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16:02
廉の家の前。
インターホンを押す指が、少しだけ冷たい。
深呼吸。
ガチャ。
ドアが開く。
私服の廉。
ゆるいグレーのスウェット、前髪は自然に下りていて、家モード全開。
テレビで見る廉とは違う。
柔らかくて、無防備。
廉「いらっしゃい」
声も低くて近い。
〇〇の心臓が、ひとつ強く鳴る。
〇〇「…オフすぎない?」
廉「オフやもん」
少し笑う。
その笑い方が、いつもより優しい。
部屋は相変わらず整ってる。
きれい。
匂いも落ち着く。
〇〇は靴を揃えながら言う。
〇〇「ねえ」
廉「ん?」
〇〇「その服でソファ座れるの?」
廉は潔癖症。
外着でソファはNG。
廉、一瞬止まる。
廉「嫌やけど」
〇〇「ほら」
廉、少しだけ照れた顔で続ける。
廉「好きな人ならええ」
空気が、止まる。
〇〇「……は?」
廉「〇〇はええ」
軽く言うけど、目は真面目。
〇〇の胸がじわっと熱くなる。
〇〇「なんでそういうこと普通に言うの」
廉「普通ちゃうで」
少し近づく。
廉「特別や」
視線が逃げない。
〇〇は誤魔化すように笑う。
〇〇「座るよ?」
廉「どうぞ」
〇〇がソファに座る。
廉も隣に座る。
距離が近い。
でも、嫌じゃない。
16:45
スーパー。
帽子とマスクで並んで歩く。
廉が自然にカゴを持つ。
〇〇「何作る?」
廉「作れるもんない」
〇〇「一緒」
笑う。
肩が軽くぶつかる。
廉「なんか普通やな」
〇〇「なにが」
廉「こういうの」
少し照れた声。
〇〇も、変に意識してしまう。
18:10
キッチン。
エプロン姿。
ぎこちない手つき。
廉「それ危ない」
後ろから手を添えられる。
一瞬、背中に体温。
〇〇「ちょ、近い」
廉「包丁やから」
でも声が低い。
胸が少しうるさい。
なんとか完成。
見た目は微妙。
味は…悪くない。
廉「奇跡」
〇〇「失礼」
二人で笑う。
自然で、楽しい。
19:40
ゲームタイム。
ソファに並ぶ。
さっき“好きな人ならええ”って言われたソファ。
〇〇は少しだけ意識してしまう。
廉「負けたらお願い一個」
〇〇「ずる」
結局、〇〇が負ける。
廉がコントローラーを置く。
空気が少しだけ変わる。
廉「お願いええ?」
〇〇「なに」
廉「俺のことどう思ってる?」
直球。
〇〇、反射で言いかける。
〇〇「友達…」
言葉が喉で止まる。
さっきの“特別”。
料理の距離。
スーパーの時間。
全部よぎる。
〇〇、少し照れて視線を逸らす。
〇〇「……友達、じゃなくて」
廉の目がまっすぐになる。
〇〇「気になる人」
小さい声。
でも、はっきり。
沈黙。
廉の喉が動く。
廉「ほんまに?」
〇〇「うん」
顔が熱い。
〇〇「だから今日来た」
正直。
廉の表情が柔らかく崩れる。
廉「それ、めっちゃ嬉しい」
距離が少し縮まる。
〇〇の心臓が速くなる。
そのとき。
19:58
スマホが震える。
画面。
北斗。
〇〇の心臓が別のリズムで跳ねる。
廉はまだ気づいていない。
メッセージ。
北斗『着いた?』
短い。
それだけなのに。
胸がざわつく。
〇〇は少し迷ってから返信。
〇〇『うん』
既読、すぐ。
北斗『そっか』
その二文字が妙に静か。
廉が気づく。
廉「誰?」
〇〇「北斗」
一瞬だけ空気が変わる。
でも廉は笑う。
廉「連絡くるんやな」
責めない。
でも目は真面目。
