テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
あの日から、僕は若井を避けている。
廊下ですれ違っても、
目が合いそうになったら、すぐに逸らす。
教室で話しかけられても、単語でしか返さない。
必要最低限のことしか口にしない。
みんなは『喧嘩でもしたの?』と、
ひそひそ笑っている。
でも、僕は若井を許せないし、
許したくなんてなかった。
いつもは誰より明るい彼が、
僕にばかり話しかけてくる。
滉斗『なぁ、元貴』
滉斗『…おい、元貴』
何度声をかけられても、僕は振り向かない。
それどころか、時には軽蔑するような目
で見てしまう自分さえいた。
そんな僕に、若井は悲しそうな顔をする。
気づけば、彼の目は僕を追い続けているのに…
どうしても、
あの日のことが頭から離れなかった。
振り返らない。
振り向かない。
だけど、一人になると涙が止まらなくなる。
誰より信じてたはずの人に、
裏切られた気がして、
僕はまだ、ちゃんと確かめることも
していないくせに、
なのに、“拒絶”だけは、
はっきり態度で示していた。
廊下で、教室で、若井の気配が近づく度、
“僕じゃない誰かを好きになったのなら、
そう言えばいいのに”
そう思って、睨みつける。
でもたまに、どうしようもなく寂しくて。
ふと目が合うと、目に涙がにじむこともあった。
1週間。
それが、僕たちの冷戦だった。
コメント
5件