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この世には、生と死がありふれている。
ここ日本国の伝記によると、人は一日に1000人死に、1500人生まれるらしい。
だが、現在の日本は少子高齢化社会が進み、生まれる人間は少なくなっている。
自殺大国ともいえるこの国の重要な課題であろう、生と死というものは。
今、私と彼、七海がいるこの空間は、パラレルワールドの狭間だ。
簡単に言うならば、宇宙空間とでも言うのだろうか。
ここは私が独自に作り出した空間で、私の仕事場所。
普段地球で暮らしている私でも息ができるよう、空気の配合はしてある。だから、普段ここに来ない人間も、多少の時間なら息をすることができる。
この空間には、とあるものが沢山漂っている。
「なに、これ?」
漂っている”それ”を七海が触ろうとする。
「触るな。気安く触ると火傷するぞ」
「えっ、これに?」
「そうだ。あんたから見たら蟻みたいな大きさだがな。温度が高いものは摂氏一万度はある」
「い、いちまん!? そんな熱くは見えないけど……」
「これは星だ」
そう、この空間に漂っているのは”星”。
「星って、あの空に浮かんでるやつ?」
「そう」
宇宙上にある星は、極めて表面温度が高い。その星の色によって、摂氏温度が変わってくる。それは意外にも、青や白の方が温度が高いのだ。
「でも、どうして星がこんなにいっぱい浮いてるの? 触れたら熱いのに、浮いてて大丈夫なの?」
「嗚呼。私は大丈夫だ」
そう言って私は、左手の人差し指の先を、目の前に浮遊していた星に付ける。
するとその星は、瞬く間に落ちてゆく。
七海はきょとんとした顔でこちらを見ている。
「今、何したの?」
私は答えた。
「星を落したんだ、地球に」
七海は一瞬フリーズした。何かと思えば、今度は急に叫び出す。
「えぇぇぇっ!?」
「!? なんだ、うるさくしないでくれ……」
意味が分からない。私が普段しているこの仕事を、こんなにも叫んで驚かれたことは初めてだ。
「それって、隕石ってこと!? 地球滅びるよ? やめてよそんなの!!」
……こいつ、バカなのか?
隕石と星の区別もつかないのか、現代人は……
「別に、私が落したのは隕石じゃない。それに、地球は滅びない」
端的に答える。
七海はほっとしたように胸をなでおろした。
「じゃあ、一体どうして星を落すの?」
簡単なことだ。私は答える。
「私は星を落してるんじゃない」
その答えに、七海は納得いかないようで、眉間に皺を刻む。
「どういうこと? だって、今、天野は、星を落してるんだろ、地球に?」
「そうだ」
「だから、どうして星を落してるの?」
「私は星を落してるんじゃない」
「だーかーら……!! ……あー、俺の質問が悪かったのかな……天野は、何を落してるの?」
……嗚呼、それなら納得のいく答えが出来そうだ。
「私は、星を__人間の命を、地球に落している」
風も吹かないこの空間に、異様な空気が立ち込めた。