〇〇「うん…」
心の奥が少し揺れる。
さっき“気になる人”って言ったばかりなのに。
北斗の短い“そっか”が頭から離れない。
廉が静かに言う。
廉「今は俺の時間やろ」
優しいけど、強い。
〇〇は北斗からのメッセージを確認して、短く返して、
スマホをテーブルに伏せた。
画面の光が消える。
部屋が静かになる。
廉は何も言わない。
ただ、〇〇の手元を一瞬だけ見てから視線を上げる。
廉「……帰らんでええの?」
声は穏やか。
でも少しだけ低い。
〇〇「うん」
即答。
〇〇「家、歩いてすぐだし」
本当にそれだけ。
終電も、時間も、理由にならない距離。
〇〇「北斗もただの確認だよ」
何も考えずに付け足す。
〇〇「仲間だし」
その言葉に迷いはない。
廉の肩の力がほんの少し抜ける。
廉「そっか」
短く返す。
〇〇はクッションを抱え直して、少しだけ視線を泳がせる。
静か。
さっきまで笑ってたのに、急に空気が落ち着く。
廉「……ほんまに、もうちょいおるん?」
〇〇「うん」
〇〇は廉を見る。
〇〇「楽しいし」
それは飾ってない本音。
〇〇「帰ろうと思えばすぐ帰れるから」
言いながら、自分で気づく。
“帰れる”のに、“帰らない”を選んでる。
廉がゆっくりソファに体を預ける。
廉「それ、俺勘違いしてまうで」
〇〇「なにを?」
廉「期待」
目が真っ直ぐ。
〇〇の心臓が少しだけ跳ねる。
〇〇「…期待していいんじゃない?」
無意識に出た言葉。
廉が止まる。
〇〇も「あ」って顔をする。
〇〇「ちが、そういう意味じゃなくて」
慌てる。
廉、少し笑う。
廉「わかってる」
でも目は笑ってない。
廉「俺は、〇〇がここおるだけで十分やけど」
静かな声。
重くない。
でもちゃんと大事にしてる温度。
〇〇、視線を落とす。
手が少し落ち着かない。
廉がそっと言う。
廉「もうちょい、近くおいで」
強制じゃない。
お願いみたいな声。
〇〇は一瞬迷って、でも逃げない。
ソファで少しだけ距離を詰める。
肩が触れる。
体温が伝わる。
外は静か。
歩けば10分で自分の家。
でも今はここ。
廉の隣。
廉「……ほんまに帰さへんで?」
小さく囁く。
〇〇「うん」
小さく返す。
その距離のまま、誰もスマホを触らない。
伏せたまま。
今は、ここだけ。
ーーーー
ソファ。
肩が触れてる距離。
テレビの音は小さい。
廉がゆっくり、〇〇の手に触れる。
一瞬だけ指先が触れて、止まる。
強引じゃない。
逃げるなら逃げられるくらいの触れ方。
廉「……嫌やったら離して」
低い声。
〇〇は、離さない。
むしろ、指先を少しだけ絡める。
ぎこちない恋人未満の繋ぎ方。
〇〇の心臓がうるさい。
廉も少しだけ息が深くなる。
廉「これ、あかんやつやな」
〇〇「なにが」
廉「ほんまに帰したくなくなる」
〇〇は少し笑う。
でも顔は赤い。
少しして。
〇〇が、クッションを抱えたまま廉に寄りかかる。
自分でも無意識。
〇〇「……今日さ」
廉「うん」
〇〇「楽しかった」
小さな声。
廉の肩に頭が触れる。
廉は一瞬固まるけど、動かない。
〇〇「なんか普通で」
〇〇「スーパーとか、料理とか」
〇〇「そういうの、落ち着く」
本音。
廉の胸がじわっと熱くなる。
廉「俺も」
短いけど本気。
〇〇はそのまま、少しだけ甘える。
〇〇「ちょっとだけこのままでいい?」
廉の喉が動く。
廉「……ずるい」
でも、腕をそっと回す。
抱きしめるほどじゃない。
支えるくらい。
