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その日、メイたちは武蔵帝都にある本部で警備の任に就いていた。
空は鈍い灰色に覆われ、重苦しい雰囲気が漂っていた。本部の広間では、
各地方から召集された司令官たちが一堂に会し、
今後の魔獣対策について真剣な議論を繰り広げていた。
武蔵帝都は現世でいう東京のような巨大な都であり、
国の中心として君臨していた。総帥の統率のもと、各地方は連携を取りながら
魔獣退治に取り組んでいた。しかし、
その一方で帝都の力を快く思わない者たちも存在している。
彼らは密かに自らの地を新たな都にしようと画策していたが、
その野望を阻む存在があった。圧倒的な強さを誇る國光の部隊である
メイは本部の外で警備を行っていた。周囲には地方から来た部隊の隊員もおり、
彼女を見てはこそこそ話す声が耳に届いた。その囁き声に背筋がゾッとし、
現世でいじめられた記憶が鮮明に蘇る。
「メイ、どうした?」翔太が心配そうに声をかける。
「大丈夫、ちょっと水飲んでくるね」とメイは持ち場を離れた。
水を飲みながら、「大丈夫」と自分に言い聞かせ、再び立ち上がろうとした
その瞬間、
突然口をふさがれ後ろから羽交い締めにさた、「!!」身動きが取れなくなる。
何が起こったのか理解するよりも早く、足を持たれ、見上げる空がぐるりと回転した。
二人の男――見覚えのない隊員服を着ているようだった。
メイは二人組の隊員によって人気のない木が生い茂る場所へと引きずられていく
「いやぁ!」メイは必死に叫んだが、口を塞がれている上、男たちの荒い息遣いと、
引きずる音がそれをかき消した。恐怖と絶望が、鉛のように胸にのしかかる。
男たちは、不気味な静けさに包まれた木々の間までメイを引きずり込むと、無造作に地面に放り出した。
顔を上げたメイが見たのは、冷酷な笑みを浮かべた男たちの顔だった。憎悪にも似た光が、その目に宿っている。
「ゴンッ!!」
容赦なく振り下ろされた拳が、メイの顔面に叩きつけられる。視界が歪み、激痛が走った。鉄の味が口の中に広がる。
「おいおい、これが武蔵帝都の実力ってか?」一人が嘲笑しながらメイの腹に強烈な一撃を放つ。「ドスッ!!」
メイは一瞬息が詰まり、苦痛に顔を歪める。「うっ...!」力が抜けたようにその場に崩れ落ちた。
「強いやつは上にいるだけで、こんな奴ら大したことねえな」と、
もう一人の男が鼻で笑い、メイの胸ぐらを掴んで言い放つ。「調子に乗るなよ!!」
男たちは休むことなくメイを蹴り続けた。「ドスっ!!、バキっ!!」
「ガンッ!!」もう一撃がメイの腹部にめり込み、その痛みが身体中に広がる。
「はは、なに泣てんだ、もう戦えねえのか?」笑い声が響く中、
男たちはさらに激しさを増し、メイを執拗に責め立てた。
メイは絶望と苦痛でもはや立つこともできず、ただ耐えるしかなかった。「ぐ…、助けて…」
「うっ、うう…」拳と蹴りの嵐が彼女の身体を次々と襲う。
「おい、こいつよく見るとかわいい顔してるな」と男の一人が言う。
「ほぉ~、本当だ。やっぱり都の男は顔も違うんだねぇ」と言いながら、
もう一人が顔を殴打する ゴッ!ゴッ!
