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しかしながら、東堂凪の名前の登場で私と蒼波様の出会いに繋がると聞いて、驚きと東堂凪と私は易々と断ち切れない結びつきを感じた。
それは遠い遠い、祖先を共にしているから──と、|沖津波《おきつなみ》に思いを馳せるような。
白波に惑わされるような気持ちになったところで、蒼波様のお声が耳に入ってきて背筋を正した。
「以後、俺とクリスは東堂凪と石田医師に睨みを効かせ続けていると──東堂凪が身内で結婚式を挙げるという、情報を掴んだ」
「!!」
「さらには頃合いを狙ったかのように、タイプライターで書かれた俺宛の手紙が届いた」
蒼波様は説明するような生真面目さで喋ると、クリス様は俯き肩を震わせ始めた。
きっとクリス様は蒼波様が危ない目に合ったことを、今も許せずに、その身に怒りの炎を宿していると思われた。
「それで、内容はなんと?」
「……『東堂家の森で待っています。誰にも内緒で、お兄様一人で来て下さい。蒼波陸』と書いてあった」
「それは──明らかな罠ですね。一人で行くなど火を見るより明らか。蒼波様はきっと何か策があって誘いにワザと乗って、森に行かれたと言うことですわね?」
突然。くふっと、クリス様から吐息が漏れる音がしたが、構わずに喋り続ける。
軍人の妻たる者、今までの話を聞いて推察の一つでも、披露しなければならないと思った。
「絶対とは言えませんが、その手紙を送ったのは蒼波家のお身内ではない。お身内の方々は呪いだの、祟りなどと、亡き二人を恐れている節があった。さらには蒼波様を亡き者にしたところで、陸君亡き今、他の誰かに遺産は移ることはありません。そうすると外部の人間の犯行に違いないでしょう」
「……」
クリス様は肩を大きく揺らし始めた。
蒼波様は何やら遠くを見つめだしたが、最後まで考えを伝えようと思った。
「蒼波様は大佐という、立派な地位をお持ちです。高官の軍人を亡き者にしようなんて、庶民は考えません。軍の内部もそうでしょう。でも──蒼波様と対立する軍の方は少なからずいるでしょう。もちろん、怪しいのは東堂凪。石田医師、ですが、その不仲の関係を利用しようとした不埒な輩もいるかも知れない」
喋るうちにどんどん、感覚が研ぎ澄まされて行く感じがした。その高揚のまま喋る。
「そんな誰もが悩ましい状況を、蒼波様は頭脳明晰、博学多才の知力を持って立ち向かわれた。しかし森に誘い込まれ、卑怯な方法によって刃をその身に受け止めることになった……ということですわね?」
きっと悪くない推察だろうと思って、蒼波様に褒めて貰える期待を込めて蒼波様を見つめた。
すると蒼波様は遠い目のまま、ぱかっと口を開けた。
「すまない真那。俺は独断で一人で、あの森に行った」
「え」
「特に策は無かった。乗り込んで、問題があれば叩き潰してやろうと思っていた」
「そ、それは武力解決……ということで、えーと、荒ぶる|鮫《さめ》の如く、勇猛果敢に」
私がしどろもどろ、ドレスをわさわさと揺らして、言葉を重ねるとクリス様が堪らないといった感じで吹き出した。
「ふっ、ふふ。あははっ! ごめん。もう我慢出来ないや。ははっ。マナ、チヒロは普段『氷の大佐』様など言われるが義理に厚く。身内や世話になった人のことになると、猪突猛進。イノシシの如く突っ走る、熱い漢なんだよ」
「な、なるほど」
コメント
1件
おお、第38話読み終えたわ! 真那さんの推察、めっちゃ鋭くて「さすが軍人の妻だなぁ」って感心してたら、まさかの「特に策はなかった」って蒼波様のド直球な告白に笑ったわw 氷の大佐のイメージとのギャップが凄すぎて、クリス様が爆笑するのも分かる。真那さんの「荒ぶる鮫の如く」ってフォローも愛おしいし、この会話の温度感、めっちゃ好き。続きが気になる🔥