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#シークレットベビー
夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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今、私は一切お尻の話はしていなかった。
「あの、本当に彼は何も。ただお尻が見えているだけで悪い人じゃないです」
「そうだ。プリティーなお尻に謝れ!」
「一慶さん、少し静かに。仲人さん、彼を離してください」
床に押し付けられているのに一慶さんがふざけるので、一向に開放してくれなくて焦った。
ようやく解放されても仲人さんはまだ疑い深く彼を睨みつけていた。
「あのう……一慶さんの裸を見すぎだと思います」
「そうよ! 変態よ!」
「一慶さんは早く服を着てきて!」
追い払うと、ドアを開けたまま着換えだした。
「立崎さま。手荒い行為、大変失礼いたしました」
「私じゃなくて、彼に謝ってください。私は本当に平気だし、私の夢のせいだし」
「花巻さまには、力づくでも、乱暴でもいいので、立崎さまの身の安全を一番に、と言われています」
さっきまで、熊みたいで怖いなって思っていたのに。
仲人さんはかしこまって、深々と頭を下げてきた。
この人も仕事なのに、私ってば悪い人みたいに叫んでしまった。
「こちらこそ、駆け付けてくださりありがとうございました。本当に大丈夫ですので、お仕事に戻ってください」
「これがお仕事ですよ」
仲人さんは少しはにかんで笑ったのだった。
仲人さんが去ったあと、ハムスター姿で軽々とドアを持つと直してくれた。
ドアは無事に直ったけど、彼の筋肉の前では数秒で開けられてしまうらしい。
「鍵は学校に行っている間に直してもらえるみたい。ごめんな、俺のせいで」
「いえ。でも私も夢までは制御できないので、せめて下着ぐらいは履いてください」
「昨日の夜は風呂から出たら、ちゃんとパンツ履いてたんだけどなあ。いっそ水着で風呂はいろっかな」
私に何かあれば、パンツもはかずに飛び出すと言いたいらしい。
というか、私がハムスターにしか見えないのをいいことに、昨日のお風呂後はパンツ一枚だったんだ。
「あのう、結婚前の男女なのですから下着一枚はやめましょう。私がもし下着姿でリビング歩いてたらどう思います?」
「拝む。そしてタオルを投げる。そして嬉しくて死ぬ」
「真面目に答えてください!」
本人は真面目に考えていたらしい。私の言葉に飛び上がって狼狽えていた。
恋愛漫画みたいに、相手を意識してしまうとか、ドキドキしちゃうとか真っ赤になるとか色々ギャップを見せてもらえるかと思ったのに。
拝むって、何よ。
制服に着替え、軽いカバンを持ってから考える。
昨日は車で送ってもらったけど、今日はどうしよう。フロントに電話すれば送ってもらえそうだけど、学生の分際で贅沢すぎる。
今日は甘えるとしても、明日からはバスで行けるようなコースを教えてもらって……。
そうこう考えているうちに、インターフォンが鳴った。
『花巻さま、お赤飯が炊き上がりましたよ』
***
結局、一限目は公欠扱いで休んだ私に、一河も水咲も爆笑していた。
お昼休みに三人で進路指導室でお弁当を食べることになり、そこで朝のことを説明したら二人はいまだに笑っている。
お見合い中は、口が滑りそうな場合、進路指導室を避難場所で使っていいらしい。
「でも一慶さん、良い人そうで良かったじゃない」
「そうなんだけど、こう、もっとドキドキするような甘い展開が私は欲しいの」
「ドキドキより、一緒に居て楽しい方がいいんじゃないか?」
一河も笑って全然箸が持てていない。というか、私のお赤飯弁当と違って、可愛いペンギンのお弁当ケースに、お魚の海苔が乗った白ご飯?
「一河は昨日、水族館デートしたの?」
「正解。お弁当箱、お揃いの上に作ってもらっちゃった」
「うそお。あの先輩、綺麗な上に料理もできちゃうの!?」
水咲がお弁当を覗き込んで感心している。
でも私たちは高校で調理師免許も保育士免許も取得するんだからある程度できるのは当たり前だ。ただ、キャラ弁は難しいよね。
「愛が感じられる」
「へへ。まあねえ、うひひ」
「一河が変な笑い方してる!」
いつもおっとりした一河が、真っ赤な顔で笑うのは新鮮だった。
こっちはどうやらうまくいってるようだ。
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