テラーノベル
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連絡先を交換してから、僕と“もう一人の凛”は
毎日のようにメッセージを送り合うようになった。
最初は軽い話題だった。
『今日の渋谷、人多すぎ』
『23区しか残ってないんだから仕方ないわよ』
『ギルド行くの?気をつけてね』
『そっちこそ。Eランクは危ないでしょ』
そんな他愛もないやり取りが、
いつの間にか僕の日常になっていた。
そしてある日、彼女からメッセージが届く。
『ねぇ凛。
一度、会って話さない?』
僕は迷わず「いいよ」と返した。返す理由もないしね。
渋谷のカフェ。
雑多な人種が行き交う中、
彼女はすぐに見つかった。
「来てくれてありがとう」
「いや、僕も話したかったし」
席に座ると、彼女はストローをくわえながら僕を見つめた。
「ねぇ凛ってさ、いつも一人でギルド行ってるの?」
「うん。パーティー組んだことないし」
「危なくない?」
「まぁ……慣れたよ。」
「……すごいわね。
私なんてEランクで、まだまだ怖いのに」
彼女は苦笑した。
「でも、あなたと話してると不思議と落ち着くのよね」
「僕も。なんか……ずっと一緒に過ごしてきた家族みたいで」
「それ、私も思った」
二人で笑い合う。
その空気が、妙に心地よかった。
店を出て、人気の少ない裏路地へ移動する。
「ねぇ凛。
あなたの魔法……見てみたい」
「……あんまり期待しないで。
僕の召喚魔法、不完全なんだ」
「不完全?」
「そう。召喚陣は出るけど、呼び出せるのは“影”だけ。
本来の姿にはならない。うまくいかなかったらごめんね」
僕は深呼吸し、指先に魔力を集中させた。
胸の奥で、何かが脈打つ。
そして――
低く、重く、儀式のように詠唱を紡ぐ。
「世界の残滓よ……
崩れし境界より、我が呼び声に応えろ」
足元の空気が震え、光が地面を走る。
「形なき魂よ、
未完のままでも構わない。
ただ――我が影として顕現せよ」
青白い紋様が地面を描き、
幾何学模様が立体的に浮かび上がる。
「契約は未だ途上。
ならばその名を伏せたまま、
我が手に宿れ――」
光が弾ける。
「召喚」
召喚陣がうめき、
影が揺らめき、天使のように白く輝く獣の輪郭が現れる。
彼女が息を呑む。
「……綺麗」
影は不安定に揺れ、
やがて霧のように消えていった。
「三年やってるのに、まだなにもまともなもの呼べない。
召喚魔法って、本来はもっと……強いはずなのに」
僕は苦笑した。
そのとき――
「私、少し思ったことがあるの。凛、ちょっと手を出して」
彼女が僕の手に触れた瞬間、
召喚陣の残光が再び“脈打った”。
青白い光が強くなり、
影の輪郭が一瞬だけ“獣の形”を取る。
「……っ!」
「やっぱり。
あなたの魔力、私と混ざると安定するのかもしれない」
「なんでわかったの?」
「なんとなくよ。なぜかそんなきがしたの」
彼女の声は落ち着いていたけど、
その瞳は興奮で輝いていた。
「凛。
あなたの召喚魔法……完成しないんじゃなくて、
“誰かが必要なタイプ”なんじゃない?」
「誰か……?」
そんなタイプがあるのか。
「そう。
たとえば――私みたいな」
彼女はすこし照れくさそうに言う
「ねぇ凛。
私たち……パーティーを組まない?」
心臓が跳ねた。
「僕と……?」
「ええ。
あなたの召喚魔法は不完全。
でも、私がいれば“完成に近づく”。
そして私も……あなたといると魔力が安定するの」
理由はわからない。
でも、僕も同じことを感じていた。
「……組もう。
僕たちで」
彼女は嬉しそうに微笑む。
「今日から私たちはパーティーね。
よろしく、凛」
「こちらこそ……よろしく」
こうして――
不完全な召喚魔法と、
それを補う防御魔法。
銀髪の“僕”と“私”の物語は、
本当の意味で動き始めた。
コメント
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ガチ最強パーティが生まれる予感!!!