テラーノベル
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____佐野勇斗side.
夜はどうしても過去を連れてくる。
部屋の電気をつけずに、ソファに座ったままスマホを握っていた。
連絡はしないと決めていた。
一年間、それを守ってきた。
今さら、何を言うつもりだ。
謝ったところで許されるわけがない。
そう分かっているのに、今日の「知らない」という一言が頭から離れなかった。
あんなふうに切り捨てられて、それでもなお、名前を呼びたくなる自分が心底気持ち悪かった。
画面を開く
仁人のトーク画面
最後のやり取りは…一年前。
自分が既読をつけられずに、逃げたままの夜。
指がやっと動いた。
《久しぶり
急に送ってごめん》
消す
違う
《今日、声かけてごめん》
また消す。
何度も打っては消して、最終的に残ったのは、飾り気も、逃げ道もない言葉だった。
《送るか迷ったけど、今日のことがどうしても頭から離れなかった。
あの時の俺は、本当に最低だった。
忙しさを理由に、一番大切な人に一番冷たくした。
怒ってたわけでも、嫌いになったわけでもない。
ただ、自分の弱さから逃げてただけだった。
離れてから、仁人がどれだけ我慢してたか、 どれだけ優しかったか、全部、遅れて分かった。
一年間、後悔しなかった日はないよ。
でも、それを伝える資格がないと思って、何も言えなかった。
今日、「知らない」って言わせてしまったのも、全部俺のせいだ。
ごめんね。
今でも、忘れられない。
今でも名前を呼びたくなる。
毎日仁人の「おかえり」を待ってる。
返事は仁人にまかせるよ。
今更こんなこといってごめん。
ただ、後悔してることと、本気で大切だったことだけ、知ってほしかった。
今でも愛してます。》
送信ボタンを押した瞬間、胃の奥がきゅっと縮んだ。
――これで、完全に嫌われるかもしれない。
――それでもいい
そう思わないと、自分を保てなかった。
――吉田仁人side.
通知音が鳴った瞬間、心臓が嫌な跳ね方をした。
画面を見なくても、誰からか分かってしまう自分がもう駄目だった。
開かない。
そう決めて、スマホを伏せる。
でも、数分後にはまた手に取っていた。
メッセージは長かった。
一行ずつ読むたびに、胸の奥がゆっくり抉られていく。
――最低だった
――後悔してる
――今でも忘れられない
どれも、欲しかった言葉だった。
でも、欲しかった“あの時”は、もう戻ってこない。
『…遅いわ____っ,,』
声に出した瞬間、涙が溢れた。
謝ってほしかった。
抱きしめてほしかった。
名前を呼んでほしかった。
全部、一年前に。
今さら優しくされても、心が追いつかない。
それでも、、
画面から目を逸らせなかった。
____曽野舜太side.
夜中、リビングの灯りがついてるのが見えて、嫌な予感がした。
仁ちゃんは、ソファに座ったまま、 スマホを握って動いてへん。
「……来たん、?メッセージ…」
声かけると、 ゆっくり顔上げて、泣きそうな目で笑った。
『…うん、笑』
それ以上、言わんでも分かった。
「無理に強がらんでええんよ」
そう言うと、 仁ちゃんはとうとう俯いた。
『戻りたいって思う自分が、嫌だ』
その言葉が、一番重かった。
しばらく黙ってから言った。
「嫌やないと思うで」
「ただ、それだけ傷ついたってことや」
背中をさすることもしなかった。
それが、今の仁ちゃんには必要やと思った。
____吉田仁人side.
その夜、返事はしなかった。
返したら、きっと全部崩れる。
「返事はまかせる」 そう書いてあったけど、 本当は欲しいんだって分かってしまう。
《俺も、戻りたい。》
でも、その気持ちを認めたら、また同じように壊れる気がして怖かった。
布団に入っても、眠れなかった。
勇斗の匂い
声
名前の呼び方
全部、まだ心に残っている。
『…ずるい』
そう呟いて、 目を閉じた。
to be continued…
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