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kaede🍁
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誰もいない魔王城。
阿部は玉座に座ったまま、動けずにいた。
「……。」
世界は平和になった。
敵はほとんどいない。
裏ボスも倒した。
レベルもカンストした。
もう。
やることなんて何もない。
それなのに。
夢は覚めない。
「……めめ。」
阿部は小さく名前を呼ぶ。
返事なんてあるはずがない。
分かっているのに。
「会いたい……。」
現実の自分はどうなっているのだろう。
ただ眠っているだけならいい。
病院に運ばれているだけならいい。
でも。
もし。
本当に死んでいたら。
もう目黒に会えない。
「……嫌だ。」
その時だった。
ギィィィ……。
「……。」
阿部が顔を上げる。
玉座の間にある。
大きな扉。
それが。
ゆっくりと開いていく。
「……え?」
誰かが立っていた。
黒い魔王城には似合わない。
見慣れた姿。
ずっと。
会いたかった人。
「……めめ?」
目黒だった。
「見つけた。」
いつもと変わらない声。
いつもと変わらない顔。
目黒は阿部を見ると。
優しく笑った。
「助けに来たよ。」
「……。」
その言葉を聞いた瞬間。
阿部の視界が滲んだ。
「めめ……。」
「うん。」
「めめ……!」
涙が一気に溢れる。
阿部は玉座から立ち上がった。
階段を駆け下りる。
「めめ!」
そのまま。
目黒へ飛び込んだ。
目黒はしっかり受け止める。
「怖かった……。」
「うん。」
「夢、覚めなくて。」
「うん。」
「俺、死んじゃったのかと思った。」
目黒の背中へ腕を回す。
「もう会えないかと思った……。」
「大丈夫。」
目黒も阿部を強く抱きしめる。
「ちゃんと迎えに来たから。」
阿部は目黒の胸元へ顔を埋めた。
「遅いよ……。」
「ごめん。」
「ずっと待ってた。」
「うん。」
目黒の手が、阿部の頭を優しく撫でる。
「帰ろう。」
その一言に。
阿部は何度も頷いた。
「帰りたい。」
「うん。」
「めめと帰りたい。」
「じゃあ行こう。」
___________
目黒はなぜか迷うことなく。
玉座の方へ歩いていく。
「めめ?」
「こっち。」
「何で分かるの?」
「夢だからじゃない?」
「便利だなぁ……。」
さっきまで泣いていたのに。
少しだけ笑えた。
目黒が玉座の横へ手を伸ばす。
ガコン。
大きな音がした。
玉座の下。
床がゆっくり開いていく。
そこには。
地下へ続く階段がある。
二人で階段を下りる。
薄暗い地下。
長い階段。
阿部は目黒の手を握っていた。
絶対に離れないように。
「めめ。」
「何?」
「現実の俺。」
少し怖くなって聞く。
「生きてる?」
目黒は阿部を見る。
「帰れば分かるよ。」
「……。」
「大丈夫。」
繋いだ手を強く握ってくれる。
それだけで。
少し安心した。
___________
階段の一番下。
小さな部屋へ辿り着く。
中央に。
一本の剣が刺さっていた。
「勇者の剣。」
「そうみたいだね。」
目黒が近付く。
剣を引き抜いた。
眩しい光が地下室を照らす。
阿部はその剣を見る。
そして。
理解した。
「……そっか。」
魔王は。
勇者に倒される。
それで。
この夢は終わる。
「俺。」
阿部は少し困った顔をする。
「倒されないと帰れないんだ。」
「多分ね。」
目黒が剣を持つ。
その姿を見ながら。
阿部はふと。
大事なことを思い出した。
阿部は眉を下げる。
「俺、倒されたらお仕置き受けないと。」
「……。」
