テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#料理男子
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
『良かった。食べたいもないなら俺が店を決めてもいい?』
「もちろんです。お願いします」
『じゃあ美味しいパテが食べられるレストランがあるから予約しておくよ』
「はい。楽しみです」
電話を切ったあと、一時間後に喬一さんに会える嬉しさと同時に一時間でプレゼントを選べるのか不安になってきた。
急いで選ぶものじゃない。
でも明日はずっと一緒に居るから選ぶのは無理。
喬一さんのことだから、探したけど買えなかったというと笑って許してくれそう。
でもそれは嫌だ。気を使わせたくない。
「プレゼント、プレゼント」
悩みながらビルの中を歩く。
クリスマス前のファッションビルの中はいつもより混雑している。おもちゃ屋の前を通ると、レジに並ぶ沢山のサンタたち。サンタたちは喜ぶ子供の顔を思い浮かべて念入りにおもちゃを探したり、メモを片手に必死にお目当てのおもちゃを探している。
私も喬一さんの喜ぶ顔が見たい。いつも美味しい料理を作ってくれる喬一さんに感謝しかない。寝落ちして疲れている顔さえもセクシーに見えてしまう、重症っぷりだ。
彼に似合うもの。落ち着いた色。装飾が複雑で細かいものも、几帳面な彼に似合う。
キッチングッズにしても、彼は色んなスパイスや出汁、調味料を網羅していると言っても過言ではない。カレーだって私好みの辛さで作ってくれちゃうぐらい。
エプロンも男性に似合うような、シュッとしたものもないし。
お箸は、喬一さんのご実家のご両親がわざわざ職人さんに作っていただいた夫婦茶碗とセットで良いものを頂いてる。
腕時計を見ると、ぐたぐた悩んでいる間に20分も経ってしまっていた。
時間がない。彼が喜んでくれて――使ってくれるもの。
歩き回りながら、私は立ち止まった。クリスマスカラーに彩られ、クリスマスツリーの下におすすめの商品を並べたショーウィンドウ。
その中に、私の目を引いたもの。それは、彼が毎日使っている古いアレの代わりになるような品物だった。
お店の中は、レトロな街並みの写真が飾った壁に、色鮮やかな棚が並ぶ輸入雑貨屋だった。
お店の人が直接現地に行って買っているとお店のポスターに書いて貼ってあった。
「これだ」
お店の中をうろうろして、飾ってあったモノと同じものを探す。無事に最後の一個であろうそれを手に取って、レジを見る。
そこにはラッピングの整理番号を渡す店員とレジ打ちしている店員、そしてその後ろでラッピングに取り掛かっている二人の店員。
私の番号は17番目。48種類の袋や包装紙と200種類のメッセージカードを選び、メッセージカードを描く四人掛けの机は満員で周りに待っている人がいる。
私もメッセージカードを選びつつ、再び腕時計を見て時間を確認したのだった。
*
『新幹線改札口を出てすぐの、時計の柱の下にいるよ』
彼のメッセージを見て、駅に急ぐ。仕事で疲れて帰ってきた喬一さんを待たせるとは、なんと出来損ないの嫁であろうか。
帰宅ラッシュの時間帯のせいで、人ごみの中を掻き分けて進むので、走り出せない。
クリスマスとか縁のなかった私は家の中で、ゲームのキャラクターのためにゲームをしていたのが懐かしい。
「古舘せんせい」
「あー、今、終わったんですねえ」
やっとのことで人ごみをかき分け目的地へ到着したら、喬一さんは女性二人に囲まれていた。
しかも一度受付で会った、受付嬢の二人組だ。
キャメル色のコートと白の清楚なコート、そしてミニスカートにブーツ。
女の私でもわかる、可愛い服装の二人。そして二人でお酒を飲んでいたのか頬が赤く、澄ました仕事中の顔ではなく甘えた可愛い声だ。
多分どちらかが小春の友達だから、私と同い年のはずだが、全然お洒落度が違う。
ふんわりと甘い匂いがしそうな可愛い二人だ。
「奥さんとデートですかあ?」
「お疲れ様ですー。私たちも参加させてくださーい」
「わー、私ともデートして―」
一人が、喬一さんの腕に腕を絡ませようとしたが、彼はさらりと横に避けると、冷たい視線を向けていた。
「明日に残るような飲み方はやめたらどうかな?」
冷たい声に驚いてその場に固まってしまった。
小春が、喬一さんのことを合コンにも来ないし、仕事中はクールで近寄りがたいって言っていたけど、目の前の彼はその通りだった。
私の前ではしたことがないような、表情のない冷たい印象に驚いてしまう。
「さっさと帰りなさい」