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第6章
融合を拒む世界と、守るための力
第26話:人間としての評価
廃工房を出た後、 健たちは王都へ戻った。
道中、誰も多くを語らなかった。 ミラーブレンドの最期が、 それぞれの胸に違う形で残っていたからだ。
ギルドに報告を済ませた直後、 健は単独で呼び出された。
応接室にいたのは、 白髪混じりの壮年の男。 王都ギルド統括――グラハム。
「君が、例の“非融合干渉者”か」
その声には、試す色が混じっていた。
「噂が広がるのは早いな……」
健は苦笑する。
「世界監査官が動いた以上、 君はもう“一般人”ではない」
一拍置いて、 グラハムは続けた。
「だが同時に――」
視線が、健の拳に落ちる。
「君は、初めて “世界を壊さずに結果を出した異物”だ」
健は、思わず瞬きをした。
「……異物、なんですね」
「安心しろ。誉め言葉だ」
ギルドマスターは、静かに笑った。
第27話:守るための依頼
その日のうちに、 健に一件の依頼が回された。
――融合災害地点における、 住民避難および現場安定化。
「戦闘依頼じゃない?」
「違う」
リュシアが答える。
「戦えない人間を、 “戦わずに守る”仕事だ」
健は、短く息を吸った。
(……やってみたい)
現場は、 建物と地面が半分ずつ溶け合い、 重力の向きすら曖昧になっていた。
泣く子供。 動けない老人。
健の中で、 能力が静かに疼く。
(使えば、一瞬で片付く)
だが――
健は、声を張り上げた。
「大丈夫だ! 俺が運ぶ!」
剣も魔法も使わない。
ただ、走る。 担ぐ。 支える。
汗と息切れ。 筋肉の悲鳴。
――それでも、 誰も傷つかなかった。
エリナは遠くから、 その姿を黙って見ていた。
第28話:限界と選択
避難の最中、 二次崩壊が起きた。
空間が、悲鳴を上げる。
「まずい!」
健は、瓦礫の下敷きになりかけた親子を見る。
(間に合わない――)
その瞬間、 能力が強く反応した。
《調合融合(ブレンド) 使用可能》
一瞬の迷い。
そして、 健は“半歩”だけ踏み込んだ。
融合は、しない。
だが――
干渉だけを、許す。
世界と世界の継ぎ目を、 拳で“ずらす”。
瓦礫は、 親子を避けるように崩れ落ちた。
健は、膝をつく。
「……これでいい」
エリナが、静かに頷いた。
第29話:ノクスの再演算
同時刻――
観測層の奥深く。
監査官《ノクス》は、 無数の結果を演算していた。
「対象・野山健」
「破壊率:低下」 「世界安定寄与率:上昇」
沈黙。
「……処理不要、暫定」
初めて、 “保留”ではなく、 見逃しが選択された。
第30話:レオンの役割
夜。
健の部屋を、 レオンが訪れた。
「お前、変わったな」
「そうか?」
「守る顔になった」
レオンは、剣に手をかける。
「なら、俺は逆だ」
健が、真顔になる。
「壊す役を、引き受ける」
「……一人で?」
「お前が守るなら」
レオンは、静かに言った。
「俺は、 その“外側”を全部斬る」
二人は、視線を交わす。
それは、 別れではなく―― 役割分担だった。
第31話:新たな均衡
王都の夜は、 一見すると平穏だった。
だが世界は、 確実に変わり始めている。
融合を拒みながら、 それでも干渉する存在。
破壊を請け負う者。 守護を選んだ者。
エリナは、星を見上げる。
「……均衡が、生まれた」
遠くで、 健の笑い声が響く。
高校生のまま。 人間のまま。
それでも――
世界に影響を与える存在として。
第6章・了