テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

つづき





















「……ぉえっ、、……」




嗚咽を繰り返しても、胃の中が空っぽで何も吐けない。感じるのは少しばかりの酒の匂いと、胃酸の味だけ。


気持ち悪い。頭が割れるように痛い。




「……やっぱ、酒なんて飲むもんじゃないな……、」




『あの日』から……、


あの子を拾ったあの日から。しばらく飲んでいなかったからか、やけに深酔いしてしまった。


それもこれも、サークルの先輩に……。











「おい三枝ぁ〜、最近顔見せねぇじゃん?」


「あ……えと、お久しぶりです。」




強引に肩を組まれ、距離を詰められる。

正直、早いところ退散したい。この人と関わってもろくなことがない。


あの日だって、この人に飲みに誘われなければ、彼に出会うこともなかったのに……。




「知ってるぜ、お前が失恋したんだって、みんな噂にしてる。」




こんな陰キャの失恋話でさえ話題になるのだから、みんな相当暇なのかな。

そもそもどこからそんな話が湧いてくるんだ、タチが悪い。




「……あはは、誰情報っすかそれ……、」


「誤魔化すなよぉ、な?俺が慰めてやるからさぁ〜〜。」




余計なお世話だ。

たいして関係値もないくせに、他人の不幸には面白がって干渉したがる。


今の俺には、そんな廃れた思考にしか至れない。

もっとも、今じゃなくとも、この先輩が真摯になって話を聞いてくれるとは思っていないが。


話す気なんて更々無いけど。




「そんなくだらない女のことなんて忘れてさぁ、今夜合コン行こうぜ。」


「……いやぁ、今はそういう気分じゃ……、」


「だからこそ飲むんだろーが、あのなぁ、せっかく先輩の俺が……、、」




と、その後もよく分からない理屈を並べられ、しつこく誘われたが、渋い返事しか返さない俺にとうとう痺れを切らしたのだろうか。


いきなり肩をぐっと掴まれ、




「お前さ、綺麗事ばっか並べてるけどよぉ、」


「……今頃その女だって、他の男ので気持ちよくなってるって……w」




耳元で、下品な声で、そう小さく囁かれた。




……ごもっとも。あの子なら、今頃はもう違う男と楽しんでるだろうよ。

所詮俺は、一晩で捨てられた可哀想な奴。そんなの自分がいちばんよくわかってる。




きっとこの人は、断っても誘い続けるだろう。なんだかもう面倒くさい。




「……そっすね……、何時からですか、合コン。」


「そうこなくちゃな〜!お前連れてくと評判良いんだよ、助かるぜ〜!!」




は、それが本音かよ……。











なんて、ヤケになって誘いに乗らなければよかった。

例の如く散々飲まされ、解散後は一切土地勘もない街にポイ、だ。




「……ぅ、」




服に染みついた、甘ったるい香水の匂い。それがまた吐き気を催す。


合コンに来ていた女の人たちの目には、俺は可愛い男の子と映ったようで。

撫でられたり、物を食べさせられたり……所謂、あーんってやつ……、完全に犬扱いだ。


普通の男なら、そんな状況は楽しくて仕方がないだろう。

だけど俺には、なんの魅力も感じられなかった。











忘れられるなら、それで良いと思った。

でも脳をよぎるのは、全てあの子のことばかり。




あの子ならもっと、花が咲くように優しく微笑んで、ふわっと香るような懐かしい匂いに包まれていて。


時折、恐ろしいほどに美しい、哀しい瞳でこちらを覗くんだ。




俺はそんな君から、目が離せなかった。






虚しい、虚しい。






そんなこと考えても虚しいだけ。

何度も自分に言い聞かせたじゃないか、俺は捨てられたんだって。

元々あの子は、ちょっとした遊び相手が欲しかっただけなんだって。


派手に振られた俺は、その後良い出会いもなくセカンド童貞拗らせ……って、男同士だったからまだ童貞卒業してないのか……、




(……なーんて、、)





















「はぁーーーーーー……、」




疲れた。考えるのも、酔いの回った足取りで歩くのも。




バサッ




とうとう我慢できず、その場に倒れ込んでしまった。

が、不思議と痛くない。


どうやらそこはゴミ捨て場のようで、薄目を開けて横を見ると、周囲はゴミ袋で溢れていた。


幸というべきか不幸というべきか。




「そういえば、初めあの子に会ったのもゴミ捨て場だったっけ……、」




実に皮肉だ。











案外寝心地は悪くない。ここでならのたれ死んでも良いかな。


はは、笑える。











ぼんやりとした目で夜空を見上げる。頭上をいっぱいに埋め尽くした万点に光る星々は、愚かな俺を嘲笑うかのようだ。


その星に囲まれて、ぽっかりと大きな満月が浮かんでいた。




「……あぁ、そっか。」


「ネオンの光で気が付かなかったけど、今日は月が綺麗だったんだな……。」




このまま静かに目を閉じれば、ずっと夢の中にいられる。そんな気がする。




「……、」





















おやすみ。











to be continue…

高校生fwが大学生aknに拾われる話

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

901

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