静かな時間。
ーしばらくして。ー
空気が少し変わる。
甘いだけじゃない。
廉がゆっくり言う。
廉「〇〇」
〇〇「ん?」
廉「俺な」
少し間。
廉「今日、ちゃんと聞くつもりで呼んだ」
〇〇の鼓動が速くなる。
廉「気になる人って言ってくれたやん」
〇〇、少しだけ体を起こす。
廉と目が合う。
廉「俺は、好きやで」
はっきり。
逃げない。
廉「友達でも仲間でもない」
廉「ちゃんと恋愛として」
部屋が静まる。
〇〇の呼吸が浅くなる。
廉「今日、無理に答え出さんでもええ」
廉「でも」
目が真剣。
廉「俺は〇〇を選んでる」
重いけど、優しい。
〇〇の胸がぎゅっとなる。
歩けばすぐ帰れる距離。
でも今、ここにいるのは自分。
北斗は仲間。
廉は“好き”って言ってくれる人。
〇〇は唇を少し噛む。
答えなきゃいけない夜が、静かに近づいてる。
廉から2度目の
廉「……今日、何時に帰るん?」
自然なトーン。
でもどこか確認するような声。
〇〇は一瞬だけ考える。
家は近い。歩いて帰れる距離。
でも。
〇〇「……まだいたい」
ぽつり。
自分でも少し驚くくらい素直な言葉。
廉の視線が止まる。
廉「……泊まる?」
ゆっくり。
押さない。
選択は〇〇にある。
〇〇は心臓が速くなるのを感じながら、小さく頷く。
〇〇「うん」
その瞬間、空気が変わる。
廉は一度目を逸らして、軽く息を吐く。
廉「……ほな、風呂沸かすわ」
立ち上がる背中が少しだけぎこちない。
〇〇はソファに残される。
(泊まるって言った)
料理して。
ゲームして。
笑って。
キスして。
でもまだ映画は見てない。
テーブルの上には、これから見る予定のDVDケース。
(このあと、映画見るんだよね…?)
頭が追いつかない。
お風呂のスイッチ音が遠くで鳴る。
廉が戻ってくる。
廉「沸いたで」
〇〇「うん」
廉「先入る?」
〇〇「え、いいの?」
廉「女の子やし」
さらっと。
〇〇「じゃあ…お言葉に甘えて」
立ち上がる。
その前に。
廉「ちょい待って」
クローゼットへ向かう。
ガサガサと服を探す音。
戻ってきて、Tシャツとスウェットを差し出す。
廉「俺のやけど、小さめのやつ」
〇〇の手に乗る。
ふわっと廉の匂い。
〇〇の鼓動がまた跳ねる。
〇〇「ありがとう」
廉「そのままは寒いやろ」
視線は合わせない。
少し照れてる。
ーーー
〇〇side
バスルーム。
ドアを閉めた瞬間、静けさ。
(泊まってる)
廉の家。
廉の服。
シャワーを浴びながら、今日のことを思い出す。
買い物でふざけたこと。
料理で失敗したこと。
笑った時間。
キス。
顔が熱くなる。
シャワーを終えて、湯船に浸かる。
じんわり温かい。
そのとき、スマホが鳴る。
北斗。
画面の名前。
〇〇は少し迷う。
でも出る。
〇〇「もしもし?」
北斗「……今どこ」
いつも通り、淡々と。
〇〇「廉の家」
隠さない。
北斗「……近いけどな」
〇〇「うん、歩いて帰れる距離」
北斗「帰らないの?」
〇〇「今日、泊まる」
沈黙。
一瞬。
でも北斗は何も言わない。
北斗「……そっか」
声は変わらない。
〇〇「映画これから見る」
北斗「夜更かしすんなよ」
それだけ。
〇〇「うん、また明日ね」
北斗「おやすみ」
通話が切れる。
〇〇は湯船の中で小さく息を吐く。
(北斗は仲間)
それ以上でもそれ以下でもない。
お風呂から上がる。
廉のTシャツを着る。
肩が落ちる。
袖が長い。
ズボンも緩い。
