テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#王道
涙乃
1,144
#御曹司
うめぼっち

742
うめぼっち

847
#溺愛
うめぼっち

966
「真那。もちろん俺と祖父母は警察に捜査依頼を頼んだ。サロンに使えていた者達の行方も追った。しかし出火の原因も誰かの犯行なのかも不明。
石田と言う医師も、行方も何もかもわからないまま、炎が全てを焼いてしまった。残ったのは俺の母と弟は、火事に巻き込まれて死んだと言う事実だけだ。二人に何があったのかは、神のみぞ知ると言うことだろう」
「蒼波様……」
私は労りの気持ちを込めて、そっと蒼波様の肩に頭を預けた。
するとその気持ちを返してくれるように蒼波様はコツンと頭をくっ付けて来てくれた。
夜のひんやりとした空気に紛れ、ほのかに香る白檀の香りに気持ちが和らぐ。
「しかしな。俺は冷たい人間かも知れないが、陸がやっと安らかな眠りを手に入れたと……どこかホッとした。あのような訳の分からない物体に囲まれて、死んだように生きているかはずっといいと思った」
「私もそう思います」
人は自分の意思で生きてこそ命が輝く。
私は蒼波様に出会い、そう学んだ。
「だから、俺は陸が叶えたかった夢。将校になると言う夢を俺が必ず叶える。じゃないと、弟に顔向けできない」
あぁ。だからこの人は森であのような言葉を言ったのか、やっと分かった。
「なれます。蒼波様なら絶対になれます。私もその夢のお力になりたいです」
「ありがとう。真那」
そこからは蒼波様は物語の|後日談《エピロォグ》のようにポツポツと語った。
実母と実弟の不可解な死にいつまでも悲しみに暮れるわけに行かず、不審な二人の死は祖父母に任せて、蒼波様はひたすらに軍の階級を駆け上がることに専念した。
そうして、いつしか付いたあだ名が氷の大佐。
それでもここ一年間はずっと親族達がこれは呪いだ、祟られると噂した。
挙げ句にまだ二人は生きていると、コソコソと内輪の話で終わるかと思いきや。
最終的には、蒼波千尋を蒼波家より外すべきだと言い出す者が現れた。
蒼波様はならば、そちらが蒼波家に連らなくても良いと、成長しすぎた木の剪定を行うがごとく。
蒼波様と祖父様との判断で全国新聞紙の欄に、蒼波様に違を唱える親族を『義絶広告』に掲載した。
法的にではなく、社会的に「勘当・絶縁」を周知・証明したのだ。
そうして、ようやくここ最近になって親族達は口を継ぐんだとか。
そんな中で軍内に石田史郎という特務機関所属の医師が現れ、以前より頭角を表していた東堂凪が異例の速さで出世した。
蒼波様とクリス様はまさかサロンを創設した石田史郎氏なのかと直接対話を試みるものの、特務機関所属ということで石田史郎氏は黙秘。
面会も却下。
ならば公の場に引き摺り出そうと特務機関に流れる用途不明金の流れを明確にするべきだと、会議で吊るし上げるも、紆余曲折の末に予算削減に応じて本人とは書面のみのやり取りのみ。
表舞台には一切出てこず、代わりに矢面に立つのはころころ変わる代理人。その中には軍医部長の東堂凪もいた。
いずれにせよ、その代理人ですら直接話し合うことはなく、軍の古参達がしゃしゃり出てくるものだから、石田史郎がサロンに関与していたのか今も不明。
東堂凪ともその時は顔見知り程度だと、蒼波様は言った。
蒼波様の横で聞いているだけでも、なんとも歯痒い思いだろうと心中察するばかりである。
しかも東堂凪の名前を聞いて肌が粟立ってしまう。
東堂家が出世街道を歩み出した時期は、恐らく私が東堂家に行った時期と重なるのだろうと、また東堂家に嫌悪感が増す。
クリス様も「どちらも食えない男だね。まぁ、食べたくはないけどね」と、軽く口を叩きながらも、赤い瞳を歪ませていた。
コメント
1件
うわっ、第37話……蒼波様の過去が重すぎるんだけど。実母と弟の不可解な死、しかも真相が闇の中ってのがもう辛いわ。陸の夢を継ぐって決めたところで真那が「その夢のお力になりたい」って言うシーン、めっちゃグッときた。義絶広告で親族切り離した決断力、かっこよすぎるし怖くもあるな。石田史郎がサロン関係者っぽい動きしてるのに証拠が掴めないもどかしさがじわじわ来る。クリスの軽口と赤い瞳の歪み、ここで見せるところが憎い演出だわ。続き待ってる🔥