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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第105話 〚理由のない距離〛
― 澪視点 ―
最近、
少し静かだ。
教室も、
廊下も。
何かが減った、
というより――
遠のいた。
真壁恒一が、
前ほど近くにいない。
話しかけられる回数も、
減った。
西園寺恒一も、
視界に入ることが
少なくなった。
(……よかった)
そう思ったはずなのに、
胸の奥が
少しだけざわつく。
私は、
理由を知らない。
何かを言った覚えも、
怒らせた記憶もない。
ただ、
距離だけが変わった。
昼休み。
廊下を歩いていると、
前から真壁が来た。
一瞬、
目が合う。
でも、
すぐに逸らされた。
(……?)
前なら、
声をかけられていた。
今は、
何もない。
西園寺も、
同じだった。
視線が合っても、
何も起きない。
近づいてこない。
(避けられてる?)
そう考えて、
すぐに否定した。
そんな理由、
思い当たらない。
放課後。
昇降口で靴を履き替える。
後ろで、
誰かが立ち止まる気配。
振り向くと、
そこには誰もいなかった。
代わりに、
少し離れた場所に
海翔がいる。
目が合う。
海翔は、
何も言わずに
小さくうなずいた。
それだけ。
帰り道。
私は、
歩きながら考える。
距離ができたのに、
怖くない。
むしろ――
息がしやすい。
それが、
少しだけ不思議だった。
夜。
机に向かって、
ノートを開く。
文字を書きながら、
ふと手が止まる。
(……理由、
聞かなくていいのかな)
でも、
聞いたら壊れる気もした。
今の静けさが。
私は、
知らない。
二人が
なぜ遠くなったのか。
誰が、
何をしたのか。
でも、
一つだけ分かる。
私は今、
一人じゃない。
それが、
距離の理由じゃなくても――
十分だった。
理由のない距離は、
私を守っていた。
私は、
それを
まだ知らないままでいる。