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「でもさ、マスター。考えてもみなよ。大人と子供は、知恵の量、経験値、それに生きてきた時代からして違う。違ってることを、どうして今の人達は認めようとしないのかね」
カウンターでチャーハンをかきこむ、作業服を着た人の手が止まった。ビールを飲む、ジャージ姿の背中も止まった。隣のテーブルの、子連れのおばさんが振り返る。
マスターは店内を見回し、声を落とした。
「岡本さん、あんた相変わらず古いな。子供だって一人の人格だよ。平等の権利持ってんだよ」
「そうやって子供を権利漬けにすると、あんたんとこの弟子のようになるよ。あのコ、字も計算もできなかったんだろ?」と伯父さん。
「ま、そうだったけど。でも、それとこれとは話が別だよ。話を一緒くたにするのはよそうや」
「俺がこんなこと言ってもさ、意外と子供達からの反論はないんだよ」伯父さんは健太の方を向いた「文句をいうのは大人ばかり」
健太は伯父さんをまねて、野菜炒めを麺の上に載せてみた。でも、食べる時はやはり野菜炒めからとなる。お母さんの野菜炒めよりも、油が入りすぎてひつこい。
伯父さんは瓶ビールを注文し、グラスを二つ頼んだ。僕いらないよと健太が言うと、伯父さんはそうかと言って一方のグラスにだけビールを注いだ。
マスターの目が落ち着かなくなった。
「大人は大人にしかできないことがある。子供は子供にしかできないことがある。子供は子供らしくでいいんだ。何も悪くない。お前は受験勉強よりも、表で思い切り走り回ったらいいんだよ」と伯父さんは言った。
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