視界が大きく揺れ、頭の中に鈍い衝撃が繰り返される。思考が霞み、ただ痛みに呻くことしかできない。
「へへ」
乾いた笑い声と共に、一人の男が隊員服の上着を脱ぎ始めた。
その行動に、もう一人の男がわずかに戸惑いの声を上げる。
「おい、お前まさか……」
メイの横顔をのぞき込む男の目は、悪意と欲望にギラついていた。その光を見た瞬間、メイの胸に嫌な予感が走る。
「そのまさかだよ。いいから抑えつけとけ」
冷たく言い放ち、男はメイに馬乗りになるように押し倒した。
抵抗しようとするメイの身体を、もう一人の男ががっちりと押さえつける。
メイの口にタオルを無理やり詰め込み、
暴れる彼女を力で押さえつける。馬乗りになった男は
冷たい笑みを浮かべながらメイの軍服を乱暴に引き裂き始めた。
男は、嘲るような目でメイを見下ろしながら、自身のベルトを外し、下半身を露わにした。
その光景を目にした瞬間、メイの瞳いっぱいに絶望と、恐怖が広がった。
「んー!!んー!!」叫び続けながら必死に抵抗するが、しかし、男たちの力は圧倒的だった。
彼女の細い身体は、その暴力に翻弄されるばかりだ。
男は冷たく笑いながらメイのベルトを外す、その瞬間、メイの心に暗い影が差し込んだ。
メイの視界は涙でぼやけ、時間が止まったかのように感じる中、
彼女の心は絶望的な恐怖で満たされ続けた。
「おい、早くしろよ」メイの手を抑えている男が、苛立ちを隠せない声で急かした。
馬乗りになった男は、メイの必死の抵抗に舌打ちする。
「ああ、わかってるよ、暴れるなくそっ!!」荒い息遣いと共に、下卑た言葉がメイの耳元に突き刺さる。
「今、気持ちよくしてやるからな...」そう言うと、
男は興奮したように歪んだ笑みを浮かべ、自身の熱を持った下半身を、メイの身体に押し当てた。
タオルを口に詰め込まれ、声にならない悲鳴が喉奥でくぐもる。
身体を捩じり、手足を動かし、必死に抵抗する。やめて。助けて!誰か!!心の叫びは、
誰にも届かない。絶望と恐怖が、メイの全身を支配する。
その瞬間だった。
突然、男の動きがピタリと止まった。
メイの身体に押し当てられていた熱が、急速に冷えていくように感じられた。
辺りを満たしていた男たちの荒い息遣いや、布が擦れる音、メイの呻き声……全ての音が一瞬にして消え去った。
緊迫した、死のような沈黙が場を支配する。
空気が、まるで氷のように凍りついたように感じられた。
何が起こったのか分からず、メイは恐る恐る目を開けた。
視界の端で、何かがポタポタと落ちるのが見えた。
それは、生暖かい、赤黒い液体だった。顔に滴り落ちるそれを、メイは理解できなかった。
そして、目の前の光景を認識した時、メイの瞳は恐怖に見開かれ、その動きは完全に停止した。
先ほどまで自分に馬乗りになっていた男が、上半身が胴体の中心から無残に二つに裂けながら、
内臓や骨を露わにしたまま、血飛沫を撒き散らしながら地面に崩れ落ちていくのが見えた。
人間の形を保てなくなった肉塊が、メイのすぐ傍に転がる。
あまりに非現実的で、凄惨な光景だった。鼻腔を焼くような血の匂いと、鉄の臭いが充満する。
声すら出せない。呼吸をすることさえ忘れたかのように、メイはただ、
その凄惨な光景を見つめることしかできなかった。身体を貫くような恐怖が、彼女の全身を硬直させる。
そして、その死体の後ろに立つ、漆黒の存在に気づいた。
巨大な影。歪んだ体躯から発せられる、お腹の底に響くような、不気味な唸り声――
魔獣が不気味な唸り声を上げ立っていた
メイの手を抑えていた男が、背後に立つ漆黒の影に気づいた瞬間、顔色を失い、恐怖に引き攣った叫び声を上げた。
「うぁああ!魔獣だぁああ!」
その耳をつんざくような絶叫が響き渡った、まさにその時だった。
「メイ!!」
馴染みのある、しかし切羽詰まった声が響き、広場の方から誰かが必死に駆けつけてくる足音が聞こえた。
メイは、その声に一瞬希望を見出したが、身体は恐怖で固まったままだ。
駆けつけてきたのは、翔太だった。メイが帰ってこないのを心配して、探しに来たのだろうか。
しかし、彼が目にした光景は、あまりにも異常だった。
木々の影が作る薄暗がりの中。地面には、見るも無残な形で裂けた男の死体が転がっている。
その傍らには、軍服を乱され、打ちのめされた様子のメイが倒れ伏し、そして、もう一人の男の前に立ち、
不気味な唸り声を上げている巨大な魔獣の姿があった。
翔太の目が、信じられないものを見るかのように見開かれる。一瞬、息を呑む音が聞こえた。
しかし、衝撃に固まることなく、即座に腰の銃に手を伸ばし、迷いなく構えた。
だが、魔獣は翔太の存在に気づくと、わずかに唸り声を上げ、次の瞬間には、黒い残像を残して、
まるで霧散するかのように林の闇の中へと消え去っていった。あまりにも突然のことに、
翔太は銃を構えたまま呆然とする。
場には、先ほどの喧騒が嘘のように静寂が戻った。
しかし、残されたのは、冷たい風と、目を覆いたくなるような凄惨な惨劇の跡だけだった。
血の匂いが、鼻腔を強く刺激する。
メイは、張り詰めていた糸がぷつりと切れたのを感じた。
極限の恐怖、肉体的な痛み、そして目の前に広がる光景。
全ての感覚が混濁し、意識が急速に遠のいていく。
「……しょ、うた……」
掠れた声で、かろうじて彼の名前を呼んだ気がした。しかし、それが本当に声になったのかも分からない。
そのまま、メイの意識は深い闇へと沈んでいった。冷たい地面の上で、彼女の身体は動かなくなった。