。
〇〇は少し考える。
〇〇『うーん』
〇〇『分かんない』
正直。
〇〇『でも』
〇〇『北斗が本気なら、ちゃんと考える』
北斗の心臓が大きく鳴る。
〇〇『適当にしない』
〇〇『それは約束する』
北斗、目を閉じる。
止めたい。
今すぐ。
“行くな”って言えば。
でも。
北斗『そっか』
〇〇『うん』
北斗『行ってこい』
その一言、少しだけ強い。
〇〇『?』
北斗『ちゃんと向き合うんだろ』
〇〇『うん』
北斗『逃げんなよ』
〇〇、少し笑う。
〇〇『なにそれ』
〇〇『北斗今日ちょっと変』
北斗『気のせい』
沈黙。
〇〇が靴を履く。
ドアノブに手をかける。
その瞬間。
北斗『〇〇』
〇〇『うん?』
北斗『帰ってきたら連絡しろ』
〇〇『え』
北斗『待ってる』
心臓が、少しだけ速くなる。
〇〇は不思議そうに微笑む。
〇〇『うん』
〇〇『分かった』
〇〇『いってくる』
北斗『いってらっしゃい』
通話終了。
北斗、ソファに沈む。
北斗「……言えよ」
でも言わなかった。
ゼロじゃない。
それだけ。
選ぶのは、〇〇。
一方、〇〇。
エレベーターの中。
さっきの言葉が少しだけ引っかかる。
“ゼロじゃない”
“待ってる”
でも。
〇〇「仮の話だよね」
そう思って、首を振る。
そして廉の家へ向かう。