ギィ「で?詳しく聞かせてもらおうか。」
リムル「まぁまぁ、そんなに緊張しなくてもさ!どうせいつもと変わんないんだし」
次の日、私は二人から事情聴取をされていた。あの日、あった事について。
緊張感は無かった。二人の魔王が前に座り、お話を聞いてくる…となると普通の人は驚き、失神するのかもしれないがあいにく、私はもう普通の”人”ではない。天間ですらない。二人の様子はいつもとあまり変わらなかった。事情聴取とはいえど、あの日あった事は私よりも知っているだろう。どちらかと言うと事実確認、そして、今後の方針についてだ。
リムルもギィも自分の知っている情報を出し確認し合う。私はそれに頷いたり、補足をするだけ。特に大きく事実からそれることはなかった。
1つを除いて。
どうやら、リムルもギィも私の記憶の封印が解けたのは魔素の暴走が原因だと考えていたようだった。しかし、あれは普段の暴走とは明らかに違っていた。私の意思があったのだ。
私の中で原因は予想できていた。
オニル。私の中にいる悪魔。強いのはのは明らかでありながらどの色にも属さない悪魔だった。
オニルは普段から私の魔素を食べて過ごしていた。あの日以外は。
あの日、暴走する直前。オニルは食べていた魔素を一気に吐き出したのだ。
魔素の暴走は私の保有できる魔素の容量を大幅に超え、暴走状態に陥った。
ギィ「その悪魔…。」
リムル「ギィは知ってるか?」
ギィ「いや、知らねぇな。」
ギィ「夢、今呼び出せるか?」
夢「うんん。無理、オニルが私の呼びかけに反応したことはないよ。」
ギィ「恐らくだが悪魔じゃねぇな。そいつ」
リムル「はぁ?!悪魔じゃないって、俺は確かに召喚魔法を…!」
ギィ「召喚魔法に応じた悪魔なら、マスターキーはリムルのはずだ。それが即刻夢に取り憑いたとなると…。」
リムル「確かに魔法は発動して…」
ギィ「どんなトリックを使ったかは知らないが、悪魔ではないだろうな」
夢「やっぱり、オニルが犯人なのかな」
ギィ「…それはお前が一番分かってるはずだろ」
夢「うん…でも…」
オニル「なぁに?僕の話〜?」
夢「あ、オニル」
オニル「おはよう、夢〜」
ギィ「こいつか…」
オニル「えっと…君は…原初の!」
ギィが剣を取り出しオニルに向ける。
ギィ「お前、悪魔じゃねぇな。なんだ?」
オニル「?僕は悪魔じゃーないけど」
リムル「はぁ?」
夢「オニル、オニルがやったんでしょ?」
オニル「何が?」
夢「暴走」
オニル「うん。そうだよ」
オニルは驚くほど淡々と答えた。
夢「なんで…?」
オニル「なんでって…面白そうだったから。」
夢「面白そう?」
オニル「夢についた時、抑え込まれてる記憶を見つけて、出してあげようとしたんだけど、僕の魔素じゃ足りなくてね。それで夢の魔素を借りたの。」
夢「オニルはなんなの?」
オニル「なんなの…とは?」
夢「悪魔じゃないんでしょ?」
オニル「僕は…寄生型魔獣だよ」
夢「寄生型魔獣?」
オニル「うん」
ギィ「夢、ちょっと来い」
さっきまで聞きに徹していたギィが口を開いた。
夢「ギィ?どうしたの?」
ギィ「そいつが寄生型魔獣なら…」
と言ってギィは私の目を確認しだした。すると…
オニル「意味ないよ。確かに夢の目の色は変わってるけど、僕が隠したから」
ギィ「…夢、目に異変はないか?見えにくかったり…」
夢「う〜ん…特に」
ギィ「そうか。」
そう言うと、ギィは少し安心したような顔をした。
リムル「どういうことだ?」
ギィは説明を始めた。寄生型魔獣について。寄生型魔獣、リムルいや夢よりも前に絶滅した魔獣。基本は人に取り付き、そいつの生気を吸い生きる。生気を吸われ続けた人間は寿命を失う代わりに、その人が一番願う物を叶えた。美しい顔を手にしたり、頭脳を手にしたり、人それぞれだった。
しかし、ある日を境に消えてしまった。魔獣の増加により人々の頭脳や、美貌などの願いは減り、“生きたい”という思いが強まった。しかし、寄生し生気を喰らう魔獣に取っては最悪の事態だった。生きたいと願う者たちには取り付けない。そういった理由で絶滅した。
そして、私に取り憑いたオニルは私の一番の願いの“復讐”を叶えたのだった。
オニル「よく知ってるね。僕はその生き残り。人だけでなく、魔物、魔人にも取り付けるように進化した。」
夢「…」
オニル「でも、夢の寿命。元から長いんだよね」
リムル「?覚醒する前の夢は…」
オニル「そう!覚醒したからか、吸っても吸っても無くならないんだよね」
夢「そうなんだ」
ギィ「…こいつ引き剥がすぞ」
夢「え?!」
リムル「…」
ギィ「寿命を吸うんじゃない。生気を吸うんだ。死ななくても健康に被害が出る。」
リムル「まぁ、そうか」
夢「い、嫌!!やめて!」
オニル「おぉ…怖〜」
夢はオニルを守るように抱きついた。夢は優しい。だからこそオニルにも情をかける。しかし、それが夢の体を蝕むのなら…。
ギィ「取り除く。夢、どけ」
リムル「ギィ、落ち着け。寿命が目に見えて縮まってるわけじゃないんだ。そんなに決断を急がなくてもいいだろ?第一、夢にも考える時間っていうのがな…」
ギィ「いくら夢の寿命が長くても永遠なんてことは無い。こいつは取り除く。」
夢「ま、待って!!分かった!分かったから!でもまって!!」
ギィ「あ?」
夢「ちゃんとお別れさせて!急にさよならなんて悲しいよ!」
リムル「夢…」
この世界じゃ、弱肉強食の世界じゃ夢みたいな奴は生きられない。それでも今生きているのは、夢にその理屈すら覆す力があるからだろう。だが、甘すぎるのも考えものだ。
夢はその後オニルと話していた。オニルは剥がされることをなんとも思っていないらしく、「もう満足。」と言っていた。夢はというと、悲しそうな顔をしながらお別れの挨拶をしていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!