異変に気がついたのは、今日、12月1日。
生まれつき耳が聞こえない僕は
視覚を頼りにしているから、すぐに気がついた。
とりあえず…、若井たち、に会いたい、
言うつもりはなかったけど、
安心させてほしかった。
LINEにメッセージを送って画面を閉じる。
そしてそのまま早めの雪が降った地面を
_ザクザク_
と、踏みしめる。
おそらくそんな音だろう。
前に若井が教えてくれた。ろう者である僕に。
ついた、
若井の家についた。
呼び出したから涼ちゃんもいるだろう。
_ピーンポーン_
チャイムを押したはずだけど、
鳴ったかはわからない。
来ることを願いながらぼーっと待つ。
_トントン_
肩を叩かれ、意識をそちらに向けると
そこには涼ちゃん。
『おはよう、どうぞ、入って』
手話に慣れていないことが伝わる文脈。
頑張って練習してくれたんだな、
ありがたい。
『わかった、ありがとね』
こちらも手話で返して、頑張って読み取ったらしき
涼ちゃんのあとについていく。
_ガチャッ_
部屋に入るとソファに若井がいた。
若井は僕を見つけると巧みに手話をし始めた。
『元貴、おはよう』
『おはよう』
『今日はなにか用事、?』
『……さみしかっただけ、』
『そっか、なら涼ちゃんたちと
いっしょにおはなししようね』
『うん、ありがとう』
若井がにっこりと笑って会話は一回おわり。
そしてふたりが話しているのをぼーっとながめる。
僕は生まれつき耳が機能していないから、
口を見ても何をしゃべっているのか
分からないのだけど。
たぶん涼ちゃんは手話が苦手だから
「元貴なんて言ってたの?」
なんてところだろう。
_トントン_
『若井』
『ん?どうした?』
『やりたいことがある』
『お出かけ?』
『〇〇までにやりたい100のこと、みたいな』
『その〇〇ってなによ、』
『ひみつ!』
ひみつ、は涼ちゃんにも聴きとれたのか
会話に参戦…?しに来た。
『えー、約束ね、?』
『………うん』
きっと、ふたりは、
含みのある言い方をしたのを見逃さなかったかな。
まぁ、どっちでもいいけど。
『』…手話
「」…口での会話
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