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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第104話 〚輪の外側〛
― 真壁恒一視点 / 西園寺恒一視点 ―
⸻
― 真壁恒一視点 ―
最近、
近づけない。
距離の話じゃない。
物理的には、
前より近いはずなのに。
声をかけようとすると、
誰かがいる。
話しかけなくても、
視線がある。
澪の周りだけ、
空気が違う。
(……なんだよ、これ)
別に、
誰かに止められたわけじゃない。
「来るな」と
言われたこともない。
なのに――
入れない。
休み時間。
澪が立つ。
それと同時に、
動く人間がいる。
話してるふり。
笑ってるふり。
関係ないふり。
でも、
その全てが
澪を中心に
配置されている。
(……輪、か?)
気づいた瞬間、
背中が冷えた。
前は、
視線が向いていた。
今は、
視線が遮られる。
澪を見る前に、
別の顔が入る。
声をかける前に、
会話が始まる。
(俺、
何もしてないのに)
そう思うのに、
胸の奥が
ざわつく。
一番腹が立つのは、
誰も
俺を責めていないことだった。
排除されているのに、
責められていない。
それが、
一番きつい。
(……俺、
外側だ)
やっと、
それを理解した。
⸻
― 西園寺恒一視点 ―
気づいたのは、
視線の流れだった。
澪を見る。
――その前に、
誰かが見る。
一人じゃない。
複数。
しかも、
毎回違う。
(……面倒なことになってる)
俺は、
歯を噛みしめた。
海翔がいる。
それは前からだ。
でも今は、
それだけじゃない。
知らない男子。
澪の友達。
関係なさそうなやつ。
全員、
“立ち位置”が正確すぎる。
偶然じゃない。
(……計算されてる)
声をかけるタイミングを
探す。
でも、
その「間」が
存在しない。
誰かが必ず、
そこにいる。
視線が合った瞬間、
別の視線が
重なる。
(囲われてる)
いや――
囲ってはいない。
逃げ道は、
ちゃんと残っている。
だからこそ、
手が出せない。
(これは……
教師じゃないな)
教師のやり方じゃない。
もっと、
人間的だ。
感情が絡んでいる。
(……生徒同士か)
そう理解した瞬間、
焦りが生まれた。
教師なら、
抜け道はある。
でも――
生徒の“輪”は
崩しにくい。
真壁を見る。
あいつは、
苛立っている。
理由が分かっていない顔だ。
俺は、
分かっている分、
余計に腹が立つ。
(先に気づいたのは、
俺のはずだったのに)
二人とも、
同じ場所を見ている。
でも、
見えているものは違う。
真壁は、
「拒絶」に見えている。
俺には、
「完成」に見えている。
――入れない。
それだけは、
共通していた。
見えない輪は、
もう出来上がっている。
二人とも、
その外側に立っていた。