目黒が少し考える。
そして。
平然と言った。
「どっちにしろお仕置きは確定でしょ。」
「え?」
「だって。」
目黒は阿部を見る。
「悪いもの食べて、具合悪いのに一人で寝たんでしょ?」
「……。」
「俺に連絡しないで。」
「……。」
「また無理した。」
「……はい。」
阿部は何も言えなくなる。
「帰ったら話し合いだね。」
「それがお仕置き?」
「さあ。」
「怖いんだけど。」
「大丈夫。」
目黒が少し笑う。
「帰ろう。」
「……うん。」
目黒が勇者の剣を構える。
剣先が。
阿部へ向けられた。
「……。」
さっきまでなら。
怖かったかもしれない。
でも。
今は。
目黒がいる。
目黒が。
自分を帰してくれる。
「あべちゃん。」
「うん。」
「準備はいい?」
阿部は目黒を見る。
大好きな顔。
ずっと会いたかった。
やっと。
帰れる。
阿部は小さく笑った。
「いいよ。」
目を閉じる。
「めめなら。」
「大丈夫。」
目黒が剣を握る。
「じゃあ。」
「帰ろう。」
阿部は頷いた。
次の瞬間。
眩しい光が。
地下室いっぱいに広がった。
不思議と。
痛くなかった。
むしろ。
温かかった。
自分の体が。
少しずつ光になっていく。
「めめ。」
最後に。
阿部は手を伸ばした。
目黒がその手を握る。
「大丈夫。」
「すぐ会えるよ。」
その声を聞きながら。
阿部は笑った。
そして。
魔王・阿部は。
勇者・目黒の手によって。
倒された。
世界を滅ぼすどころか。
ほとんど平和にしてしまった魔王は。
こうして。
ようやく。
現実の世界へ帰っていった。
___________
次に目を開けた時。
最初に見えたのは。
薄暗い寝室の天井だった。
「……。」
阿部は何度か瞬きをする。
黒い天井じゃない。
紫色の炎もない。
玉座も。
勇者の剣もない。
「……帰ってきた。」
小さく呟いた。
ここは。
自分の家。
寝室。
まだカーテンの外は暗い。
夜は明けていなかった。
そして。
「……。」
自分の体に回された腕。
すぐ近くにある体温。
顔を少し上げる。
「めめ……。」
目黒がいた。
阿部をしっかり抱きしめたまま眠っている。
「……本物だ。」
夢の中でも。
目黒は迎えに来てくれた。
『助けに来たよ。』
そう言って。
自分を見つけてくれた。
そして今も。
目を覚ましたら。
目黒の腕の中にいる。
阿部は目黒の胸元へ少しだけ近付いた。
「よかった……。」
本当に。
生きていた。
夢から覚めなかった時。
あんなに怖かった。
現実の自分は死んでしまったのではないか。
もう目黒に会えないのではないか。
そんなことまで考えた。
でも。
ちゃんと帰ってこられた。
阿部は安心して目を閉じる。
すると。
頭の上から声がした。
「あべちゃん。」
「……起きてたの?」
「今起きた。」
目黒の腕に少し力が入る。
「体調どう?」
「……さっきよりいい。」
阿部は自分の体を確認する。
気持ち悪さは残っている。
お腹にも少し違和感がある。
でも。
ソファで眠った時より。
明らかに楽になっていた。
「よかった。」
目黒の手が阿部の背中を優しく撫でる。
「俺、どうやってベッド来たの?」
「運んだ。」
「やっぱり。」
「帰ってきたらソファで寝てたから。」
「……ごめん。」
「顔色悪いし、起こしても全然起きないし。」
「うん……。」
「心配した。」
その言葉に。
阿部は申し訳なくなる。
「ごめんね。」
「連絡してくれればよかったのに。」
「しようと思ったんだけど。」
「うん。」
「スマホ見るのもしんどくて。」
「それならなおさら連絡して。」
「はい……。」
目黒は阿部の額へ手を当てる。
熱を確認しているらしい。