紐をきつく結ぶけど、少しブカブカ。
鏡の中の自分。
完全に“彼氏の服借りてる感”。
心臓がまたうるさい。
リビングへ戻る。
廉が振り向く。
一瞬、固まる。
視線がゆっくり上下に動く。
廉「……それはあかん」
小さく呟く。
〇〇「なにが」
廉「可愛すぎる」
真顔。
〇〇の鼓動が跳ねる。
〇〇「大きいだけだし」
廉、苦笑。
でも目は逸らせない。
廉「……俺入ってくるわ」
少し早足でバスルームへ。
逃げるみたいに。
〇〇はソファに座る。
テーブルの上にはまだ再生されていない映画。
(これから、一緒に見るんだ)
胸がまた高鳴る。
ーーーー
廉side
ドアを閉めた瞬間、深く息を吐く。
廉「……やば」
鏡に映る自分の顔。
完全に赤い。
シャワーを出す。
水音で誤魔化す。
頭の中はさっきの光景。
ブカブカのTシャツ。
落ちそうなスウェット。
濡れた髪。
廉「反則やろ…」
目を閉じる。
〇〇が「泊まる」って頷いた瞬間も思い出す。
自分から聞いたくせに。
あの小さい「うん」。
何回も再生される。
シャワーを浴びながら考える。
(ここで焦ったらあかん)
(押しすぎたら終わる)
でも。
(可愛すぎるやろ)
湯気の中、壁に額をつける。
〇〇が今、リビングで自分の服を着てる。
それだけで鼓動が速い。
(映画見るだけや)
(落ち着け)
でも。
(同じ家で寝るんやぞ)
喉が鳴る。
廉「……理性、仕事しろ」
自分に言い聞かせる。
ーーーーー
〇〇 side
ソファに座る。
廉の匂いがするTシャツ。
袖が長い。
指先が隠れる。
鼓動が落ち着かない。
(泊まるんだ)
深呼吸。
そのとき、スマホが震える。
マネージャーからLINE。
『明日の入り10:30に変更』
〇〇は返信する。
〇〇『了解です!』
指が少し震えてる。
マネ『今日遅くなりすぎないでね』
〇〇は一瞬止まる。
(遅くなるかも)
でも正直に。
〇〇『大丈夫、近いので』
送信。
また鼓動がうるさくなる。
ソファに座り直す。
テーブルの上の映画。
これから一緒に見る。
廉と。
さっきのキスを思い出す。
頬が熱くなる。
(なんであんな自然にできたんだろ)
(私、ちゃんとドキドキしてる)
北斗のことは浮かばない。
仲間。
それ以上でも以下でもない。
今、意識してるのは廉だけ。
バスルームの水音が聞こえる。
その音だけで緊張する。
(落ち着いて)
(普通に映画見るだけ)
でも。
(同じ家で寝るんだよね…?)
クッションをぎゅっと抱く。
鼓動、止まらない。
ーーーーー
廉 side
シャワーを止める。
タオルで髪を拭きながら、考える。
(今出たら、あの格好でソファ座ってるんやろ)
想像してしまう。
廉「……あかん」
でも顔が緩む。
嬉しい。
〇〇が“まだいたい”って言ったこと。
泊まるって頷いたこと。
それが全部、本気。
ドアノブに手をかける。
一回止まる。
(落ち着け)
(変な空気にするな)
深呼吸。
ドアを開ける。
ーーーー
〇〇 side
水音が止まる。
心臓が一段速くなる。
足音。
ドアが開く音。
〇〇は無意識に背筋を伸ばす。
鼓動がうるさい。
(落ち着いて)
(普通に、映画見るだけ)
でも。
今日の夜は、もう“普通”じゃない。
バスルームのドアが開く。
湯気と一緒に廉が出てくる。
髪はまだ濡れていて、前髪から水滴が落ちる。
Tシャツ越しに分かる体のライン。
ラフなのに、妙に色っぽい。
〇〇の心臓が一気に跳ねる。
