テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する



















二人は少しだけゆっくりとした時間を過ごした。相変わらず、会話はぎこちないけれど、その沈黙は決して不快なものではなかった。

むしろ、互いの存在をより強く意識させるような、甘い空気が流れていた。


「そろそろ、お邪魔します…」


元貴が立ち上がった。時計の針は、思っていたよりもずいぶん遅い時間を指している。


「送ってくよ」


滉斗がそう言って立ち上がろうとするが、元貴は慌てて首を横に振った。


「いえ! 大丈夫です! 電車、まだありますし…こんな時間まで、本当にすみません」


「大丈夫だって。…でも、心配だから、送らせてくれよ」


滉斗はあくまで優しく言うが、元貴はこれ以上迷惑をかけたくないという気持ちと、これ以上一緒にいるとどうにかなってしまいそう、という理由で必死に断った。


「本当に大丈夫です! 今日は、本当にありがとうございました。映画も、ご飯も、全部…」


元貴は深く頭を下げた。滉斗はそんな元貴を見て、諦めたように苦笑した。


「そっか。分かった。じゃあ、また連絡する」


玄関まで見送りに出た滉斗が、いつものように、元貴の頭をわしゃわしゃと撫でた。少し乱暴だけど、そこには確かに温かい愛情が込められている。


「やめて!笑」


元貴は抗議するように声を上げるが、その声には怒りなど微塵も含まれていない。むしろ、くすぐったさと嬉しさで楽しそうに笑っている。滉斗の指が髪を梳く感触が心地よい。

その無邪気な笑顔が、滉斗の理性を一瞬で吹き飛ばした。

堪らなくなって、滉斗は元貴の頭を撫でていた手を、そのままゆっくりと元貴の頬に撫で下ろした。指先が、元貴の柔らかな頬に触れる。

元貴は、その動きに息を呑んだ。

そして、滉斗の親指がまるで吸い寄せられるかのように、元貴の柔らかい唇をそっとなぞった。


「っ……!」


元貴の全身に、甘い電流が走る。不意打ちの触れ合いに、恥ずかしさと困惑で頭の中が真っ白になる。

心臓が今にも飛び出しそうだ。元貴は、完全に動揺して、滉斗の顔を見上げることしかできなかった。

その時、滉斗もハッと我に返ったように、カッと目を見開いた。自分のしてしまったことに気づき、彼の顔もみるみるうちに赤くなる。


「…あ、ごっ、ごめん……!」


滉斗は慌てて手を離した。その手は、元貴の唇に触れたばかりで、まだ熱を持っているようだった。


「またね…!」


そう言って、滉斗は逃げるようにドアの奥へと引っ込んだ。ガチャリ、と重い音がして、ドアが閉まる。

元貴は、閉められたドアの前で、しばらく立ち尽くしていた。触れられた唇の熱と、滉斗の親指の感触が、まだ鮮明に残っている。心臓は激しく打ち鳴り、顔の熱は引かない。

たった一言の別れの挨拶が、なぜか甘く、そして深い余韻となって、元貴の心に響いた。





















週末の出来事から二日後の月曜日。

元貴はいつもより少し早めに家を出た。滉斗と会うかもしれないという期待と、あの別れ際の出来事を思い出すたび、胸がざわつく。

通勤中の電車内や駅で滉斗の姿を探したが、結局会うことはなかった。


(あれから、滉斗さんから連絡ないし…やっぱり、あの時のこと気にしてるのかな…)


そんな不安を抱えながら会社のエントランスに着くと、元貴はエレベーターホールへと向かった。朝の通勤ラッシュ時で、エレベーターは特に混雑している。

目的のフロアのボタンが押されたエレベーターがちょうど開いたので、元貴は乗り込もうとした。

そのエレベーターの中には、すでに数人のサラリーマンが乗っていた。そして、その中に、見慣れた顔を見つけた。



滉斗だ。




滉斗は、ドアの近くに立って、スマホを操作している。元貴は、反射的に目を見開いた。

滉斗も、ドアが開いて元貴の姿を認めた途端、目を見開き、元貴と視線がぶつかる。お互いの顔に、驚きと、そして微かな気まずさが浮かんだ。

エレベーター内のサラリーマンたちが、珍しそうにドアの前に立つ元貴と、その奥の滉斗を交互に覗き込む。


「乗ります?」


誰かが、気を利かせて元貴に声をかけた。だが、元貴は滉斗から目を逸らし、足がすくんだように動かない。


「い、いや、大丈夫です」


元貴は反射的にそう言って、首を横に振った。

乗り込んだところで、この密閉された空間で滉斗と距離が近くなったら、どうにかなってしまいそうだ。あの夜の出来事が、フラッシュバックする。

ドアが完全に閉まると、元貴は安堵のため息をついた。しかし、同時に後悔の念が押し寄せる。

せっかく会えたのに、避けてしまった。滉斗は、どう思っただろうか。




































あーーーーーーー、、、、



何してるの若井❓

「運命」と思える君

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

823

コメント

5

ユーザー

わわわわわ… 一気読みしました…😭✨ 最高ですほんと…🥹💓 わ…分かるよ…あんな可愛くて柔らかそうな唇あったら触りたくなっちゃうのも分かります… 初々しすぎて爆発しそうです💥(?) 可愛い…可愛すぎます2人とも…もうなぎちゃんも可愛い(?)(ごめんなさい…🚓🚨) いつイチャイチャするんでしょうか…😏💘 続きが気になるお話が2つもできてしまった😖💞

ユーザー

積極的かと思いきや唇に触るだけで照れちゃう若井さんと 唇触れられて照れる大森さんが可愛すぎる……! 二人の初心な感じもう大好き 朝からにっこにこですわ

ユーザー

若井の行動が沼男すぎる…(? 最高でした…………神ですね😌

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