「まだ少し休んで。」
「うん。」
「朝になっても具合悪かったら病院ね。」
「分かった。」
阿部は素直に頷いた。
それから。
少し迷って。
「めめ。」
「何?」
「夢に出てきた。」
「俺が?」
「うん。」
「何してた?」
「俺のこと倒した。」
「……。」
目黒が黙る。
「何その夢。」
「俺、魔王だったから。」
「あべちゃんが?」
「世界を平和にした魔王。」
「魔王向いてないね。」
「俺もそう思う。」
阿部は小さく笑った。
「でも。」
目黒の服を掴む。
「夢が覚めなくなって。」
「うん。」
「俺、死んじゃったのかなって怖くなった時に。」
阿部は目黒を見上げる。
「めめが助けに来てくれた。」
目黒の表情が少し柔らかくなる。
「そうなんだ。」
「勇者の剣で倒してくれた。」
「俺、勇者だったんだ。」
「最後だけね。」
「いいところだけ持っていった?」
「うん。」
二人で小さく笑う。
「それで。」
阿部は思い出す。
「夢の中のめめに言われた。」
「何を?」
「帰ったらお仕置きって。」
「……。」
目黒が黙った。
「めめ?」
「なるほど。」
「何?」
目黒は阿部を抱きしめたまま。
少しだけ笑った。
「じゃあ。」
「……何。」
「あべちゃん。」
「うん。」
目黒の手が阿部の頬に触れる。
「どんなお仕置きがいい?」
「……。」
阿部は固まった。
「え?」
「自分で選んでいいよ。」
「待って。」
「何?」
「本当にするの?」
「だって夢の俺が言ったんでしょ?」
「夢じゃん。」
「でも。」
目黒は阿部の頬を優しく撫でる。
「具合悪いのに連絡しないで、一人でソファで寝て。」
「……。」
「俺、すごく心配したから。」
「……ごめんなさい。」
「だからお仕置き。」
「反省してるよ。」
「知ってる。」
目黒は笑う。
「それでも。」
阿部をもう一度、自分の胸元へ抱き寄せる。
「何がいい?」
阿部はしばらく考えた。
でも。
体調が悪い今。
思いつくものなんて何もない。
「……優しいやつ。」
「お仕置きなのに?」
「具合悪いから。」
「確かに。」
「あと。」
阿部は目黒へぎゅっと抱きつく。
「今は離れないで。」
「……。」
「夢の中で、本当にもう会えないかと思ったから。」
目黒の腕が。
阿部の体をしっかり包んだ。
「分かった。」
「じゃあ今日のお仕置き。」
「うん。」
「朝まで俺から離れちゃダメ。」
「……それ。」
阿部は少し笑う。
「お仕置きになってないじゃん。」
「俺が決めたからいいの。」
「そっか。」
「うん。」
阿部は目を閉じる。
現実の目黒の体温を感じながら。
もう一度。
安心して眠れそうだった。
ただ。
眠りに落ちる直前。
目黒が耳元で小さく言った。
「体調治ったら、ちゃんとしたお仕置きしようね。」
「……。」
阿部は目を開けた。
「まだあるの?」
「あるよ。」
暗い寝室に。
目黒の小さな笑い声が響いた。
コメント
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💚は夢で様々な事を体験してるけときちんと💛💜に嫁入りの挨拶して無い🖤はSnowManのパパとママに💚を幸せにするので嫁に下さい🙇結婚させて下さい🙇って挨拶して💚を泣かせなきゃ

病院とお友達になりそうなのですね。 前半はコメディー… 後半は頑張りましたね。助けてくれる人居なかったから 帰れないかもと泣いた時はどうなるのかと思いましたが。 1番そばにいて欲しい人が迎えに来てくれましたね。 お仕置きあるんだね🥰 次楽しみ😊待ってます♪
💚らしい異世界旅、すごく良かったです! がんばれ🖤💚😭 🏥も🚑もがんばれ😭