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「お兄ちゃん…お兄ちゃん…!」
燃え盛る炎の中から叫ぶすみれの声
「すみれ!!!わしが助けたるからな! くそ!手が…」
「お兄ちゃん、もう私達の事はいいからこれ以上苦しまんといて…」
「アホか!何言ってるんや!はよ手伸ばせ!」
「お願い…お兄ちゃん
自分のために生きて?」
「何アホな事言うてんねん!
待て!すみれ!いくな!」
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「はっ!」
目を開いた先には見慣れた部屋の天井
「はぁ…。またこの夢か…」
深くため息をつき朧気な意識の中体を起こし
近頃、頻繁に見るこの夢の意味はなんなのかと考える
当然答えなんぞ出るはずもなく
「はぁ…。」
また1つ溜息をつきながらベットから出る
「すみれ
これ以上わしにどうしろ言うんや…」
夢の中のすみれの言葉
何かを伝えたいのか…
“自分のために生きて”
夢の中でどこか切なげに悲しそうにそう言ったすみれの表情が頭の中に焼き付いて離れない
重い体を引きずるようにお風呂場へと向かう
キュッ
今更そんな事言われんでもわしは今まで自分のために生きてきた、自分のために……
そう頭の中で呟きながらシャワーの蛇口をひねる
シャアーー…
でも…
本当にそうなのか?と
夢の中のすみれに問われている気がした
思えば金貸しの道に入ってから
自分の人生を顧みる事は一度もなかった
いや、無かったというより…
振り返る事を恐れていたのかもしれん
親父が知人に騙され借金を背負い追い詰められた末に家に火をつけ自殺した
母親はわしらを置いて男と失踪、妹のすみれはその火事に巻き込まれ死んだ
家族も住む家も無くしたあの頃の自分
親父の借金を返すために己の身を削り
そこから生まれた銭への執着心…
そんな地獄のような日々を振り返る必要も無いと思っていた
自分を地獄に叩き落とした銭のために
金貸しとしてこのミナミでどう生きていくかその事だけを考えて生きてきた
その生き方すら間違ってると言うのか
自問自答を繰り返す
「わしに金貸しやめろ言うんか…」
今まで湧いてこなかった迷いと戸惑い…
こんな事は初めてやった。