(やばい)
視線を逸らしたいのに、逸らせない。
廉はタオルで無造作に髪を拭きながら、〇〇を見る。
ブカブカの自分のTシャツを着てる〇〇。
175cmの俺の服を、155cmの〇〇が着てる。
袖は長い。
肩は落ちてる。
ズボンは紐で縛ってるけど、少しゆるい。
廉の喉が動く。
廉「……それ反則やろ」
〇〇「なにが」
声が少し上ずる。
廉「俺の服、似合いすぎ」
真顔。
〇〇の鼓動がうるさい。
廉がドライヤーを手に取る。
廉「髪、まだ濡れてるやん」
〇〇「自分でやるよ」
廉「ええ」
自然に後ろに回る。
〇〇はソファに座り直す。
ドライヤーの温風が鳴る。
大きな手が、そっと髪をすくう。
びくっと肩が揺れる。
廉「熱ない?」
〇〇「う、うん…」
廉の手は大きい。
指も長い。
その手が自分の髪を包む感覚。
温風より、鼓動のほうが熱い。
廉は丁寧に根元から乾かす。
指が耳の横をかすめる。
首筋に風が当たる。
廉の体温が背中越しに伝わる。
廉「じっとして」
耳元に低い声。
近い。
近すぎる。
〇〇はスウェットの裾をぎゅっと握る。
廉の指が前髪に触れる。
整えるみたいに撫でる。
ドライヤーの音が止まる。
静寂。
廉の手が、まだ髪に触れている。
数秒。
廉「……乾いた」
〇〇がゆっくり振り向く。
距離が近い。
濡れたままの廉の髪から、まだ少し水気。
色気がすごい。
〇〇の心臓が本当にうるさい。
廉の目がやわらかく細くなる。
でもキスはしない。
代わりに、頬に軽く触れるだけ。
廉「映画、見るか」
理性、ぎりぎり。
ーーーー
照明を少し落とす。
選んだのは、静かな恋愛ヒューマンドラマ。
大人っぽいけど、派手じゃない。
ソファに並ぶ。
今度は自然に肩が触れる。
映画が始まる。
最初は普通に見てる。
でも、少し切ないシーンが続く。
想いを伝えられない主人公。
すれ違い。
静かな音楽。
その空気に、二人の距離もゆっくり縮む。
廉の指先が、そっと〇〇の手に触れる。
探るみたいに。
〇〇は一瞬止まる。
でも、離さない。
指が絡む。
ちゃんと、恋人みたいに。
画面の光が二人を照らす。
廉の親指が、〇〇の手の甲をなぞる。
〇〇の呼吸が浅くなる。
映画の中で、やっと想いが通じるシーン。
キスする場面。
その瞬間、廉の手に少し力が入る。
廉が小さく囁く。
廉「……俺も、あんな感じでええ?」
〇〇の鼓動が跳ねる。
映画は流れ続けてる。
でも二人の空気は、もっと静かで、もっと甘い。
映画の終盤。
主人公がやっと想いを伝えるシーン。
静かなキス。
画面の中の二人が抱き合う。
その光が、廉と〇〇を照らす。
〇〇は無意識に息を止めてた。
その瞬間。
廉がそっと〇〇を見る。
目が合う。
逃げられない。
廉「……〇〇」
低い声。
指がまだ絡んでる。
〇〇の心臓が跳ねる。
廉の手が頬に触れる。
大きな手。
さっき髪を乾かしてくれた手。
ゆっくり距離が縮まる。
〇〇「……映画、終わってない」
廉「知ってる」
小さく笑う。
そして、触れるだけのキス。
柔らかい。
短い。
でも甘い。
離れた瞬間、廉の額が〇〇の額に触れる。
廉「……我慢したんやけど」
〇〇の鼓動が爆発しそう。
映画はまだ流れてる。
でももう内容なんて入ってこない。
〇〇の体が少しだけ傾く。
無意識。
廉の肩に寄りかかる。
廉は一瞬止まる。
でもすぐ、自然に受け止める。
肩越しに感じる体温。
廉の腕がそっと回る。
抱き寄せるわけじゃない。
