テラーノベル
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「どうか、私を殺してくれないか?アメリカ。」
普段俺のことを「クソ米帝」だと散々言ってくる日帝は、窓から地平線を見て黄昏ながらそう言った。
彼は静かに振り向いた。彼の瞳に地平線と俺が移り、交差する。
「私にはもう生きている意味がないんだ。だから、殺してくれないか。」
彼は淡々とそう言った。夕日が焼き付き、オレンジじみた赤眼を光らせながら。
…もう彼に、国としての使用価値はない。殺しても殺さなくても変わらない。こいつが国じゃなくなった以上、敵国にもならないし、友好国にもならない。
「なあ、頼むよ。一生のお願いだ。」
「……はあ。」
「…はは、私が死んでも、また直ぐに、お前の命を狙う刺客が現れるだろうな。」
「なんだと?…まあいい。」
最後まで冗談を言う日帝の首に、手をかける。そのままグッと、彼の首に何かをねじ込むような、そんな強さで首を絞める。
元々俺は戦勝国だ。戦勝国が敗戦国を殺そうが、罪には問われない。
俺にとって、利にも害にもならない存在。殺すメリットも生かすメリットもない。どっちでも良いのだ。こいつが死のうが生きようが…
こいつが死ぬことを望むなら、殺してやろう。これは俺ができる精一杯の気遣いだ。
「…ありがとう」
彼は、掠れた声でそう言った。
その言葉は、一度聞いただけだというのに、なぜか鮮明に脳内にこびりついて離れない。
その言葉は後に、俺の人生を縛る“呪い”になるのだった。
あいつを殺してから、しばらく経ったある日。
とある者が、俺が占領していた沖縄に攻め込んできた。体はものすごく小さい。2〜3歳程度の大きさだった。
だが、俺と同じ気配がする。こいつも「国」なのだろう。
「…誰だ?ここは他国が気安く入っていい場所じゃないんだが。」
「……わ、わたし はニホンコクだ。アメリカ、アナタをやっつけにきたんだ。」
「ほう…」
日本国…大日本帝国のあとに、代替わりとして生まれた国。最近、先進国の間で話題になっていた国だ。幼いのに経済の回し方が上手いと、みんな口揃えて言っていた。
どんな姿をしているのか、こんな形で拝見することになるとは。
「…もっと大人なのかと思ってたよ……」
「え?」
「あー、なんでも。それで?ニホンコク様はどうしてこちらに?」
「だ、か、ら!アナタをやっつけにきた!」
まあ、なんとも弱そうな木の棒を持って、日本国はそう威嚇してきた。ミリも脅威を感じない。自分も幼い時、親父にこんな小動物のような姿を見せていたのだろうか。
「はぁ…なんで俺をやっつけたいんだ?」
「オキナワをかえしてもらうため!あと、おとうさまのカタキだから。」
「おとうさま?」
「うん、ダイニッポンテイコク。」
…あいつは子供がいたのか?いや、そんなわけない。子供がいる素振りはなかったし、仮にもし、こんな幼い子供がいたのであれば、あんなに簡単に死を懇願しないだろう。
…良くも悪くも、自分より弱き者を守ることに執着した奴だったから。
「とにかくアナタをやっつけにきた!いますぐこうふくし、わぁっ!か、かえせ!」
「そんなに俺をやっつけたいのか。なら出直してこい。クソガキ。とりあえず、この木の棒は没収な。」
日帝が最期に言った『また直ぐに、お前の命を狙う刺客が現れるだろうな。 』という言葉。
刺客というのは、この日本国の事だろうか?木の棒程度で俺を殺す気でいるクソガキなんぞ、脅威でもなんでもない。こんな棒で叩かれても、俺からしたら蚊に刺された程度だ。
「クソガキって…ど、どこの国の言葉だ??」
「JAPAN.」
…相当育ちが良いようで。
「俺をやっつけたいなら、もっともっと強くなれ。…大日本帝国みたいに。」
「…分かった。……いつか、今よりもっとつよくなって、またアナタに会いにくる。そのときは、ぜったいやっつけるから!」
日本国は涙目でそう言いながら、猛ダッシュで沖縄から出ていった。嵐のような国だった。
言葉使い、口調、そして何より顔。…大日本帝国を彷彿とさせる姿だった。あながち、あいつの子供というのも間違いではないのかもしれない。
「いや、まあ…ないか。」
いつか、本当に俺を殺しに、強くなってやってくるのだろうか。
十中八九来ないとは思うが、もし本当に俺を殺しに来るのであれば…
「…その時は、相手してやるよ。」
コメント
4件
ストーリー神すぎませんか…!! 次が楽しみです…!!