テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
静かな病室で一人、ひたすらに鉛筆が走る音がする。
「はぁ、」
上手く書けなくて、知らぬ間に溜息が出る。
やることがなくてなんとなく書いては消してを繰り返している。
「るぅとくん、来たよー。」
そう言って入ってきたころちゃんは、昨日よりも少し元気がなさそうに見えた。
「本当に、来てくれたんですね。」
昨日、来ると言ってくれたころちゃん。
まさか、本当に来てくれるとは思ってもいなかったから嬉しさが込み上げてくる。
ころちゃんの顔が少し暗い気がして、僕は聞いてみる。
「ころちゃん、なにかあったんですか?」
ころちゃんは乾いた笑みを浮かべた後に、
「実は、親と話したんだけどさ、」
それから、浮かない表情をする。
「『あんたなんか、産まなきゃ良かった。』って言われたんだ。」
そう言って、涙を流したころちゃん。
「そんな、ひどいですよ。」
「僕は、しょうがないかなって思うんだ。」
「両親は、僕を生みたくて産んだわけじゃない。たまたま、出来ちゃった子供だったんだ。」
病室に沈黙が訪れる。
「僕、最近また、死にたいと思うようになったんだ。」
「僕の生きる意味、なくなっちゃたから。」
ころちゃんの生きる意味_。
「ころちゃんの生きる意味は、両親からの愛を受け取るだけじゃないんです。」
「だったら、僕がころちゃんに、生きる意味を教えます。」
僕にも、本当は生きる時間がない。
なら、誰かのために死ぬのもありなんじゃないかと思う。
「るぅとくんが?」
ころちゃんが目を見開く。
「僕が退院したら、いっぱい楽しいことをしましょう!」
僕が死ぬまであと一年。
その一年間でころちゃんに世の中での生きる意味を教える。
「僕と一緒に、この世界を楽しむんです。」
「親を忘れてしまうくらいに_。」
結局、親を忘れることなんて出来ないかも知れない。
だけど、それでも。一時でも忘れることが出来るなら、それは生きる意味になるんじゃないか。
「期待してる。」
ころちゃんはそう言って笑顔になる。
初めて出会ったあの時みたいに。
それから、毎日のようにころちゃんは僕の見舞いに来てくれた。
退屈な入院生活を彩ってくれた。しばらくして、僕は退院した。
僕は、学校に復学した。
教室に入ると、たくさんのクラスメイトに囲まれた。
結局、検査があって、2週間近く休んでしまったから無理もない。
先生たちには膝の手術をしていたのだと伝えてもらっていた。
それでも、莉犬とジェルくんは本当のことを知っているから、何も言ってこない。
お昼休みなって、お弁当を持って屋上に向かおうとする。
「るぅちゃん、今日は俺達も一緒に行ってもいい?」
莉犬とジェルくんがお弁当を持って僕に言ってきた。
なんとなく、話したいのかな?と思って僕は承諾した。
三人で屋上に座ってお昼ご飯を食べる。しばらくは皆黙っていたけど、莉犬が口を開く。
「るぅとくん、この間はごめんね。俺達、無神経なこと言ったよね。」
謝らなければならないのは僕の方なのに_、
「なぁ、るぅちゃん。俺らはるぅちゃんの気持ちが分からないかもしれん。だけど、『力になりたい』とは思ってる。俺らのこともっと頼ってもええんやで。」
ジェルくんがそんな事を言うから、自然に涙が出てきた。
「えぇ!?ちょっと、るぅちゃん!?」
莉犬が慌てる。
「すみませ、僕、」
こんなにも良い友達が居る。それなら、もっと頼ってもいいのかな?
「二人のこと、頼ってもいいんですか?」
二人は、力強く頷いてくれた。
「ありがとう、ございます。」
僕は更に泣いてしまった。今まで二人に病気を秘密にしていたこと。それが、すごく申し訳ない。
これからは、沢山頼ってもいいって、言ってくれた。本当に二人には感謝しか無い。
それから二人は、僕のことを気にかけてくれるようになった。
ころちゃんとは、放課後に沢山の思い出を作っていった。
ゲーセン、プリクラ、カフェ巡り__、
ころちゃんはどこに行っても楽しそうな顔をしてくれた。
それが、何よりも嬉しかった。
そうこうしていくうちに、僕はころちゃんに心が惹かれていた。
いや、もっと前からなのかも知れないけど_、
だけど、僕に残った時間はあと半年になっていた。
僕の恋は、叶うことはない。
僕は、この思いを秘めたまま死んでいくだろう。
だから僕は、この恋に『期限付きの叶わぬ恋』と名付けることにした。
そして、恋を自覚した日から僕は、ころちゃんに向けた曲を書くことにした_。
コメント
2件
めちゃめちゃ面白いです!
続きありますか?