でも、守るみたいに。
〇〇「……ドキドキうるさい」
小さな声。
廉「俺も」
即答。
廉の胸に耳が近い。
鼓動が速いのが分かる。
〇〇だけじゃない。
それが少し安心で、少し嬉しい。
映画がエンドロールに入る。
でも二人は動かない。
静かな夜。
ーーーーーーーーーーーー
同じ夜・北斗side
北斗は部屋で一人。
ソファに座って、スマホを握ってる。
画面には〇〇の名前。
さっきの電話。
「今日、泊まるね」
その言葉が頭から離れない。
北斗は天井を見る。
北斗「……そっか」
小さく呟く。
笑う。
でも目は笑ってない。
知ってる。
廉が本気なのも。
〇〇が揺れてるのも。
でも北斗は、まだ言ってない。
好きって。
北斗「待つって決めたし」
自分に言い聞かせる。
スマホを伏せる。
でも、画面をまた見る。
連絡は来ない。
当たり前。
分かってる。
それでも。
北斗「……ずるいよ、廉」
小さく笑う。
でも心はざわついたまま。
夜はまだ終わらない。
ーーーーーーーーーーー
エンドロール。
部屋は暗いまま。
画面の光だけが揺れてる。
〇〇はまだ廉の肩に寄りかかっている。
廉の腕がそっと回っている。
動かない。
誰も何も言わない。
でも空気は甘い。
映画が完全に終わる。
無音。
〇〇がゆっくり顔を上げる。
視線が合う。
近い。
廉の瞳がやわらかい。
でもどこか熱い。
廉「……終わったな」
〇〇「うん」
小さな声。
そのまま数秒。
廉の手が〇〇の頬に触れる。
大きな手。
優しいけど、迷いがない。
廉「さっきの続き、してええ?」
〇〇の心臓が跳ねる。
答える前に、廉がゆっくり近づく。
今度は少しだけ長いキス。
さっきより深く。
でも強引じゃない。
確かめるみたいに。
〇〇の手が、無意識に廉のTシャツを握る。
鼓動がうるさい。
離れたあと、しばらく目が開けられない。
廉の額が軽く触れる。
廉「……ほんまに泊まるんやな」
実感がこもってる。
〇〇は小さく頷く。
〇〇「うん」
その瞬間、現実に戻る。
沈黙。
二人同時に少しだけ視線を逸らす。
廉「……で」
〇〇「……うん」
廉「ベッド、どうする?」
ついに来た。
〇〇の鼓動がまた速くなる。
廉はすぐ続ける。
廉「俺んち、ベッド一個やけど」
冗談っぽく笑う。
でも目は真面目。
〇〇「……ソファで寝るよ?」
〇〇の提案。
廉、即座に首を振る。
廉「それはない」
〇〇「なんで」
廉「女の子にソファはあかんやろ」
少し間。
廉「俺がソファでええ」
〇〇は慌てる。
〇〇「いや、私が泊まるって言ったし」
言い合いみたいになるけど、どこか優しい。
廉が一歩近づく。
廉「……一個案あるけど」
〇〇「なに」
廉「ベッド広いし、端と端で寝る」
さらっと言う。
でも耳が少し赤い。
〇〇の鼓動が跳ねる。
〇〇「……狭くない?」
廉「175と155やぞ」
少し笑う。
廉「余裕やろ」
沈黙。
ドキドキが止まらない。
廉は真面目な顔で言う。
廉「無理せんでええ」
廉「嫌なら俺ほんまにソファで寝る」
選ばせてくれる。
その優しさが、またずるい。
〇〇はしばらく考えて、ゆっくり言う。
〇〇「……端と端、ね」
廉の目が少し柔らかくなる。
廉「うん、端と端」
確認みたいに繰り返す。
でも距離は、さっきキスした距離のまま。
夜は静か。
同じベッド。
端と端。
それだけで、心臓がもたない。
間にクッションひとつ分くらいの距離。
天井のライトがまだついている。
