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ね む 湯 。
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スマホを没収されてから、三日が過ぎた。
沙織にとって、大学のキャンパスは完全に「色のない世界」に変わっていた。
隣には真尋がいる。いつも通り並んで歩き、いつも通りノートを取り、いつも通り美咲たちと他愛のないおしゃべりをする。
「沙織、この前のことだけどさ。真尋から聞いたよ。ストーカーに遭ってたんだって? 心配しすぎちゃってごめんね」
お昼休み、美咲が申し訳なさそうに声をかけてきた。真尋が事前に完璧な嘘のストーリーを共有し、美咲の疑念を完全に払拭してくれたのだ。
「ううん、美咲が気づいてくれたおかげだよ。ありがとね」
沙織は鏡で何度も練習した「いつもの笑顔」で返す。
周囲の誰もが、二人の関係を「危機を乗り越えてさらに絆が深まった、美しく健全な親友同士」として、これまで以上に疑いなく公認している。
けれど、美咲が安心したように笑うそのすぐ隣で、沙織の心臓は悲鳴を上げていた。
目が合っても、真尋は微笑みかけてくれない。
机の下で、その細い指が触れ合ってくることもない。
講義が終わっても、あの薄暗い階段の踊り場に連れて行かれることはなく、「じゃあね、沙織」と他人のような声で見送られる。
(息が、うまくできない……)
スマホがないということは、真尋が今どこで何をしているのかも分からないということだ。これまでは、一時間に一度はアプリで真尋の位置を確認し、自分の存在を彼女のGPSに刻みつけることで、ようやく「生きている」と実感できていたのに。
夜、自分のアパートの部屋。
静寂だけが満ちた四畳半の空間で、沙織はベッドの上で膝を抱えて丸くなっていた。
いつもなら、この時間は真尋の部屋にいるか、あるいは通話で繋がっているはずだった。今、真尋は何をしているのだろう。私のことを考えてくれているのだろうか。それとも、私のいない静かな夜を、快適だと思っているのだろうか。
「嫌だ……置いていかないで……真尋……」
携帯のない手持ち無沙汰な両手で、自分の身体を強く抱きしめる。骨がきしむほど力を入れても、真尋のあの容赦のない、息が詰まるような抱擁の代わりにはならなかった。
脳裏に焼き付いているのは、三日前の真尋の冷たい声。
『自分がどれだけ無力で、私なしでは息もできない抜け殻なのか、その身体にじっくり教え込んであげる』
(うん、分かったよ、真尋……。私、本当に空っぽの抜け殻だよ……)
お仕置きという名の飢餓感が、沙織の執着をさらに何倍にも膨れ上がらせていく。離されている時間が長ければ長いほど、真尋への依存が血のようになって全身を巡り、彼女なしでは一歩も動けない身体に作り替えられていくのが分かった。
それは耐え難い苦痛であり、同時に、これ以上ないほど甘美な「調教」のプロセスだった。
四日目、五日目、六日目。
沙織は大学で、完璧に「良い子の親友」を演じ続けた。周りに少しでも怪しまれれば、お仕置きの期間が延びるかもしれない。それだけは絶対に避けたかった。
真尋はそんな沙織の「完璧な演技」を、冷徹な、けれどどこか満足げな瞳で、遠くから見つめていた。
そして、約束の一週間の、最後の夜が明ける――。
コメント
1件
うわあ……めちゃくちゃ苦しいお話だった……。沙織の「抜け殻」になってく感覚、すごくリアルで、読んでるこっちまで息が詰まるような切なさがあったよ。スマホ没収されて、真尋と物理的にも心理的にも距離ができて、それでかえって依存が強まっていくところが、もうドキドキするくらい生々しい……。美咲の前でいつもの笑顔を演じる沙織、それを見てる真尋の満足げな視線……最後の一文で、「あ、お仕置き終わるんだ」って一瞬ほっとしたけど、同時にこれからまた新しい何かが始まるんだろうなって怖くもなる。続きがすごく気になる……😔🤍