どっちも落ち着かない。
廉「……消すで?」
〇〇「う、うん」
パチ。
部屋が暗くなる。
一気に静か。
外の街灯の光だけが薄く差し込む。
布団の擦れる音。
お互い、動きがぎこちない。
廉「狭くない?」
〇〇「大丈夫」
全然大丈夫じゃない。
心臓の音が自分で聞こえる気がする。
数秒の沈黙。
廉「……ドキドキしてる?」
暗闇での声は、昼より低い。
〇〇「してない」
即答。
廉「嘘やな」
少し笑う気配。
〇〇「そっちは」
廉「してる」
素直。
その一言で、胸がきゅっとなる。
廉「今日さ」
〇〇「うん」
廉「泊まるって言ったとき、めちゃくちゃ嬉しかった」
暗いから顔は見えない。
でも声が本気。
〇〇は布団をぎゅっと握る。
〇〇「……私も、帰りたくなかった」
静かに落とす本音。
その言葉で、空気が柔らかくなる。
寝返り。
同時だった。
指先が触れる。
びくっとする。
でも、離れない。
廉の指が、そっと絡む。
探るみたいに。
〇〇は少し迷ってから、握り返す。
暗闇。
視界はない。
でも温度だけははっきり。
廉「端と端ちゃうやん」
小さく笑う。
〇〇「そっちが来た」
廉「来てへん」
子どもみたいなやりとり。
でも指は絡んだまま。
廉の親指が、そっと撫でる。
〇〇の鼓動がまた速くなる。
廉「……もうちょい近く来る?」
声が低い。
でも強制じゃない。
〇〇は少し迷ってから、ほんの少しだけ距離を縮める。
腕が触れる。
体温が伝わる。
廉の息が近い。
でもそれ以上はしない。
抱きしめない。
キスもしない。
ただ、手を繋いでる。
それだけで充分なくらい、心臓がうるさい。
暗闇。
手はまだ繋がったまま。
少しだけ距離が近い。
寝たふりみたいな静けさの中、廉が小さく息を吐く。
廉「……〇〇」
〇〇「ん?」
眠そうな声。
でも本当は全然眠れてない。
廉「俺さ」
少し間。
指に少し力が入る。
廉「強がってるけど、余裕ないで」
正直な声。
〇〇の心臓が跳ねる。
廉「北斗のこと、仲間って分かってても」
名前を出すのは初めて。
廉「やっぱ気になる」
静か。
でも逃げない。
〇〇は少しだけ体を向ける。
暗くて顔は見えない。
〇〇「仲間だよ」
はっきり。
迷いなく。
廉の呼吸が少しゆるむ。
廉「分かってる」
廉「でも俺は、〇〇のこと好きやから」
まっすぐ。
廉「取られたくないって思う」
その本音に、〇〇の胸がきゅっとなる。
〇〇「取られないよ」
小さく言う。
〇〇「私が選ぶから」
その言葉で、廉が静かに息を吸う。
廉「……それ、期待してまう」
声が少し震える。
〇〇は、握っている手をぎゅっと強くする。
それが答えの代わり。
廉はそれ以上何も言わない。
ただ、そっと額を〇〇の額に近づける。
触れない距離。
でも温度は近い。
そのまま、ゆっくり眠りに落ちていく。
ーーーーー☀️
カーテンの隙間から光。
〇〇が先に目を覚ます。
一瞬、状況が分からない。
見上げた先。
すぐ近くに、廉の顔。
近い。
想像以上に近い。
いつの間にか端と端じゃない。
ほぼ距離ゼロ。
〇〇の腕の上に、廉の手。
しっかり掴んでる。
〇〇の心臓が一気に跳ねる。
その音で目が覚めたみたいに、廉がゆっくり目を開ける。
寝起きの顔。
少しぼんやり。
廉「……おはよ」
声、低い。
至近距離。
〇〇「お、おはよう」
動けない。
廉は数秒、何も言わずに〇〇を見る。
そして、小さく笑う。
廉「端と端ちゃうやん」
〇〇「そっちが来た」
廉「無意識や」
言いながら、まだ離さない。
朝の光の中、廉の髪が少し乱れてる。
色気がすごい。
〇〇の鼓動がまた速くなる。
廉が小さく呟く。
廉「……朝から可愛いのやめて」
そして、軽く。
本当に軽く。
おでこにキス。
甘いけど、穏やかな朝。
夜とは違う、柔らかい空気。
でも。
このまま一日が始まる。
選ばなきゃいけない未来が、少しずつ近づいてる。
至近距離のまま、数秒。
廉が先に体を起こす。
廉「起きよか」
寝起きなのに低い声。
〇〇はまだドキドキが収まらない。
ベッドを出て、ブカブカのTシャツのままキッチンへ。
廉が冷蔵庫を開ける。
廉「なんもないな」
〇〇「昨日買った卵あるじゃん」
廉「料理苦手コンビやのに?」
〇〇「朝は簡単でいいの」
並んで立つ。
距離が近い。
フライパンに卵を落とす音。
〇〇がパンを焼く。
廉がコーヒーを淹れる。
何気ない朝。
でも特別。
廉が横目で見る。
自分の服を着たまま、真剣に目玉焼きを焼く〇〇。
廉「それ、持って帰らんよな?」
〇〇「なにが」
廉「その服」
〇〇「返すよ」
廉「返さんでええ」
さらっと言う。
〇〇の鼓動が跳ねる。
テーブルに並ぶ簡単な朝ごはん。
向かい合って座る。
廉「こういうの、ええな」
〇〇「うん」
本音。
静かだけど、あたたかい時間。
ーーー
朝ごはんを食べ終わる。
少し静か。
廉がゆっくり立ち上がる。
テーブル越しに〇〇を見る。
廉「昨日も言ったけど」
真剣な目。
逃げない。
廉「俺は〇〇が好き」
はっきり。
廉「泊まってくれたから言うわけちゃう」
廉「今朝一緒におったからでもない」
一歩近づく。
廉「前から、ずっとや」
〇〇の胸が熱くなる。
廉「北斗がどうとか関係なく」
廉「俺は俺で、ちゃんと取りにいく」
強いけど優しい。
廉「だから」
少しだけ緊張した顔。
廉「俺とちゃんと付き合ってほしい」
〇〇の鼓動が早い。
昨日より、もっと本気の告白。
選ぶのは〇〇。
〇〇の心臓がまた速くなる。
廉「泊まったからとかちゃう」
廉「朝一緒におったからでもない」
一歩近づく。
廉「前から、ずっとや」
静かだけど強い声。
廉「俺とちゃんと付き合ってほしい」
部屋が静まり返る。
〇〇の胸の奥が熱い。
嬉しい。
でも。
仕事のこと。
今の関係。
北斗は仲間だと分かっていても、三人でいる時間。
全部が頭をよぎる。
〇〇は小さく息を吸う。
〇〇「……廉」
目を見る。
逃げない。
〇〇「ちゃんと考えたい」
正直な声。
〇〇「嬉しいし、ほんとに嬉しい」
少しだけ笑う。
でも揺れている。
〇〇「でも今すぐ答えるの、なんか違う気がして」
廉は黙って聞く。
〇〇「中途半端な気持ちで返事したくない」
本音。
数秒の沈黙。
廉がゆっくり頷く。
廉「そっか」
責めない。
廉「待つ言うたやろ」
少し笑う。
でも目は真剣。
廉「〇〇がちゃんと選ぶまで待つ」
胸がぎゅっとなる。
〇〇「ごめんね」
廉「謝んな」
一歩近づいて、そっと頭に手を置く。
大きな手。
廉「ちゃんと考えてくれるってことやろ?」
〇〇は小さく頷く。
廉「それで十分」
少しだけ距離が近い。
でも触れない。
廉「ただな」
少し意地悪な顔。
廉「考えてる間も、俺は好きやからな」
心臓が跳ねる。
〇〇は思わず視線を逸らす。
廉「覚悟しといて」
軽く笑う。
でも本気。
朝の空気が少し変わる。
答えはまだ出ない。
でも、気持ちは確実に動いてる。